東京都、神奈川県、埼玉県、大阪府、滋賀県で離婚・男女問題にお悩みなら
受付/月〜土10:00〜19:00 定休日/日曜・祝日
お問い合わせ
ラインお問い合わせ

債権者代位権

AはB銀行にBの運転する自動車につけられた動産を譲渡した。Bが持ち逃げ、B銀行にこれを探すよう依頼したところ、A・B間で協議が話し合ったが、最終的にはBがAに対して800万円の代償金を支払うことで、和解契約が成立した。他方、個人事業主として自動車の製造をしているBは、常連の小売業者であるCに対し1000万円の売買代金債権を有していた。ところが、Bの製造した自動車について、BがCにこれを探すようと申し出ていたが、Cとの合意の内容が曖昧であったことで、Cが、Bから独立した常連にB銀行がなることもあり、Bは、Bからの独立した常連との間で、上記のような部品の交換に関する契約がインターネット等で広まり、Bの得意先が急速に悪化した。AがBに対して上記和解金の支払を求めたところ、Bは、「手元不如意なので十分な準備を行いたい。自分はすぐに車の代金を支払うが、その準備ができるまで自動車を自分で使うつもりだ」と答えた。(1) AはBから独立した常連との合意を理由として、どのような手段をとることができるか。AはBにその請求に際して、どのような事実を証明する必要があるか。(2) AがCに対する権利を行使した後、AはBから独立した常連との間で和解金の支払に代えてC銀行に対する債権を譲渡した。Cに確定日付のある通知をした上で、Cは、Aの請求した和解において訴訟物たる債権はすでに消滅しているものであり、Aの支払う義務はないと主張した。権利行使はどのような影響を及ぼすか。(3) AがCに勝訴し、それに従ってCが弁済した後、そのBに破産手続開始決定があり、Bの破産管財人であるDは、DがAに対して破産した。Aが支払いを拒んだため、Dは、どのような主張が可能か。参考判例と解説参考判例① 最判昭和40・10・12民集19巻7号1777頁② 大判昭和10・3・12民集14巻482頁③ 大判昭和14・5・16民集18巻5号557頁解説1. 債権者代位権の意義債権者代位の効果として、債権者の債務を履行しない場合に、債務者は債権者に対して、それを強制する効力が認められている。ただ、債権者の財産権(債権)の行使について債権者が(本来は原則としてできないとされる(債務者の財産管理権の尊重、破産手続との関係ではじめて認められる)。他方で、債務者の無資力の状態にありながら、自己の債権の行使を放置し、結果として債権者の債権の保全が図られないことは相当とはいえない。そこで、民法は、債権者代位権の制度を用意し、その債務者に代わって自ら債権を行使することを認めている(本来の債権者代位権)。さらに、このような金銭債権の保全を図る目的、債権者が有する債権の実現を図るため、当該債権と密接な関連を有する債務者の債権を代位行使することも判例上認められてきた。たとえば、ある不動産に関する権利の登記請求権を代位行使する場合や、ある不動産に係る所有権を有する者が妨害排除請求権を代位行使する場合などである(転用型の債権者代位権)。このような転用型は改正民法によって一部明文化され、上記登記請求権について、423条の7、たとえば、ある不動産に関する権利の登記請求権について転用型の一類型として解釈に委ねられている。以下では、本問に即して、本問後段の代位権の行使、他、BのCに対する債権の代位権に関するいくつかの法律問題を検討する。2. 債権者代位制度の機能・保全執行との関係本来的債権者代位権の機能として、債務者が責任財産の保全を図らない場合において、債権者は、債務者が第三債務者に対し、債権を有しているときに、債権の保全を図るについてどのような方法があるかを検討する必要がある。これについては、大きく2つの方法が考えられる。1つは、民事保全法に基づき、債務者につき、債権の仮差押の命令の申立てをし、第三債務者に対し、債務につき仮差押え執行をすることがある。そして、改めて、債務者に対して給付訴訟を提起して勝訴判決を得た後、債務名義に基づき、その確定判決に基づき、その債務者の第三債務者に対する債権を差し押える方法である(その際、当該債務者が転々譲渡あるいは転々命令された物権に伴って自己の債権を保全することになる)。このように債権者代位プロセスの手続きを要すると考えられる。小問(2)の前提についても、Aは、BのCに対する売買代金債権を仮差押えしておいて、Bに対する800万円の給付訴訟を提起して勝訴判決を得た後にあれば、通常債権者は単に債務名義に基づいて仮差押えを本差押えに移して、Cに対する代位請求が提起される方法が考えられる。もう1つの方法が債権者代位権を活用するものである。すなわち、債権者は、債務者に代わり、債務者の第三債務者に対する債権(被代位債権)を直接取り立てることが認められる(4条参照)。第三債務者の代位請求を実現するため、債務者に代わる支払請求権を実効あらしめるため、債務者の第三債務者に対する訴訟の判決を求めることができる。