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補助参加の利益

航空機事故で死亡したAの遺族Xは、航空会社Yを相手方に損害賠償請求の訴えを提起した。この訴訟において機体の構造的欠陥が問題となっているとき、機体の製造会社Zはこの訴訟に参加できるか。同じ事故で死亡したDの遺族Eは、この訴訟に参加できるか。参考判例最判平13・1・30民集55巻1号55頁最決平13・2・22判時1745号144頁最判昭51・3・30判時814号112頁解説1 補助参加制度の趣旨補助参加とは、他人間に係属中の訴訟の結果について利害関係を有する第三者(補助参加人)が、当事者の一方(被参加人)を勝訴させることによって自己の利益を守るために訴訟に参加する形態である。補助参加人は、自らの利益を守るために自らの名と費用で訴訟を追行するが、相手方との間に自己の請求を勝ち負けで審判を求める者ではない。例えば債権者が保証人を訴えた訴訟で、被告保証人から主債務者が補助参加するという典型例でいえば、この訴訟の請求の当否は保証債務に関する請求であるが、訴訟物たる保証債務は主債務の存在を前提とする。そこでは、主債務の存否が補助参加の利益を判断する前提問題になっており、訴訟物は保証債務の存否である。主債務者は被告保証人に対する求償権の確保を考えて、訴訟に参加するのである。しかし主債務者は被告保証人を通じて求償を受けるにすぎず、原告債権者から直接求償請求を受けるわけではない。このように被告保証人の勝訴は主債務者にも有利であり、被告保証人から補助参加の申出がなされた場合を念頭におき、被告保証人の勝訴は主債務者に意味がある。2 補助参加の要件―補助参加の利益補助参加するには、他人に係属中の訴訟でなくてはならず(ただし、上告審でもよい)、判決確定後でも参加申出とともに再審の訴えを提起して訴訟を再開させることができる。43条2項・55条1項1号)、何より、参加を申し出る者が補助参加の利益をもたなければならない。ただし、これは当事者(参加を申し出る側でない相手方)から異議が出た場合に問題となるが、参加申出の趣旨および理由を書面または口頭で明らかにし(43条1項)、これに対して当事者の異議があれば、参加理由(補助参加の利益)があるかどうかが決定で下される。補助参加の利益の要件は、条文上「訴訟の結果について利害関係を有すること」(42条)と表現される。この利害関係は、単なる感情的な理由や事実上の利害関係では足りない。当事者の一方と親友であるとか、訴訟を提起されて店の客足が減る少なくなるだろうとか、扶養を受け地位が設定されるという理由も、それだけでは参加の利益としては十分とされる。また第三者利益の効力が及ぶことは、必要条件でも十分条件でもない。前述1のとおり、判決効が及ばなくとも主債務者は保証債務請求訴訟に補助参加が認められる。判決効が参加者に及ぶ場合、すなわち株主代表訴訟(商84条)で被告が敗訴した場合に(同一の株主が提訴した訴訟へは非訟参加が認められる。非訟参加は訴訟に参加できないので)、共同訴訟的補助参加(52条)ができる。これをしないとき補助参加も認められるが、これは民事訴訟法45条2項の解釈によるものであり、共同訴訟的補助参加と呼ばれる。したがって、通常の補助参加は判決効が及ばない場合に認められる。逆に判決効が参加者に及ぶ場合であっても、当該訴訟に参加を認められない(判例、当事者から目録を再所有する資格に関する訴訟。同訴訟42条・115条1項2号)。学説からは、補助参加の利益を認める者もある。3 補助参加の利益に関する判例・学説の展開いかなる場合に補助参加の利益が認められるかは微妙で難しい問題である。判例・学説一名利でない。かつての有力説は、「訴訟の結果」を判決主文と捉え、訴訟物についての判断と参加人の地位との関係を要求してきた。訴訟たる保証人に対する請求への主債務者の参加という典型例では、訴訟物の存否そのものが補助参加の利益を左右するものであり主債務の求償義務に貢献する。逆に主債務者に対する請求で保証人が補助参加するほか、買主が売買目的物の瑕疵等を理由に提供された場合の売主が補助参加する場合でも、売主が製造業者に対して求償関係がある。この方式に当てはまる。これが「判決の結果」を判決理由中の判断にまで広げたのが判例・通説(理由中判断説)である。これでは補助参加の範囲が限定的な狭い。そこで、参加の利益を実質的にみて、訴訟の前提をなす法律関係について利害関係の有無で判定する最近の有力説がある(多数当事者訴訟の研究[改訂]弘文堂・1981)65頁、81頁)。判例は、補助参加が許されるのは申出人が訴訟の結果につき法律上の利害関係を有する場合に限られ、法律上の利害関係を有する場合とは当該訴訟の判決が参加申出人の私法上または公法上の法的地位に影響を及ぼすおそれがある場合をいう、と表現している。ただし、それが訴訟に関する利害関係かいかに相互に関連がないのかについては必ずしも明確でなく、「訴訟につい利害関係」を法律上の利害関係と解し、かつ参加申出人の私法上または公法上の地位に影響を及ぼすおそれがある場合に限られないとして申出を却下した原決定を破棄し差し戻した(前述最判平13・1・30)。