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SNS利用のルール

(1) プライベート利用のルールかつて、インターネットに投稿し、交流することは、一部の人の趣味であった。しかし、今は、老若男女問わず、広くSNSを利用してインターネット上で交流がなされている。会社の従業員、特に新入社員は、SNSを利用していない人のほうが割合的に少ないかもしれない。SNSでは、よくも悪くも人々の本性があり、あるいは本性が投稿されていると信じられているので、その影響力は無視できない。筆者の元にも、就職情報サイトに、パワハラがある、労働時間が長いと投稿をされて、応募者が減った、内定辞退者が増えた、というような相談は多々ある。また、クリニックや飲食店にとっては、「口コミ」の影響は深刻であり、身に覚えのない中傷のせいで客が減った、というような話は枚挙に暇がない。このような影響力の大きさを踏まえて、最近は、企業もSNSを活用することが多い。より顧客に目にしてもらいやすく、また、顧客との交流を通じてファンに親しみを持ってもらうなどの効果も期待できる。しかし、気をつけないと(気をつけていても)不用意な発言が原因で炎上を起こすこともある。また、ひと昔前まで、特別の事情がない限りは、実名で活動することは稀であった。しかし、昨今のSNSにおいては、実名で活動するケースも増えている。さらには、自分の所属・肩書きを記載することも多く、それが原因でトラブルになるケースも増えている。さて、企業自身がSNSを利用する場合の注意点は、(2)で触れることとし、ここでは、従業員が業務外でSNSを利用する場合における、企業に発生するネットトラブルのリスクと予防法について解説する。従業員がプライベートで、企業活動とは何ら関係がなくSNSで情報発信をすることで、その悪影響が企業に及ぶして及ぶのかという疑問もあろうかと思う。結論からいうと、そのようなケースは、いくらでもあり得るし、筆者もたびたび相談を受けている。ケースについては、以下のような分類が可能である。① 所属(企業名)を明らかにせずに活動していたが、SNS上の言動で企業に被害が生じる例② 所属(企業名)を明らかにせずに活動していたが、意図せずにその所属が明らかになり、かつ、SNS上の言動で企業に被害が生じる例③ 所属(企業名)を明らかにして活動していたところ、SNS上の言動で企業に被害が生じる例まず、①のケースであるが、これはかなり例が少ない。具体的には、SNSで非常に過激な発言、脅迫や名誉毀損に該当するような発信をして、刑事事件となるようなケースである。要するに、事件を起こすと、マスメディアなどが取材をしてその者の所属を調べ、報道をする、というものである。特に社内で、「殺人予告をしたのです」と、ルールを作るわけにもいかないが、③に対応するルールを作れば、内包(このような投稿は、ルール以前の論外という趣旨である)される。次に、②であるが、これはよくある事例である。筆者も相談を受けることがたびたびある。特徴的なのは、本人も自らの所属を明らかにしていない、匿名であることが多い。しかし、炎上するような発言をして、さらに所属先が突き止められてしまう、というものである。そして実は、③のケースより深刻なケースが多い。というのも、所属を明らかにせず、匿名なので、まさか自分の個人情報や勤務先がバレることはないだろう、だから、これくらい過激なことを言っても大丈夫だろうと、反感を買うような発信が行われやすいからである。ところで、以下に述べるとおり、意外と所属はバレてしまうものであり、そうなると、そもそも所属がバレることを前提にした発言内容ではないので、行き過ぎた発言になりがちであり、「〇〇社の奴がこんなことを言っている!」というように炎上するのである。さて、このように炎上が起きるのは、インターネットには名探偵がたくさんいるからである。そして、非難を浴びるような発言をすると、「名探偵」たちが「こんなケシカランことを言った奴は、どこの誰だ!」ということで、所属を割り出そうとするのである。そして、ネット上で継続的に発信をしていると、彼ら名探偵にとっては、所属を割り出すことは、意外にさほど難しくない。「所属先を書いていなくても割り出しは可能である」ことは、研修について解説する第3章でも触れるが、モザイクアプローチという手法が用いられる。モザイクアプローチとは、断片的な情報を組み合わせて、意味のある、価値の高い情報を突き止める、という手法である。たとえば、筆者が研修や相談等でよく用いるが、「地方銀行の銀行員を名乗って、社会について辛口論評するブロガー(SNSユーザー)」を想定するとわかりやすい。