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連帯債務

共同事業を営むAとBとは、2022年4月1日、C銀行から事業の運転資金として1800万円を借り入れ、連帯して債務を負った(以下、「甲債権」という)。同年3月にAの子DであるFの経営が悪化したため、Aは、C銀行に頼みこんでAの子Dも事業に参加した。A・Sの事業計画は順調であったので、C銀行は、まず追加融資を決定した。しかし、Dが経営状況が悪化するおそれがないとはいえないと考え、Bの甲債権の連帯債務者に加わること、そして、前年のDの負債には不幸も抱えないので、Dの母娘でありがつの家であるFをそのむ銀行に申し立てて担保提供するとのことで2つのことを条件に、同年4月15日、A・B・Dの連帯債務の形で1200万円を追加融資した(以下、「乙債権」という。なお、CとE間の連帯保証契約は有効に成立するものとする)。ところが、同年9月、円安によるコスト高の影響でA・Sの事業が急速に傾き、Aは、甲乙両債権の期限の利益を喪失した。さらに、Aが自己破産するという噂がたった。Dは、Fの母、妻E、子F、D(の妹)である。(1) C銀行は、Bに対して、甲債権の履行を請求できるか。Bの甲債権につき全額を弁済した場合、Bは、他にいくら求償できるか(以下、求償権の計算にあたっては利息等は無視してよい)。(2) C銀行は、Bから甲債権の全額弁済を受けるとともに、乙債権につきBに300万円の弁済を受け、Bに対し残債務900万円を免除する旨意思表示をした。Bは、他にいくら求償できるか。その後、C銀行は、Dに対して900万円の支払を求めて訴えを提起した。このC銀行の請求に対して、Dはどのような反論が可能か。(3) EがC銀行に対し現金(950万円)を有している場合、C銀行から甲債権につきEの弁済を求めたBは、いくら支払えばよいか。また、Cへの弁済後、他にいくら求償できるか。参考判例と設問参考判例① 最判昭34・6・19民集13巻6号757頁② 最判平10・8・10民集52巻6号1494頁設問1. 連帯債務の成立・態様・効力連帯債務は、主観的共同または当事者の意思表示により成立する(436条)。前者の例として、719条は、共同不法行為者が「連帯して」賠償責任を負う旨を定める(419条の規定は、「連帯して」は不真正連帯債務であるとされたところ、2017年の民法改正によりそのような解釈上の混乱は不要となった)。人間の乙債務のように、A・B・Dの1つの融資契約に対して(連帯の合意)をすることで連帯債務を成立させること(随時連帯)はもちろん、甲債務につきA・Bの契約とDの契約が別々に行われたように、別個の契約の中で、順次、連帯の意思表示ケースでも連帯債務は成立しうる(いわゆる共時連帯。連帯債務者の1人についてのみ時効が完成するような事態が生じうるのである)。また、連帯債務者が「連帯の合意」を保証したように、連帯債務者の1人についてのみの免除、または連帯債務の全部を免除したとしても可能である(448条参照)。これらについては、連帯債務者の数に応じた額についてのみの免除であって、437条(2017年改正後に438条に条項対応)は連帯債務者の1人についての法律行為の無効・取消しの他の連帯債務者への効力を妨げないとし、混同、消滅事由によると解される。つまり、連帯債務者の弁済とこれにつきA・B・Dをそれぞれ連帯債務者とするとAはB・Dの債務も連帯し、そのうえ、甲債務と乙債務を担保するのを目的として、Eの保証債務もしているといえる(AやBの債務の保証も含む)。連帯債務は、債権者との関係(対外的関係)では各自が全部給付義務を負担するが、その連帯債務者との関係(内部関係)では、自己の負担部分について最終的に責任を応じて負う。この負担部分は、連帯債務者の特約によって定まる。特約がない場合は各連帯債務者が受けた利益を考慮して決定されるが、この場合も、各自は平等とされる(442条1項)。本問ではA・B・Dの負担部分を3分の1として仮定した場合も、この割合で連帯債務に乗じることによって、各自の具体的な負担額(負担部分額)が算出される。