その程度を検討した上でその許否を決すべきものと解されており、より具体的実質的に参加利益を検討した裁判例が注目される(東京高決平2・1・16判タ754号220頁)。参考判例③も、訴訟告知における会社の取締役への補助参加につき、訴訟の前提となる取締役会の決議の無効が会社の各期の計算等、ひいては会社の信用に影響するとして補助参加の利益を肯定している。この場合の規約をされるとその後に設定された会社法849条1項により、株主代表訴訟における会社の取締役の補助参加も同様に認められた。参考判例②も、一見無関係に見えそうでありながら、それよりも広く求償の密接関連も視野に入れて柔軟に参加利益を認めた判例と評されている。このような流れを踏まえ、本問では補助参加の利益が問題となる典型例を設例とした。まず第1類型は、被参加者が敗訴すれば補助参加申出人が求償、損害賠償、その他一定の法源を提起される関係にある場合である。第2類型は、当事者の一方と同様の地位、境遇にある者が補助参加を申し出る場合である。本問のY・Zには、事故原因が機体の構造的欠陥にあるとの理由でYが敗訴すると、後にYがB・Cに求償できるという意味で、第1類型に当たる(参考判例①〜③もここに含まれる)。本問のEは第2類型である。第1類型は伝統的に補助参加の利益が認められてきた類型とされる。第2類型はかっては参加利益を否定されてきたが、近時の有力説によれば、当事者の一方の敗訴により訴えられるおそれがあり、第2の訴訟で前訴判決の理由中の判断が事実上の拘束を及ぼし、第三者に不利益な認定判断がなされる蓋然性があれば、補助参加が認められる。下級審判例にも肯定例がある。ただし、このように類型に分けたは、それだけが補助参加の利益が認められるわけでもなく、これらに当てはまらなくとも参加利益を肯定した裁判例もある(所在不明の夫を被告とする金銭請求訴訟に妻の参加を許した名古屋高決昭43・9・30高民集21巻4号460頁)。このように、参加要件についての基本的考え方として、統一的基準を立ててそこから演繹的に個別ケースでの参加の許否を導き出すという手法も、単なる類型化も、具体的な事件における多様な第三者の利害状況に対応できない。現在の有力説は、訴えの利益と同様に、補助参加の利益を判断するのに、紛争の性格や事件の流れなどの個別事件の具体的状況を考慮する(井上・前掲69頁、重点講義民訴434頁)。4 補助参加の利益の判断―本問についてそこで、本問を用いて具体的に検討してみよう。前述のとおり、本問のB・Cは第1類型にあたり、一般的には補助参加の利益が肯定されよう。けれども、この訴訟でのパイロットの操縦ミスが問われているときには、機体製造者などには参加の利益はない(井上治典『実践民事訴訟法』(有斐閣・2002)198頁。山本・前掲257頁もそのような事実の認定を求めて参加してくるものにはより慎重になるべきとする)。本問のEは、このように参加を一般的に認めると対抗が効かなくなるなどの懸念から参加利益が否定されてきたと思われるが、主要な争点を共通にする場合には参加を認める説がある(新堂813頁、山本・後掲259頁)。このような参加要件の弾力化を前提として、判決の結果によっていかなる不利益を受けるかという観点よりも、具体的事情において第三者に自己の立場から主張・立証の保障をすべきかどうかという過程志向の必要を説く立場も現れた(井上治典『民事手続の実践と理論』(信山社・2003)167頁。十分な主張・立証が期待できるとして訴訟告知を受けていた者の補助参加を認めた大阪高決平12・5・11金法162巻62号21頁も参照)。この立場はそもそも後段の可能性を問題とせず、その訴訟における補助参加人の攻撃防御の利益を直視する。したがって本問で、訴訟物・訴訟の帰趨の展開や訴訟手続の中での経緯から、Bが製造した機体の構造上の欠陥かX・Yのいずれかにより主張されているか、主張されることが確実に送られる場合には、Bの参加が認められる。YがXに敗訴すれば将来Bはどうなるかという判決結果をもたらす法律関係よりも、X・Y間の訴訟での主張した機体の構造が事故原因となっているかどうかが問題となっているのに、肝心のBにその点について自ら裁判を尽くす機会を与えないでよいかという、手続保障そのものが問題とされる(井上・前掲『民事手続の実践と理論』191頁)。Eに関しても、Xと共通して機体の構造につき主張・立証を展開していこうとしているならば(主観的追加的併合を認めない実務[→問題9]を考慮に加え)、補助参加を認めることになろう。機体の構造が問題となっている訴訟状況では、同一事故の被害者でなくとも、同一構造の機体で同様の事故にあった被害者にも、主張・立証の機会を与えるために補助参加が認められる可能性がある。参考文献山本和彦『補助参加の利益」長谷部由起子=山本弘=笠井正俊編著『基礎演習民事訴訟法〔第3版〕』(弘文堂・2018)263頁(安西明子)