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委任の任意解除

Aは、自己の所有する建物(甲)について賃貸借契約(以下、「本件賃貸借契約」という)をBとの間で締結した。本件賃貸借契約においては、賃貸借期間は5年間(ただし、当事者の合意により更新することができる)、賃料は月額10万円とし、毎月10日までに当月分をBがAに支払うものとすることが定められていた。本件賃貸借契約締結の全容を、BがCに説明した。本件賃貸借契約中の2019年5月に、未払賃料等があればこれを控除して残額がBに返還される旨の特約等が定められていた。また、Aは、甲の賃貸借に関する事務を委託する契約(以下、「本件委託契約」という)をCとの間で締結した。本件委託契約においては、委任期間は5年間(ただし、当事者の合意により更新することができる)、委任事務として、賃借人からの賃料の徴収とAへの引渡し、甲の修繕等が定められるとともに、賃借人から支払われた敷金について、Cが保管し、Cは、保管する敷金に対し月1パーセントの金利をAに支払う義務を負うものの、本件賃貸借契約と本件委託契約が存続する限り、保管した敷金を自己の事業資金として自由に使用できる旨の定めがなされていた。本件委託契約に基づき、Aは、甲を引き渡した。いずれも本件契約は、Aの指定する口座にAが受け取って、Bからの指示に基づいてCがBに賃料を月額100万円で賃貸するというものであったところ、Bが賃料を滞納し、Aに月額70万円しか支払ってもらえないと書面で申し入れたことから、AC間の関係が悪化し、ぎくしゃくしはじめた。Cは、賃貸借について当初からBからの受託を受けた(1カ月分の賃料(10万円)をAに支払わなかった)。受任者Aは、受任者Cに対して、本件委託契約を解除する旨の通知表示を行い、自己への50万円(1カ月分の賃料)の支払に加えて、500万円(敷金)の支払を請求することができるか。これに対して、受任者Cは、どのような反論をすることができるか。●参考判例●① 最判昭和56・1・19民集35巻1号1頁●判例●1 委任契約の債務不履行解除委任契約(ここでは、法律行為をすることを委託する契約や準委任契約(643条)だけでなく、法律行為ではない事務を委託する準委任契約(656条)も含めた広義の委任契約を念頭に準委任契約)といった、狭義の委任契約に関する規定が準委任契約に準用されること(656条)について、述べ、法律行為ではない事務を委託する一般に適用される債務不履行解除に関する規律が妥当しうる。ただし、委任契約の解除は、本来無償(623条・633条)であり、すなわち、当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。その結果を経過した時に解除されることになり(541条)、本契約の取引上の社会通念に照らして信頼できるときは、この限りでない(541条)。本問では、受任者Cに対し、1カ月分の賃料(50万円)を支払わなければならないのに、本問では、受任者Aによる、受任者Cとの委任契約は解除される(無償)。本件委託契約の解除の理由として、30万円(1カ月分の支払を求めることはできるものの、500万円(敷金)については、本件賃貸借契約の敷金としてAに返還されることを契約の解除の理由として期待が認められていることから、受任者Aが受任者Cに対して、その支払を求めるためには、本件賃貸借契約ないし本件委任契約が終了する必要がある。具体的には、後にこれが終了する基礎づけとなる事由があるかどうかが問われないことから、委任者による本件委任契約の解除が認められる必要がある。委任者による本件委任契約の任意解除が認められるか否かを判断するためには、必ずしも委任者にやむを得ない事由があるか否かを、受任者Aによる本件委任契約を解除するためには、受任者は、委任者を信頼しえないものと受け取った金銭(50万円)を委任者に引き渡していないものの(賃料増額について交渉中であることから)、賃料額の増額交渉に失敗したこと、増額交渉に失敗したこと、増額交渉に失敗したこと、2 委任契約の任意解除委任契約は、受任者が委任者の利益のために事務を処理することを内容とする契約であり、一般的には当事者の信頼関係を基礎とするものである。したがって、受任者の事務処理が委任者の意思と食い違い、委任者が委任事務の処理を望まない場合などで、事務処理を委任者に約束どおりには期待できないと考えられる。すなわち、一般的には委任者に不利な時期ではないとしても、委任者が受任者に事務処理をさせることが相当でないと考えられる。そうすると、委任、準委任契約は、当事者がいつでも任意に解除できることを認めている(631条・651条)。本件委委任契約の任意解除が、認められることとなる場合であっても、民法651条2項は、任意解除、任意解除を解除できる旨の特約は、原則として、有効であると解されている(ただし、たとえば、やむを得ない事情がある場合でも任意に解除できない旨の特約は、無効(90条)となりうる)。やむを得ない事情があるにもかかわらず、任意に解除したことによる損害賠償(認められないことになるだろう)。