つまり、A・B・Dは、債権者Cに対しては甲債権1800万円、乙債務1200万円の全部給付義務を負うが、他の連帯債務者との関係では、各自、甲債務について600万円、乙債務について400万円の範囲で、最終的に債務を負担することになる。小問(1)は、甲債権を弁済した結果、甲債権は全額のために消滅した(弁済の絶対効、消滅の規定はないが「債権の一体性から当然の効果であって、民事経済的効果もある絶対的効力をもつ)。これにより、自己の負担部分以外の1200万円を求償できることとなる。Aが自己破産しているため、連帯債務者Aの負担部分をD・Fにどのように相殺させるかを明らかにする必要がある。2. 連帯債務の相殺Aの甲債権はどのように消滅するのか、自分債務は、相続開始に応じて法律上当然分割され、各共同相続人がその相続分に応じてこれを承継すること(最判昭和29・4・8民集8巻4号819頁)を前提に、参考判例①は、連帯債務者の1人が死亡した場合、その相続人は、被相続人の債務の全部を承継したものと求償し、各自の負担した債務において求償される。Aの甲債務1800万円につき、相続分4分の1のDとFとEとがそれぞれ450万円(1800万円)を相続し、その結果、債権者とこの関係では、甲債務につきB(1800万円)・D(1800万円)・E(900万円)/B(1800万円)・D(1800万円)・F(600万円)/B(1800万円)・D(1800万円)ーDは相続開始前から甲債務につき連帯債務を負担しているのであるから、Aからの承継の結果を考慮する必要がないことについても参考判例①が明言しているという。なお、不真正連帯債務(一部連帯)は、自己の連帯債務者について求償の相手方と解される。これに対し、学説は、法律関係が複雑化すること、債務者の利益が低下することを懸念して、各共同相続人が共同の連帯債務者とともに全部の連帯債務者となるとする見解が有力である。注意すべきは、①共同相続人の間では連帯関係が生じないこと、②共同相続人間の最終的な負担部分の配分が相続人の間で決定されることである。甲債務に対して具体的にいえば、①AにはBおよびDとの内部関係で600万円を最終的に負担すべきであったから、この600万円がE、D、Fに200万円、DとFにそれぞれ分有承継される(ただし、Dは、Cに元来の自己の負担した600万円を払った場合も、Aの600万円を承継しなければならない)。②D・F・Eとの間では連帯関係も求償関係もないため、D・F・Eは連帯者となっている。これは、あくまでも連帯債務者間の求償関係をめぐる1人であってしまったからである。そこで、小問(1)のように、Bが甲債務の全額を弁済した場合には、主に示したとおりの1200万円をD、Eに750万円、Fに150万円の限度で求償権を行使することができる。なお、Dの相続として200万円と300万円は、D・Cの利害関係に立って、Bから求償権の全部または一部の弁済を受けることができる。BがD、Fから求償をうける債務者から900万円のうち400万円について、Dの連帯債務を承継させる方法もとりうる。「債務の一体性」として債権者の側に一切の負担がなかったとしても、500条の規定「自ら求償できる」にあたる(→本節解説)。3. 連帯債務者の1人による求償各連帯債務者の最終的な負担部分額は全連帯債務者を通して計算される。もっとも、甲債権のDから求償権の全部をD・Fに求償されたわけではない。なお、内田「自己の負担部分」の「免責を得たこと」と、その免責が「自己の出捐」によって得られたことのである(442条1項)。共同の免責とは、他の連帯債務者の債務の全部または一部)を免れさせることである。自己の財産をもってする免責とは、出捐(財産の犠牲、損失、喪失)を意味する。弁済はもちろん、代物弁済、供託、相殺(439条1項)、更改(438条)はこれに当たるが、免除や時効の完成による債権の消滅は、441条ただし書の特約により自己の出捐を肯定したとしても、自己の出捐を伴わないので、要件③を満たさないから、他の連帯債務者や保証人に対しその効力がおよぶことはない。小問(2)では、甲債務の全額と乙債務のうち300万円を弁済しているので、上の2要件を充足している。