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独立当事者参加と上訴

物の所有権をめぐって、XはYに対し自己の所有権確認と引渡しを求める訴えを提起したところ、Yが独立当事者参加を申し立て、同一物に関してXに対してはその所有権確認、Yに対しては自己の所有権確認と引渡しを求めた。その所有権をめぐりZの請求をいずれも認容し、Xの請求を棄却した第1審判決に対し、Xのみが控訴したところ、控訴審ではZではなくYが所有権を有すると判断する場合、どのような判決をすべきか。また、上記第1審判決に対し、Yではなく、Yのみが控訴したときに、控訴審がZではなくXに所有権があると認めるもととなった場合はどのような判決をすべきか。参考判例最判昭48・7・20民集27巻7号863頁最判昭50・3・13民集29巻3号233頁解説1 確定遮断・移審の範囲本問では独立当事者参加(47条)が当事者双方に対してなされており、X→Y、Z→X、Z→Yの三方向の立てられた請求につき判決がなされている。三者のうちいずれかが勝訴すれば他の二者は敗訴することになる。本問では第1審でZが勝訴し、XとYが敗訴している。敗訴者が控訴すれば控訴審でも三面構成が維持され合一確定的な要請が満たされるが、敗訴者のうちの1人が控訴した場合、どのような範囲が控訴審に移り、審判の対象となるか。本問では、まずXのみが控訴し、Y自身は控訴も附帯控訴もしていない場合を考えてみる。現在のように参加人が一方当事者だけに請求を立てる片面的参加が認められていなかった旧法下では、独立当事者参加訴訟の構造を三面訴訟と捉える立場(最大判昭43・9・27民集21巻7号1928頁)・通説であった。そして判例は、参加人が第1審原告のみを相手方として控訴し、控訴審が1審被告を関与させずに判決した事案につき、参加人のした控訴は第1審被告に対しても効力を生じ、訴訟は三者につき全体として確定を遮断され、上告審に移審して審判対象となっているものと解すべきで、訴訟当事者の一郎のみに関する判決をすることは許されないとしていた(最判昭43・4・27民集22巻4号877頁)。これら2判例を引用して、参考判例①は、単純化すれば債権が二重譲渡され、譲受人と主張する原告を被告として、訴訟を訴訟告知もうけた譲受人が独立当事者参加をして、訴訟請求のほか、原告のうち1人の上訴によっても全請求が確定を遮断され移審の効果が生じるとした。したがって本問ではXの上訴により、X→Y請求とZ→Y請求、Z→X請求のほか、Z→Y請求も移審していることになる。上訴しなかった敗訴当事者に関する判決部分も上訴審に移審し、その者も上訴審の当事者になるとして、では、その者は上訴人になるのか被上訴人になるのか、この問題はかつて、上訴審の審判対象と不即不離の問題として議論されてきた。すなわち通常の控訴審によれば、非上訴者が上訴人と見なされればその敗訴部分も上訴審の審判対象となるが、被上訴人と見なされればその者は不服申立てをしておらずその敗訴部分は控訴審の不服申立ての対象とならない。不服申立てをしていない者に原判決は認められないと考えるから、被上訴人として、本問でいえばYとZを共に敗訴する請求棄却対象となるが、被上訴人として扱うとすればYはZ請求は棄却判決になるのは形式的な議論であり、疑問がある。参考判例①は、原審が、控訴人Xとの間で控訴が進んで、被控訴人との関係では訴訟であるとしてYの控訴を擬制したのに対し、非上訴者の地位について明言はしなかった。しかし、その後、参考判例②は非上訴者は被上訴人の地位につくと述べ、その後に参考判例①を引用しつつ、第1審の上訴人として扱う必要はないことを説いた。つまり、非上訴者の地位の問題と上訴審の審判対象の問題とは切り離されたのであり、従来から有力説が主張してきたとおり、非上訴者が上訴人になるのか被上訴人になるのかは、現在の訴訟追行の意義をもたなくなっている。2 上訴審の審判対象と不服の範囲:不利益変更の禁止との関係次に、本問で各請求が控訴審に移審して審判対象となった結果、裁判所が第1審とは逆に、ZではなくYが所有権を有するときの証拠もとに至った場合、X→Y請求を認容(Z→Y請求を棄却)して第1審判決を維持するのか、Y→X請求を認容(Z→X請求を棄却)して第1審判決を変更するのかが問題となる。第1審判決で認容されているZ→Y請求を棄却すればZ→X請求を維持すべきかという問題は、第1審では敗訴したYが請求を提起していないにもかかわらず、Yに有利に変更することになり、不利益変更禁止の原則に反し(Zに不利益に)原則許されない(不利益変更の禁止)。判決変更申立ての原則に(Yに不利益)反するし、判決変更も問題となる)、ここで(不利益変更の禁止)を貫き通すと、Z→Y請求を認容した判決を維持するのでもよい。けれども、参考判例①は、控訴審での判断を前提に無意味な判決は無意味である。合一確定のため必要な限度で、原判決を変更できると述べた。本問のような場合にZ→Y請求を認容からZ→Y請求を棄却に変更した。同一物につき(所有でない限り)XもZも所有権をもち、Yも所有権をもち、Z→Y請求も認容できることになるので、Yに二重の給付を強めるわけではない。したがって、本問でも合一確定に必要な限度、上訴審の審理制約である。3 片面的参加現行民事訴訟法では、当事者の一方のみに請求を立てる片面的参加も認められる(47条1項)。本問でも、参加人ZがYに対してのみの請求を立て、Z→Y請求を認容する判決に対し参加人とYとの間では二面関係にすぎないから、X→Y請求は敗訴者Xの上訴により上訴審に移審するが、Z→Y請求は移審しないとも考えられる。しかし、必要的共同訴訟も同然と考え、結果的に原判決を不利に変更されるZの手続保障にも配慮する必要がある。というのも、ZとしてはXのみが上訴し第1審に勝訴しているので、もはや原判決でZ請求部分は変更されないと信頼し、XとZも1審勝訴ケースのケース(仮にXとYを逆に控訴審で争う必要がない。けれども、本問のようにZが請求棄却判決を得ていた場合には、X(Yに)と相手どっていた場合にも、Zとしては自身の得た認容判決が覆されないよう、に主張立証の必要が生じることになる。したがって、そのことをZに釈明する。などして十分議論させておかなければならない。この点は、参考判例①について、すでに議論したようにZ→X請求が認め、Xのみの控訴でZ→X請求について判断した訴えが入っていると全面的参加の場合でもそうなので、Z→X請求がない片面的参加の場合にはZは相手方になっている認識をもちにくいと考えられるので、より一層の手続保障の必要があるだろう。なお、この問題に関連して、最判平22・3・16を見ておきたい。この判例は、本来は固有的必要的訴訟であるから上訴審の当事者となるべきであった非上訴者を、控訴審の当事者として認めなかったという異例の状況で、その誤りを最高裁が正すために採った措置であった。本件の共同訴訟人Y・Zの2人が第1審から一貫して共通の訴追代理人を選任していれば直ちに上訴立証活動に焦点を当て、非上訴者も実質的に訴訟に関わっていたことを認定した。さらに、実際に最高裁が非上訴者(本問ではYとZ)も含めた三者に対し期日呼出状を送達した。以上のように、非上訴者にも日割り計算し費用を負担したことを評価している。参考文献井上治典『多数当事者訴訟の法理』(弘文堂・1981)368頁/瀬田=多数当事者訴訟と上訴[新版注釈民事訴訟法⑤](有斐閣・1998)294頁/山本克己=『民事訴訟法』1154頁/瀬田=百選210頁(安西明子)