そして、その判決に基づいて仮差押えを本執行に代えて返還請求権を保全し、債務者の第三債務者に対する債権(被代位債権)の取立てによって、被保全債権の回収を図る。債権者は、自己の債務者に対する800万円の債権(被保全債権)を保全するため、訴訟の判決に基づいて800万円の債務名義を取得し、Bに対する800万円の金銭債権と相殺することによって債権回収を図ることができる。この2つの方法には、いくつかの差異があり、債権者代位権には利点も認められる部分がある。第1に、債権者代位による場合は債務名義が不要である。その結果、債権者に対して訴訟を提起しなくとも、直接、債権を行使することのできる可能性がある。強制執行の方法による場合は、前述のように、債権者に対する勝訴判決→債務名義の取得→差押え→第三債務者に対する取立訴訟等という手続が必要となるのに対し、債権者代位権では、①のプロセスが省略でき、特に少額の被保全債権の場合には(裁判外・簡易に)早期に実現が可能であることは大きな利点となる。第2に、債権者代位によって優先回収が可能となる。前述のように、代位回収による債権について債務者の債権について相殺による回収が可能となる。その結果、仮に他の債権者が債務者の第三債務者に対する債権に係る差押債権を差し押さえたとしても、差押えと相殺に関する優先関係(511条参照)を前提とすれば、代位権者が優先権を得る結果となる。他方、民事執行による場合は、他の債権者が差押えに加わって参加し、被差押債権に係る配当金が各債権額に応じて比例配分されることになる(配当は申告時点の債権額に応じて計算され、それが確定するまで配当金に相当する金銭が他の債権者の加入のおそれがある(民執159条5項、第三債務者の無資力リスクを債権者が負担しなければならない)。両者の手続には以上のような差異があり、債権者代位権には大きなメリットがあることは、かねてから指摘がある。ドイツ法的な保全執行制度とフランス法的な債権者代位制度を相続した明治初期の立法の選択」であると、この選択は、ある意味で日本的な事情を考慮した結果である(「三ヶ月債権」を指している)。そのため、今日の改正の過程では、本来の債権者代位制度の存在理由を改めて議論の対象となり、少なくとも上記の両者を並存させるため、第三債務者から取り立てた代位債権者による相殺を制限する提案がされたが、結局採用には至らなかった。その結果、代位債権を代位権者が強制執行した場合、その代位権者の任意の協力が得られる場合など強制執行によらない債権回収が有用とされる場面がなお存在すること、優先回収がなされるなど執行の機会を付与する従来の規定は維持されることとなった。差押えは無意味である場合が多いことなどによって、債権者代行権の行使によって被代位権利の処分が禁止される旨の判例法理は否定されたため(4参照)、債権者の処分や第三債務者の債務者への弁済の可能性もあるような事態は、実際には、仮差押えが有効に行われないかぎり、債務者への弁済がなされることになる。以上から、Bにどのような手段をとりうるか、上記のような債権者代位ルートと執行保全ルートの両方を並存させることになる。具体的には、債権者代位権を行使するAの場合、具体的には、Bからの財産分与を保全する必要がある。Aの債権回収がBの財産状態が悪化しているため、Aの債権回収が困難な場合には、債権者代位権を行使するに止まらず、Bが第三債務者であるCのBへの弁済のリスクを負うことを前提とすれば、優先回収を図るため、債権者代位権の行使を抑えてBに自己の債権を直接行使することも考えられるであろう。他方、小問(3)では、Aは複数の財産分与をめぐる対抗の優劣を争うことになる。債権者間では、AがCから800万円の支払を受けたものが、Bに対する債務を優先的に始動されたものと同じような効果を有することになろう(ただし、債権者はAを債権者代位権の行使を前提にすることになろう(ただし、債権者はAを債権者代Bに自己の債権を直接行使することも考えられるであろう)。3. 債権者代位権の要件債権者代位権の行使の要件について、「自己の債権を保全するため必要があるとき」にその行使が可能とされる(423条1項)、単に主観的な保全目的だけでは足らず、客観的な必要性があることが必要である。その客観的な必要性については、立法の過程では、債権者無資力の要件が明記されたが、この点は採用されなかった。2017年改正民法ではその例として「債務者がその資力で債務を十分に弁済できない場合」に代位権が認められることになった(参考判例①)。債務者が自ら資産を減らすことになるのであれば、これを423条の債務者の無資力と評価したところで、判例法理を明文化することの趣旨であったが、BとCの無資力は同一に判断してよいかという問題である。債務者と債権者が無関係なのでその点を重視するとすれば、無資力の認定を緩和し、債務者の財産状態に変化がなければこれを無資力とみなすことになろう。むしろ「保全の必要」という一般的な解釈にとどめるほうがよいとされている。ただ、上記判例の趣旨は事業では改正後も維持されると解されよう。また、被代位権利(債権者代位権の対象となる債務者に属する権利。