東京都、神奈川県、埼玉県、大阪府、滋賀県で離婚・男女問題にお悩みなら
受付/月〜土10:00〜19:00 定休日/日曜・祝日
お問い合わせ
ラインお問い合わせ

確認の利益

Xは、10年前に、建物所有者Yとの間で本件建物の賃貸借契約を締結した。XはYの主張によれば、この契約締結の際、XはYに保証金名目で300万円を預託したということであるが、その預託は賃貸借契約書の書面その他書面では明らかかされていない。その後、Xは契約の更新を重ねたが、近辺の地価が上昇したことから、YはXに賃料の増額を申し出た。Xはこれを拒絶したが、賃借権はそのまま続けたいと述べたため、Yは賃料増額を求めて調停を申し立てた。この調停において、上記保証金の負担が争われた。Xは、これが単なる預り金であり、賃料不払などの賃貸借契約から生ずる債務を担保する目的の金銭であって、契約終了時にはYはその2割を償却し8割(240万円)を返還する義務が存在すると主張した。Yは、保証金名義の金銭の授受の事実、仮に預託入の事実が認められるとしても返還約束は存在しないと主張した。Xは、本件賃貸借契約の継続を前提としながら、契約終了時には240万円の返還請求権が存在することを確認するため、保証金返還請求権確認訴訟を提起した。Yは、この訴えは確認の利益を欠くから却下すべきであると主張している。裁判所は、この訴えを適法と認めることができるか。●参考判例●① 最判平成11・1・21民集53巻1号1頁② 最判平成11・6・11判時1685号36頁③ 最判昭和16・3・25民集58巻3号753頁④ 最判平成19・3・26判時1965号3頁⑤ 最判平成21・12・18判時2069号28頁●解説●1 将来の法律関係を対象とする確認の利益確認訴訟の訴訟要件としては、訴えの利益(確認の利益)が重要となる。給付訴訟や形成訴訟と異なり、確認訴訟の対象は理論上は無限定であるから、確認の利益という概念を通じて、確認訴訟によって解決を図るのが最も有効かつ適切である訴訟に限定する必要があるからである。そこで、判例・学説(最判昭和30・12・26民集9巻14号2082頁)は、現在、原告の権利または法律的地位に危険・不安が存在し、それを除去する方法として、審判対象の存否について、現在の紛争について、これを解決し得ることが必要かつ適切である場合に確認の利益を認める。そして、これを得ることが必要かつ適切である場合に確認の利益が認められる。これには、①確認訴訟によること(方法)の適切性、②確認対象の適切性、③原告の権利・地位に現に不安・危険が生じていること(即時確定の必要性)の3つの基準から判断する。一般的には、法律上の地位に具体的危険・不安が生じていること(現在の法律関係)が、一般的には法律関係に現在の紛争として、一般的には紛争解決の手段として有効・適切であるか否かという視点もあるが、一番重要なのは、現在の紛争を解決する手段として最も有効・適切であるかどうかという点である。(1) 確認の利益の判断枠組み以上の3つの要件を総合的に考慮して、確認の利益の有無を判断する。① 原告の権利または法律上の地位に、現在の具体的な危険・不安が生じていること(現在の紛争)② 確認判決によってその危険・不安を解消することが、最も有効・適切であること(手段の有効性・適切性)③ 確認の対象が、現在の権利関係であること(対象の適切性)(2) 将来の法律関係を対象とする確認の利益将来の法律関係は、原則として確認の対象とはならない。しかし、例外的に、将来の法律関係であっても、現在の紛争と密接に関連し、その解決のために不可欠である場合には、確認の利益が認められることがある。例えば、参考判例①は、賃貸借契約が継続中であるにもかかわらず、賃貸人が賃借人に対して、契約終了後の明渡しを求める訴えを提起した事案である。判例は、契約終了後の明渡しという将来の法律関係であっても、現在の賃貸借契約の存否と密接に関連し、その解決のために不可欠であるとして、確認の利益を認めた。(3) 敷金返還請求権確認訴訟本問の敷金返還請求権確認訴訟は、将来の法律関係である契約終了後の敷金返還請求権の存否を確認するものである。したがって、原則として確認の利益は認められない。しかし、本問では、Yが賃料増額調停において、敷金の存在自体を争っている。これは、現在の賃貸借契約の存否と密接に関連する紛争であり、その解決のために、敷金返還請求権の存否を確定する必要があるといえる。したがって、本問の敷金返還請求権確認訴訟は、将来の法律関係を対象とするものであるが、現在の紛争と密接に関連し、その解決のために不可欠であるとして、確認の利益が認められる可能性がある。