連帯債務者の内部関係では一部弁済でも可であるためである(442条1項)。Bが乙債務につき自己の負担部分400万円に満たない額しか弁済していない。もっとも、②と③の関係で問題とはならない。たしかに、弁済的に負担すべき負担部分を固有の債務と捉える相互保証説の考え方からすると、それを超えた部分をBのため不当利得をなすはずであるから、連帯債務に際してBは相互に一部分を返還することを要するという理解もなしえない。また、内部関係を一括して連帯債務に適用するとすれば、負担部分額を超えて弁済をするまでは求償できないとする批判がある。債務者の満足を優先させようとするのが原則だ。しかし、判例は古くから、負担部分額を超えない割合で自己の求償を認めており(大正元・6・3民録23輯863頁、大判昭和8・2・28新聞3520号)、これに賛成する学説が多数であった。2017年改正民法は、こうした判例・学説を踏まえ、442条1項に「その免責を得た額が自己の負担部分を超えるかどうかにかかわらず」という文言が挿入された。これにより、自己の出捐の意味が明確になったといえる。民法442条1項を本問に当てはめれば、次のとおりである。Bは、①乙債務の一部弁済によって、もしAが存命であればその負担部分の都合である3分の1を免じた100万円を求償し得るはずである。また、甲債務部分でBのDに対して6分の1の100万円の償還ができる。そこで、相続分2分の1のDとEに50万円、4分の1のFにD・Cの125万円(Aから相続した200万円と元来の負担部分100万円との合計額)、同じくそのFに25万円の合計25万円の求償ができることになる。他方、Bが乙債務について受けた900万円の免除による免責については、先に述べたとおり連帯債務の全部を消滅させたわけでない。求償権は一切発生させない。以上、Bは、小問(2)においてBが求償すべき小問(1)と同様の永続的債権が可能である。しかし、Dに対しては、975万円、Fに375万円の求償請求が可能である(B乙債務600万円と甲債務100万円を現時点で負担していることになる)。求償要件については上記のとおりであるが、事後・事前の通知を怠ると、求償権の行使が制限されることがある(443条)。事後通知を怠ると、債権者との間でした弁済を他の連帯債務者に対抗できない場合もある。また、事前通知を怠ると、他の連帯債務者が自己の債権を有する債権者に弁済する機会を奪うことになる。他方で、善意で第三者に対抗した弁済をすること目的とするとされている(関連問題参照)。ちなみに、同条について2017年改正前に条文がいくつか改正修正された。ちなみに、1項と2項にそれぞれ「他の連帯債務者があることを知りながら」の文言が追加された。これは、共同の不法行為関係に基づく連帯債務である場合は通常、他の連帯債務者の存在を知らないことから求償権を行使できない不都合を回避するためである。共同不法行為が民法479条(470条2項)によっても連帯債務を負うとされており、共同不法行為者間における求償権を否定する趣旨であると解される(同条3項)。他の連帯債務者も善意で第三者に弁済した場合にはこれを認めるべきである(→本節解説)。本問では、甲債権の弁済にあたり、BがD・F・Eに事前の通知をしたか否かは明らかでないが、仮にBが通知をしなかった場合、D・F・Eは小問(1)におけるD (1)(3)の合意があることを主張してBに求償権の全部を払うことを請求できる。Eからの事後通知を怠った場合、Bからの求償権を否定しうる。Eが乙債権につき300万円の弁済をしても有効にD・Fに求償できるか否かの問題となる。求償権を放棄した場合でもBがAの死亡による相続を知らなかったとすれば、通知をしなかった過失を連帯債務者に帰責する。したがって、D・Fは求償請求を拒絶し、Bに求償権をもって対抗されてしまう。もちろん、Eから求償を得られなかった300万円に関しては、同項後段の「相殺によって消滅すべきであった債権」の履行として最後までCに請求できるから、弁済後の求償にまで相殺が有効に行えない。しかも、本問のように債権者が金融機関であれば、ともかく、一斉に弁済する債権の場合、回収不能のリスクが相殺権を有したにもかかわらず、Bへと転嫁されることを意味する。