その銀行員は、もちろん銀行名を明らかにはしていない。しかし、地方銀行といえば、(一社)全国地方銀行協会に加入している62行ということで、あっという間に絞り込めてしまう。加えて、「今日は、投資の説明会だったが……」などという投稿をすれば、当日、あるいはそれに近い日に、そのような説明会を実施している地方銀行がわかれば、たちどころに1行に絞り込めてしまう。62行であれば、労を要しない。「名探偵」が、62のウェブサイトを閲覧して絞り込むことは現実的に十分あり得る。そして、当該銀行が、顧客に対して批判的な言動をしていれば、「ケシカラン銀行員がいる銀行」ということで、容易に炎上につながることになる。インターネット上において、このようなモザイクアプローチが可能なのは、同じ発信者が長期にわたり発信をしていれば、その発信内容は蓄積していき、ごく一部の投稿に含まれるごく一部の情報だけでも相当な分量になる、という性質が原因である。つまり、1回こっきりの発信であれば、その中に、発信者の属性(上記の例でいえば地方銀行勤務)が含まれていても、発信者にたどり着くことは難しい。しかし、インターネット上の情報発信、SNSブログは、過去の投稿が、延々と積み重なっていく。そして、基本的に勤務先のような特定につながる属性は変動しない。そうなると、たとえば数カ月に1回、勤務先の業種等、特定につながる情報を発信し、それを2年3年と続けていけば、10件近い属性、ヒントを与えることになる。そうなると、個人が、少なくとも勤務先を特定することはさほど難しくない。「機密情報は積み重なっていく」「積み重なりから複数の『属性』を抽出すると勤務先等の情報が特定できる」「反感を買うような情報発信をすると、発信者を特定しようとする者が現れる」、これらは、長年ブログなどを運営している者であっても、あまり意識していないことである。留意する必要がある。ただし、プライベート上のSNS利用について、就業規則や社内ルールに定めることは、なかなか難しい。もちろん、プライベート上の非行であっても、会社の信用等に影響があれば、懲戒事由にはなり得る。この点については、直接ルールを定めるというより、第3章で解説するように、研修において心構えを身につけてもらうことが相当であろう。次に③のケースであるが、これは、②よりは少ないが、しばしばある。②と異なり、所属も明示されているので、あんまり危ないことは言わないでおこうという注意ががあるからである。もっとも、何がきっかけで炎上するかわからない。このあたりは、(2)で触れる注意点と重なるので、そちらで解説する。第3章の研修の項目で詳しく解説するが、個人の特定まではともかく、所属については簡単に特定されてしまうこと、特に匿名なので油断して過激な発信をすると、それで反感を買って名探偵がたくさん現れるという、SNSの構造がある。これらは味わわないとわからないリスクなので、研修等で強調することが重要である。(2) 企業広報としてのルール(1)で触れたように、企業がSNSを広報に利用するケースは増えている。単純に広告としての効果を考えても、通常の広告であれば、企業自身の発信以上に広がることはあまり想定できないが、SNSにおいては、それを「シェア」つまり共有することで、消費者自身が拡散してくれるという特徴がある。また、そのような「シェア」の動向次第で、広告が成功しているのか、反響はどの程度か、という貴重なデータも得ることができ、メリットが大きい。さらに、企業側からの情報発信だけではなく、自社の製品やサービスについて意見を受け付ける、返答するなどの相互交流にも利用されている。この相互交流は、後述するように、非常にリスクが高いが、一方で、貴重な意見を得られる、ファンを獲得することができるなど、広報効果が非常に大きいというメリットがある。また、SNS、たとえばTwitterには、個別の製品やサービスへの不満、疑問点が投稿されることが多い。こうした場合に、そこから情報を得るだけではなく、個別に返信をすると、非常に喜んでもらえることが多い。たとえば、「A社の製品Bで、〇〇をしたいんだけれども、どうしたらいいんだろう」というような投稿(つぶやき)に対して、「A社の〇〇です。それについては、〇〇としていただければと思います」というような返信がされることがある。ユーザーとしては、疑問をつぶやいただけいで、何かサポートにメッセージを送った、サポートを要請したつもりはないが、「困っているところに、頼んでもいないのに親切に現れて助けてくれた」ということになるので、非常に高い顧客満足度が得られる。ただし、さすがに相互交流は気をつけないと(気をつけていても)反感を買って容易に炎上してしまう可能性がある。