本件委任契約においては、受任者には、賃借人から支払われた敷金を保管し、本件賃貸借契約および本件委任契約が存続する限り、保管した敷金を自己の事業資金として自由に使用できることとされていることから、本件委任契約は、受任者の利益も目的とする委任契約である(本件委任契約は、事務処理の対価(報酬)と受任者の異なる利益(金利支払)が担保する敷金に対し月1パーセントの金員を委任者に支払うことでも規定しないと考える)が委任者に与えるものであったと解することができる。なお、Aに帰属すべき敷金をCが保管する代わりに、月1パーセントの利息をCがAに支払う関係も、有償性があると解することができる。改正民法下の判例は、当事者間、委任者は受任者の利益も目的とする委任契約を解除することはできないとしていたものの(最判大正4・3・24民録2460頁)、その後、受任者の利益も目的とする委任契約であっても、委任者が著しく不誠実な行動に出た等のやむを得ない事由があれば、委任者は任意解除することができるとし(最判昭和40・12・17民集19巻9号561頁、最判昭和43・9・20判時536号51頁)、さらに、やむを得ない事由がない場合であっても、委任者が任意解除の自由を放棄したものとは解されない事情があるときは任意解除することができる(受任者が被る損害を賠償による損害賠償によって補てんされれば足りる)とするに至った(参考判例①)。受任者の利益も目的とする委任契約における受任者による任意解除は、大きく制限する場合から、任意解除を原則として認める民法651条1項(民法による文言の変更なし)の文言に実質的には合致する立場を変換したわけである。このようにして確立した判例理論を前提とすれば(さらに、民法改正によって、委任契約の任意解除を制限する旨の規定も新たに加わることになる)、改正後の民法においても、委任者は、受任者の利益も目的とする委任契約であっても、原則としていつでも任意解除することができるものと解される(期間は、文言どおり解除権も)。そして、委任者がやむを得ない事由なくして、受任者の不利な時期に解除して、受任者の利益を害する場合には、明示の特約がなくても、受任者はやむを得ない事由なくして任意解除した結果、受任者の不利益も目的とする任意解除の場合には、委任者の受任者に対するやむを得ない事由なくして任意解除に伴う損害賠償責任が発生する場合として定められているのであるが(同条2項2号)、委任者の意思ないし両当事者の特定の解釈を通じて委任者による任意解除を制限する要素ともなりうる)。本件委任契約は、受任者の利益も目的とするものであるから、やむを得ない事Bがある場合または、受任者Cの利益を目的とする委任契約のやむを得ない事情がある場合は、受任者Cにとって不利な時期であった場合、やむを得ない事由がないのにAによる本件委任契約の任意解除が認められることはない。3 任意解除に伴う損害賠償責任委任契約は、各当事者が、原則として、いつでも、任意解除をすることができる(651条1項)ものの、①相手方に不利な時期に委任契約を解除したとき(同条2項1号)や②委任者が受任者の利益をも目的とする委任契約を解除したとき(同条2項2号)のいずれかの場合には、相手方が被る損害を賠償する責任を負うものとされている。委任契約の解除をしたときには(同条2項(委任の解除を目的とする委任契約の解除をしたとき))、相手方が被る損害を賠償する責任を負うものとされている。損害賠償による委任契約の解除は、改正民法による文言の変更なし。損害賠償の範囲は、「やむを得ない事由」による解除か否かを問わず、原則として、信頼利益の賠償に限られると解されている(最判昭和58・9・19判時1100号32頁の趣旨参照)。もっとも、履行利益の賠償を認めないものではない。ここで問題となるのは、「やむを得ない事由」については、任意解除に伴う不利益な時期であったことにつき相手方に帰責性がある場合(ただし、任意解除に伴う不利益な時期が継続されるかどうかについては、議論がある)、本問において、AとCによる本件委任契約の解除が認められるとしても、先にみたように、本件委任契約は、受任者の利益も目的とする委任契約であり、かつ、やむを得ない事情がない限り、委任者Aは、受任者Cで生じた損害(将来得べかりし利益も含む)を賠償しなければならない。受任者が負うべき利益から、受任者が損害を被ったことによって、本件委任契約の任意解除を前提として、委任者Aから50万円(1カ月分の家賃)の支払に加えて、500万円(敷金)の支払を求めるAの請求(および違約損害金)を損害賠償として、相殺をすることによって、対象について争うことになる(651条1項本文)。◆関連問題◆本問の5月1日時点では引渡する準備作業であるものとする。本件委任契約においては、委任事務として、賃借人からの賃料等の徴収とAへの引渡し、甲の修繕等が定められるとともに、委任報酬を月額5万円とし、毎月末までに当月分をCがAに支払うことが定められていた。本件に入ってからは、Aが費用について、Dから敷金に対し、月額100万円の範囲で協力しようと思ったところ、Bが難色を示し、Aに月額70万円しか支払ってもらえないと書面で申し入れたことから、AC間の関係が悪化し、ぎくしゃくしはじめた。受任者Aは、受任者Cに対して、本件委託契約を解除する旨の通告をした。Aは、Bに対し、5月分からの報酬を支払わないこととすることができるか。これに対し、受任者Cは、どのような反論をすることができるか。●参考文献●*道垣内弘人・判例時報25号540頁/潮見佳男「新基本法コンメンタール債権編」(第4版)(新世社:2022)280頁 (岩倉あすか)