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再発防止が重要な理由

(1) 小さな事故・違反から始まっていることが多い情報漏えいであれ、不適切な情報発信にせよ、いきなり、ネットの利用初日に発生するということは稀である。情報漏えいであれば、普段から USB メモリに機密文書を入れて持ち帰る、メールの送信先をチェックしない、アドレスを登録もせずに送信するなど、そのようなヒヤリ行為が、事故発生以前に繰り返されていることが通常である。不適切な行為をしていきなり事故が起きるということは皆無ではないが、まず滅多に起きないことである。不適切な情報発信でも、筆者の経験上、ほとんどのケースでは、ろくにチェック体制を設けていない、それどころか、投稿のルールも不十分か甚だしくは存在しないケースがほとんどである。そうした中で、「企業の公式アカウントだから」ととりあえず、注意しよう」程度の認識で投稿を繰り返しているうちに、問題のある投稿をしてしまう、というのが通例である。もう少しわかりやすいたとえを出すと、飲酒運転等違反が原因の交通事故に類似しているといえる。飲酒運転にせよ、速度違反にせよ、それらがただちに交通事故につながるものではない。それらを繰り返しているうちに、事故につながるというのが通常である。こういう痛ましい事故が起きるたびに、以前からドライバーが違反行為を繰り返していたとの事実が明らかになることは珍しいことではない。小さな違反や事故の繰り返しが、大きな違反や事故につながるというのであれば、その小さいうちに発見して再発を防止することが可能である。そのような予防の契機にできるという意味で、小さな違反や事故は、重大な結果の原因であるが、一方で従業員への指導や注意、ルール策定のチャンスであるともいえる。(2) 小さな事故の再発防止は大きな事故の発生時の説明にも使える本書の前半でも触れたが、ネットトラブル全般は、法的措置による被害回復が非常に困難である。誹謗中傷など明白な加害者、責任を負うべき者がいるケースでも、その発信者を特定することの難しさ、そして賠償金額の不十分さから、被害回復はとても難しい。また、USB メモリの紛失やメールの誤送信などの情報漏えい、あるいは不適切発信による「炎上」のケースであれば、責任は自社にある。したがって、お詫びをする必要はあるが、誰かの責任を追及すること自体は不可能だということになる。結局、賠償請求による被害回復が現実的ではないケースが大部分であるということで、上記の前提においては、自社からの広報の有用性、方法を解説した。前作ではゼロからの広報(プレスリリース)の作成方法を解説したが、できれば、何か書ける材料があればよい。デマなどの誹謗中傷を打ち消す内容はもちろんのこと、情報漏えいを一方的に自社が悪い事実においても、その落ち度を打ち消し、読み手に説得力を与える材料があれば、その有効性は大きくなる。そこで、小さな事故の再発防止は次の2つの視点から、広報において活用、つまりは記載することで説得力が増す。① 過去において小さな事故があり、再発防止のために尽力していたこと、それにもかかわらず事故が発生してしまったこと② ①の対策をさらに強化すること①については、防止策が不十分であったということで、失策のように取られるかもしれない。しかし、社会の耳目を集めるような企業の大祥事においては、「以前から問題のある行為・取扱いがあり、放置されていた。その結果、今回の重大な結果につながった」というケースが少なくない。そうした中で、不適切行為を放置していたのではないか、という疑いを払拭できるような材料を事前に用意しておけば、広報において周知することに困らないということになる。また、対策をしていれば、結果的に問題が生じたのであるから、不十分であるという誹りは免れないとしても、②の対策を強化する、あるいは、そのような方向で十分に対外的に発信できる材料が手に入る、ということになる。もちろん、小さな事故を発見して、再発防止策を講じることの第一の目的は、事故の再発防止であり、ひいては、大きな事故が起きないようにするためである。ただし、それでも人間というのはミスをするものである。そのような場合に備えて、被害の発生防止だけでなく、その被害の拡大防止、被害の回復にもつながるという観点からも、再発防止策は重要である。このような再発防止策は、大変である、必要なこと、そのように言われてもなかなか実践しにくい。だが、このようなメリットもあるとわかれば、意識的に取り組めるのではないだろうか。(3) 是正のきっかけになるし、それをしない従業員を処分できる小さな事故や違反の再発防止は、是正のきっかけとなる。USBメモリが一時的に行方不明になったが、すぐに社内で発見された、あるいは、メールやファクシミリを誤送信したが、そもそも宛先が存在しなかったので届かなかった、または第三者に閲覧されても問題のないものであったなど、そのような小さな事故はたびたびあるかもしれないが、いずれも是正のきっかけにすることができる。「今回は、大事にならなかったが、今後はそうならないように、〇〇に注意しよう」という具合に、である。人選誰しも、抽象的に注意点を述べられただけではなかなか説得力を感じない。筆者の経験でいうと、中小企業の経営者に「残業代はしっかり払いましょう」といっても、なかなか説得力を感じてもらえないということがある。そのような場合には、「私が代理して残業代を請求した案件で、付加金(残業代が未払いの場合、裁判で請求すると同額が付加される制度である。つまり、倍額になる)もついて合計で700万円になったことがあります。今は閉滅時効が2年から3年に延長されているので、今だったらもっと高額になります」と言うと、興味や危機感を持って聞いてもらえる。このように、抽象的な注意や警告は、受け手にはあまり感銘を与えないが、具体的な内容、それも自分自身の不利益に関わるものであれば、人は真剣に注意を向けてくれる。特に、実際に事故に至らなくても、不当な情報の取扱いについては、就業規則や業務上の指示に違反するということになれば、懲戒処分が可能である。もちろん、解雇はそう簡単にできないし、文書で注意するなど、そのような程度から始めることにもなる。もっとも、それでも、心理的な効果は強いし、仮に繰り返しがあれば、さらに重い処分を行うことでもある。処分を行うことはもちろん手段であって目的ではない。ただ、このような対処をすることで、非違行為の防止になるだけでなく、(2)で述べたような対外的な説明に使うことができる。非違を和らげる効果も期待できる。つまり、従前から違反については指導や処分を行ってきたが、それでも防げなかったということで、純粋な設備で生じた事故ではない、と説明することができるということである。