そこで、顧客とは交流しないが、製品情報以外にもいろいろと(オフィス近くで食べたランチがどうとか……)つぶやくことで親しみを持ってもらう、製品には興味はないが役職・つぶやきには興味を持ってもらい、最終的に製品(会社)にも興味を持ってもらう、という方法もある。以上、まとめると、企業のSNSの利用スタイルとしては、次の3類型がある。① 広報だけを行うタイプ(会社の公式ウェブサイトの更新情報や引用を発信する)② ①の他に、業務や休憩時間の話などもする(鎌倉で何を食べた等、企業活動との関係のない投稿もして、親しみを持ってもらう)③ ②に加えて、ユーザーの自社製品、サービスに関する投稿に返信をしたり、あるいは、自社の取扱いジャンルの製品の購入を迷っている人におすすめしたりする(例:タブレットの購入を悩んでいるため投稿をしている人に、自社製品がおすすめです、と返信する)②や③は、うまくいけば、相当の広報効果があるが、炎上リスクもある。①については、さほど広告効果はなさそうだが、新製品の発表などをシェアしてもらえることもあるので、ただのウェブサイトよりは広報効果が出やすい。①→②→③の順で広告効果があるが、その代わり、リスクが高くなるということである。方針としては、①や③の運用経験のある者を採用できるという事情がない限り、①から始めるべきである。①でも広報効果はあるし、こちらから返事をしない場合でも、どのようなリアクションがあったのか、そうした情報を得ることはできるからである。また、新製品発表など、ウェブサイトでも掲載するような情報をそのまま掲載するのであれば、ミスも生じにくい。一方で、②と③は、何でもない投稿をいじられるのであれば、それは炎上の原因としては十分である。たとえば、①や③を目指すにしても、最初は、①から開始することが絶対に重要である。具体的には、以下のような方針・ルール・体制を整えるべきである。I 開始する前にそのSNSをしばらく閲覧するSNSには、それぞれ、特徴・傾向がある。要するに、SNSそれぞれに空気があるから、空気が読めるようになるまで眺めているべきである、ということである。社内でそのSNSについて詳しい人物や利用歴が長い者がいるのであれば、過去にどのようなトラブルが起きたのか、どのような言動がトラブルになりやすいのか、そのようなことを聞くことも有効である。II 投稿を阻む (①→②→③)すでに述べたとおり、この順序で広報効果は上がるが、リスクも高くなる。何事も、より簡単なものから難しいものへと進めるべきである。これは、Iとも関係することであるが、何がトラブルになりやすいかなど、「空気」を理解して読めるようになっておくことが大事である。最初から、②や③をするのは、非常に危険である。III 最初に対応範囲を決めて、それを掲示しておく実名、所属、特に専門分野などを明らかにしているとよくあることだが、全く交流のなかった人から、いきなり質問を投げかけられることがある。企業の公式SNSアカウントでも同様である。いろいろと要望や質問を投げかけられることがある。この場合、留意しなければならないのは、インターネット上には、少なからず、「自分の問いかけには絶対に答えてもらえる、それが当然である。私の問いかけに答えないのは、何か後ろめたいことがあるからである。私は、私の言動が正しいと承認しているからである(だから、何も言い返せない)」という誤解を抱いている者がいることである。要するに「赤の他人であっても、自分の相手をしてもらって当然」と思い込んでいる人々であり、とんでもないワガママだと思うが、相手が企業のアカウントや実名アカウントだと、このような一種の甘えのような感情を抱く人は少なくない。こうした者は、返事がないと、返事がないということ自体を問題視して、誹謗中傷をしたり、とにかく、当該公式アカウントを炎上させようとしたり、問題行動に及ぶことになる。したがって、最初に、SNSアカウントのプロフィール欄など、見やすい場所に、「このアカウントへの問い合わせ・メッセージへの返信は行っておりません」など、掲載しておくことが大事である。なお、上記の②③をする場合、返信をしたいケースもある。この返信をするという方針を立てる場合であっても、「返信をするかどうかは、こちらの指針次第である。返信を約束するものではない」ということは、表示しておいたほうがよい。この場合には、「このアカウントへの問い合わせ・メッセージへの返信は、お約束できません」などと、返信することはあるけれども、確約するものではない、ということを明らかにしておくことが適切である。IV 特段の事情のない限り、意見の対立のあるトピックについては発信しない政治関係、政策、思想など、意見の対立のあるトピックについての発信は、避けるべきである。