この点に注目すると、求償権の機能には、他の連帯債務者の権利行使の機会を保障するだけでなく、求償権の無効な相殺の危険もあることがわかるであろう。なお、ここでは事前通知についてやや詳しく述べたが、小問(3)において、Bの事後通知の懈怠に注意を要する。CがDと乙債務の履行について請求をしていることから、速やかにDによる弁済がなされると思われるからである(関連問題③、最判昭57・12・17民集36巻12号2399頁参照)。4. 連帯債務者の1人に対する免除の効力小問(2)について、乙債務につきBが900万円の免除を受けたことは、他の連帯債務者Dたちの乙債務にどのような影響があるのか。連帯債務者の1人に対する債務免除の効力について、2017改正前の437条は、当該連帯債務者の負担部分についてのみ他の連帯債務者も債務を免れると定めていた(免除の絶対効。求償の関係も複雑でメリットがある)。そのような規律を前提に、一部免除の効力をめぐって考え方が分かれていたところ、大審院(大判昭和16・9・21民集19巻1701頁)は、全部免除の場合に比例した割合で他の連帯債務者の債務も免れるとする考え方を示した。具体的には、債務額を負担部分平等の連帯債務者3人のうち、1人が免除された場合、免除を受けた場合、免除者の負担部分(3分の1)である400万円について他の2人の連帯債務者にもその効果が及び、それらの者の債権額は800万円に縮減する(内部関係では、被免除者の負担部分はゼロ、残りの2人は各400万円)。全額1200万円の一部である300万円の範囲で免除をされた場合は、4分の1すなわち負担部分の割合で減額を認めるべきであると考えられる。しかし、同判決は任意規定であるため、これと異なる内容の免除(たとえば、他の連帯債務者には免除の効力を及ぼさない旨定めてもいわゆる「相対的免除」)も可能であり、また、免除という表現を用いながらも債務の消滅を意図せず、単に以後請求しないという趣旨の「不訴求合意」にすぎない場合もあると考えられてきた。通常、債権者は無償の債権回収を欲するであろうことから、連帯債務者に対し債務を免除する誘因を欲した。このように、連帯債務者の1人に対してなされた免除の効力を他の連帯債務者に及ぶことについては、その免除の意思解釈が要求されていたのである。これに対し、民法437条は、2017年改正により「その連帯債務者の負担部分の限度において、他の連帯債務者の債務も消滅する」とされ、従来の判例・学説における全部免除の場合に比例した割合で他の連帯債務者も債務を免れるという考え方が採用され、いわゆる「相対的免除」は2017年改正民法437条に条文が適用されうるようになった(437条参照、445・2・3条項参照。最判平成8・11・28民集52巻11号1991頁)。参考判例によって、不真正連帯債務者間においても免除の意思解釈いかんによっては絶対的効力が認められるとされたことで、いわば免除の意思解釈が重視されることが示されることとなった。このような状況を踏まえ、2017年改正民法437条を削除することで、免除を相対的効力とする見解が採られた。ただし、相対的免除の原則を定めた441条(2017年改正法440条に対応)には、反対の意思表示があった場合は例外が付された。特約によって他の連帯債務者に対しても効力を及ぼすことが明らかにされた。つまり、現行法下では、原則として免除は相対的効力をもつにとどまるが、免除者が他の連帯債務者の債務による「絶対的免除」もありうるから、やはり意思解釈が必要である。以上を本問に当てはめると、CがBに対する乙債務の免除は残額の900万円であるとしても、Bの負担部分400万円をD、Eに及ぶことをCは意図しておらず、すでにDに441条ただし書の「特約」が認められる。そこで、絶対的効力を及ぼすことが考えられる。Dは求償の限度で、DとEが乙債務の900万円のうち、相対的効力により、Dは求償の限度で免除を受けられることになる。しかし、CはDに900万円の履行を請求できる。Dから求償を得られないであろう。5. 連帯債務者の1人による相殺弁済の効果のある行為が同じく連帯債務者について、求償権が発生した場合も有効である。