なお、この場合、「ほとんどすべての賛同が得られており、反対者の意見は、メジャーなメディアでは一切出てこないに等しい」場合であっても同様である。反対者が全体の数パーセントいれば、炎上につながるには十分であるからである。言い換えると、ある意見を見てそれに反対する、その発信について反感を覚えた者は少数でも何故も存在する。大勢の者が発信するのと同じくらい発信力があるからである。少数でも繰り返し、たくさんいるように見えるし、あるいは、そのように見せかけてくるのである。何が誰の反感を買うか、その判断は容易ではない。そして、大多数ではなくて、ごく一部の人の反感を買うかどうかで炎上の有無は決まる。ポイントは、その反感を変える人の数ではなく、その強さである。ごく一部の人であっても、そのトピックについて譲れない強い意見を持っているのであれば、それは炎上の原因としては十分である。たとえば、「男女平等」「民族・人種間の平等」といった、今日において異論がないようなトピックであっても、これに反感を覚える者、そして、それを表明する者に攻撃を加える者はいる。「ほとんどの人に支持してくれる(賛同してくれる)はずだから大丈夫だろう」は、決して通用しない。筆者も、この種の相談を受けたケースのほとんどにおいて、初見では「え? これのどこが問題なの?」と驚き、詳しく読み込み、あるいは事情を聞いて、「なるほど、そういう経緯で問題になったのだな」と理解できることも多い。さて、ここで「特段の事情のない限り」と述べた。企業の方針、提供するサービスによっては、ある程度、この種の情報について発信する必要はあるかもしれない。この場合、VIで述べるような点について留意しつつ、発信することも合理的な選択としてあり得る。たとえば、女性向けの商品を販売している会社において、男女平等について発信をするなどが想定される。V 挑発されるのは当然と心得るSNSにおいては、自分自身が自身の投稿として発信をするだけではなく、他人の投稿にコメントを付ける、あるいは、他人に直接メッセージを送るなど、そのような方法で交流する機能が備わっている。そのため、SNSの投稿に対して挑発的、もっといえば、「いかにして、こちらをイラつかせようか、工夫を凝らしている」のがわかることを言ってくる、挑発に乗るべきではない、と思っていても、やはり人間なので、イラッとくることはあるかもしれない。そのようなことが、頻繁につながって、公式アカウントの運用に支障が出ることもあるかもしれない。あるいは、ついつい不用意な反応をしてトラブルになる可能性もあるかもしれない。そこで、絶対に心得てほしいのは「SNSアカウントを運用するにあたっては、挑発されるのは当然」ということである。なんでそんなことをするのか、理解に苦しむかもしれないが、SNSにおいて、発信をする人の動機の大半は、読んでほしい、それだけではなく、何か反応がほしい、というものである。しかし、読者から得られる技術的な投稿というのは、そう簡単なものではない。そこで、自分の発信について、何か反応をしてもらおう、そのために、あえて挑発的な文言であったり、非難めいた表現が使われることはよくある。自社としては、「この人は、こんなに怒っているのだから、何か自分に落ち度があったのではないか」「こんなに怒っているのだから、対応しておいたほうが無難ではないか」と思いがちだが、そのような必要がないケースは稀である。上述のように、普通に話していても反応してもらえないので、片っ端から実名、公式アカウントに攻撃的なメッセージを送っているという者が一定数いる。筆者も、SNSを利用していて、なぜこんなに挑発的な返信ばかり送ってくるのだろうか、と不思議に思って発信者の過去の投稿を見てみると、自分自身の投稿はほとんどなく、発信のほぼ全部が、他人への攻撃的な返信であった、ということにしばしばある。SNSに不慣れだと、このような投稿にいちいち感情的になったり、あるいは何か応答しないといけないのではと勘違いしてしまったりする。しかし、そのような必要はないし、さらに挑発されるだけであり、何のメリットもない。なお、中には、「返事がないということは、自分の言い分を認めたんだな!」と言われることもある。しかし、そのようなことは、事実上も法律上もあり得ず、気にする必要はない。当たり前の注意点かもしれないが、前もって、「反応がほしくて攻撃的な言動をする」人々がSNSには一定数いることに留意しておくことが大事である。VI 発信前に複数の目で確認する書類を作成して同僚や上司に提出したところ、思わぬ誤字が見つかった、それも、少し確認すればわかるレベルの誤字で、なぜ自分で気がつかなかったのかと驚いた経験はあると思う。自分が作成した文章の誤りというのは、なかなか自分自身では気づきにくい。自分の文章を一番多く読んでいるのは他ならぬ自分であり、間違いがあっても、無意識に自分で解釈を補充してしまうので、気がつかないのである。そして、他人の文章について気がつきにくいのは、誤りに限った話ではない。読んだ人が反感を覚える、いわゆる炎上の原因についてもそうである。「Ⅳで指摘したように、一部の人間の反感を買う炎上の「燃料」として必要十分である。筆者は、業務上、炎上してしまった人からの相談や、炎上に便乗して違法な投稿をしてしまった人からの相談を受けている。最初に、そもそもの発端になった投稿を見せてもらうわけであるが、筆者の目からしても、「あれ? これのどこが問題?」と思うことがしばしばある。そのようなとき、一緒に相談に乗っている弁護士や、あるいは法律事務所の職員に見せても感想を聞くわけであるが、そのうち1人だけが、「これは〇〇という点で問題ですね」と気がつくことも多い。もちろん、その逆もありで、筆者が問題だと言っていたが、他の弁護士や職員がわからないこともある。要するに、ある投稿が炎上するか、それを見分けられるのかは、努力や能力だけの問題ではなく、人それぞれの感性やこれまでの経験によるところが大きいのである。そして、1人の人間が、そうしたものを全部把握することは不可能である。もっとも、複数の目で見ると、それでも「これはまずいのではないか」ということがわかることがある。誤字の例を挙げたが、特に自分の間違いには自分では気がつきにくい。そこで、会社の公式アカウントからの発信においては、少なくとも発信する前に2人以上の目でチェックするフロー、体制を整えておくべきである。意外と、自分以外の人間の目から見てもらうことで、「これは、反感を買うのでは?」と気づかされることは多い。有名大企業ネット上の発信が炎上するケースは、たびたびあるが、その中には、「こんなこと書いたら絶対に問題になるだろう」というものもある。SNSでは、メールの送信のように問題が第1章3(1)で触れた有名メーカーの事例では、災害の直後に被災者でないであろう被災生活に対し、短い募集締切を設定するなど、第三者が見れば炎上は必至の内容であった。しかし、発信者は、もちろん被災者に嫌がらせをしたかった、あるいは、炎上を狙ったのではなく、「これくらいは問題ない」と考えていたと思われる。炎上の原因となる発信のほとんどは、誰かを傷つけよう、あるいは、攻撃する意図はなく、結果的に傷つける、反感を買うことで生じるのである。したがって、複数の目で確認することは必須である。さて、もちろん炎上は避けるべきだが、炎上してしまっても、あまり深刻に捉える必要はない。実害は伴わないことがほとんどである。筆者自身の経験としてすでに述べたとおり、「え? これが原因?」と気がつくことは簡単なことではない。十分に気をつけ、落ち度がなくても、炎上は起きるのである。そのため、仮に炎上が起きても、安易に担当者を非難するべきでないと筆者は考えている。VII 炎上するときは繰り返さない炎上した場合、あるいは、それ以外の事件で、SNS上で「お詫び」を発信することもある。この場合、1回目の謝罪は十分に推敲して発信し、かつ、繰り返さないことが重要である。SNS上では、たびたび、謝罪の発表や対応について、それが不十分であるなど非難が終わらないことも多い。実際に不十分なことが原因であることもあるが、筆者の経験上、大多数は、「叩きやまない」ということである。ネット上で不祥事があった場合、どこからともなく現れて攻撃をする人は多数いる。こうしたケースでは、謝罪を繰り返したところで、落ち度を見つけ出されて(作り出されて)終わらないことがほとんどである。したがって、謝るのであれば、1回限り、十分に準備して行うことが適切である。VIII 「フォロー」に注意SNSには、フォローといって、他の人の投稿を継続的に表示する機能がある。一種の「購読」のような機能である。たとえば、Twitterでは、フォローをすると、その人の投稿がタイムライン(自分のTwitter画面)に表示されるということになる。こうして、興味のある分野について発信している人をフォローしていき、自分の関心のある情報を集める、ということになる。さて、このフォロー機能であるが、基本的には、ある人が誰をフォローしているかは、外部から知ることができる。フォローしているのは、興味関心があるからなので、外部から、自分の興味関心が知られる、ということになる。したがって、企業の公式アカウントでのフォローは、自分のグループ企業に限るべきである。全く関係のないフォローをすると、それだけでも炎上の原因になる。過去には、グラビアアイドルをフォローしていて、それが原因で炎上したという例もあった。