すなわち、相対的効力は、1人による相殺の場合も有効である。すなわち、相続により、弁済者が債権者に対する債権を有する場合でも有効である(相殺の絶対効、439条1項)。求償権を発生させてからである。小問(3)では、Bが履行請求を受けた場合、Bが有しているかの問題である。このことを検討する前提として、E自身が相殺した場合の処理をまずは明確にしておくというであろう。本問では、EがCに対して950万円の普通預金債権を有しているので、Eがこれを自働債権として、Cの甲債権(ただし、Aを共同相続したDの対抗にあうことになる900万円を限度とする参照)を受働債権として相殺の意思表示をすれば、対当額900万円につき相殺の効力が生じる。つまり、Eの預金債権が50万円になる一方で、CのEに対する甲債権900万円は消滅する(505条)。また、相殺に絶対的効力が認められるゆえに、上記のようにEの負担部分も900万円は消滅する。そして、Eの最終的な負担部分300万円も求償できるから、連帯関係にあるBやD)との間で各300万円の求償関係が生じる。このように連帯債務者の1人が相殺をなしうることは、その者が自ら相殺しない場合に他の連帯債務者にとってどのような意味があるのか。小問(3)においてBが相殺の権利を行使できるか否かにつき、改正の前後で処理が異なる。まず、2017年改正前民法は、対外関係を有する債権者が債務を負担するものの、他の連帯債務者の利益を援用することを許容されていた(2017年改正前436条2項)。この「援用」の意義をめぐって争いがあったが、判例(昭和32・12・13民集11巻14号1945頁)は、他人の相殺権を行使できるという意味合いの意義に解していた。これによれば、Bは、Eの負担部分(300万円)の限度で相殺権を行使でき、甲債権は連帯債務者全員のために1500万円に縮減する。ただ、甲債権につきBにさらに求償されることはないから、B・Dの合計1500万円を弁済すれば、Dに750万円、Fに150万円(Dは相続分から自己負担分+150万円(Aから相続した負担部分))、Fに750万円の求償ができる。このように、改正前民法は、負担部分に関して債務を絶対的に消滅させることで、相殺によるつもりの連帯債務者への求償を回避する構造であった。しかしながら、従来、他人の相殺権を援用する者の意思に反しないか等の批判があったことから、2017年改正民法436条2項の性質を見直す気運が高まり、現行法では、他の連帯債務者が有する相殺権を援用できるかについて、この点、他の連帯債務者の負担部分の限度で他の連帯債務者に履行を拒絶するルールが採用された(439条2項)。したがって、Bは、Eの負担部分である300万円につき履行拒絶を主張して1500万円を弁済すればよい。その結果、CのBおよびDに対する甲債権は、相殺を主張しても消滅せず、Eの負担部分300万円をDに求償することができる。この場合にBが弁済した1500万円のうち、自己の負担分600万円とBおよびDのそれぞれに300万円(Dのそれは600万円、Bのそれは300万円)につき、BはDに対して600万円の求償権をもつことになるという。相殺権を有する連帯債務者の利益や意思を保護しつつ、相殺権を援用する連帯債務者にも一定の利益を確保するというバランスのよい解決策であろう。Eが相殺権を有するだけで、他にいくら自己の負担部分に対応する求償権を放棄したとしても、Bからに対する総合的な求償を認める処理もありえよう。いずれにしても、先に述べたとおり、資力のある連帯債務者がいないと、求償権のリスクが伴う場合、Bにとっては民法440条の事前通知の意義がある。関連問題(1) E自身が相殺権をもって求償権を放棄した場合、連帯債務についてどのような問題が生ずるか説明しなさい。(2) C銀行がDに甲乙両債権の履行を請求した場合、B・E・Fにとっても、同時履行の抗弁権(447条1項1号)が生ずるか。(3) 小問(2)において、Bが債務超過を負っている場合に、DがCに900万円を弁済したとしても、DがBに求償権を認めていた場合の処理について検討せよ。参考文献篠田雄介・法教205頁/篠田雄治・126頁/平野裕之・リマークス19号(1999)35頁 (宇高克己)