423条1項本文参照)の面では、「一身専属権のほか」「差押えを禁じられた権利」(代位の対象とされない(民法423条1項本文))でなければ、年金受給権(24年3条など)等は債務者の責任財産を構成しないので、代位権行使の対象外となる。債権者が代位権を行使した結果、本来差押えによる回収ができないような財産について、代位・相殺によって債権の回収を図ることを認めては相当ではないからである。他方で、被保全債権(債権者代位権の根拠となる債権)の要件として、第1に、期限未到来の場合は代位権を行使できないが、保存行為の場合にはその例外を認めている(非訟事件85条以下)を廃止し、保存行為の場合に代位権を行使できると規定している(423条2項ただし書)。これは、裁判上の代位は利用が難しく、保存行為以外の46条2項ただし書、時効の利益の放棄・承認といった債務者の行為に代位して、その効力を否定することができる。以上から、小問(1)では、以上のような要件を充足する必要がある。特に、AがBに対してBの無資力の立証が問題になると考えられる。Aとしては、Bの経済状態が悪化して債務の履行が困難になっている状況について主張・立証していくことになろう。4. 債権者代位権の効果代位権行使の方法について、債権者が自身の財産に直接、債務者の動産を引渡しである場合には、自己に対して支払を求めることができる(423条の3前段)。また、そのような支払・引渡しによって被代位権利が消滅する(民事訴訟法)、訴訟の裁判例(参考判例①など)の明文化であり、そのように直接給付が認められないと、債務者が給付を受けない限りは代位権を行使する意味が全くないことになり、債権者代位制度の趣旨を没却することを重視する。立法過程では、債務者に対する給付のみを容認し、債権者による直接の給付請求を認めないとの提案も検討された。これは債権者代位権を否定する最もドラスティックな提案であったが、これは債権者間の調整と同程度、債務者が自ら受けた場合に債務名義の取得を済ませていないと、他者が優先して差押えによって回収を図られてしまう事態を回避するための工夫であろう。そのうえ、このような措置が講じられれば、代位権の請求は債権者代位権を行使した者が他に優先してその利益を享受することとなり、債権者平等の原則に反するとの問題意識があったからである。そして、訴えによる債権者代位権を行使する場合、代位権者は遅くとも債務者に対して訴訟告知をしなければならない(423条6項)。債務者の訴訟における利益を保護しつつ、債務者に対して当然に判決効が及ぶとされている(民訴115条1項2号)。しかし、債務者に対して訴訟告知が知らされていないにもかかわらず、代位権債務者の特別代理人が選任されることに対しては従来から民事訴訟法理論において賛否の強い議論がある。民事訴訟法の趣旨をどのように解釈するかにかかっている。また、債権者代位権の行使があっても、債務者の被代位権利の処分を禁ずることは認められない(423条の5前段)。すなわち、代位権が行使された後、それと債務者に通知または了知された場合でも、債務者の処分権までを禁ずることは認められない。債務者の責任財産は債権者による処分権の行使の対象となることは、代位権の行使によっては制限されない。もっとも債権者代位権の行使の通知の後には、債務者の被代位権利の処分を認める、債権者の責任財産は債権者による処分権を認めており、その後の処分も自由である。債権者による債務者の被代位権利をめぐる紛争を防止するとともに、債権者の優先回収の余地も残る。これに反する債権者代位制度の効果として、債権者代位権の行使が債務者の被代位権利の処分を禁ずることは判例上、別途、所定の要件の下に許可があれば債権者代位権を行使できることになる。て、第三債務者も被代位権利につき債務者に対して履行することを妨げられない(同条後段)。第三債務者は有効な代位権行使があったか否かを独自に判断できる保障はなく、判断を誤った場合の二重払のリスクを第三債務者に負担させることは不当であり、履行禁止という効果を否定する債務者は訴訟告知等の申立てをすべきこととなる。以上から、小問(2)では、BのDに対する債権譲渡は改正法の下では有効であり、Cに対するBの責任財産ではなくなるので、Cの抗弁は正当なものとされ、Aの請求は棄却されることになる。関連問題と参考文献関連問題(1) AはBに対して1000万円の売掛金債権を有していたが、Aは当該債権の取立てを怠っており、このままではX年6月末日に消滅時効期間が経過してしまう。この場合、Aに対してX年10月1日を履行期とする1000万円の貸金債権を有するCは、債権者代位権を行使して、上記売掛金債権を取り立てることはできるか。(2) AはBに対して1000万円の売掛金債権を有していたところ、Aに対する1000万円の貸金債権を有するCと主張するDが債権者代位権を行使して、上記売掛金債権の支払請求訴訟を提起した。これに対し、A・BはCに対する1000万円の貸金債権を有するのはCではなくDであり、上記売掛金債権は自己の債権の回収に充てたいと考えている。この場合、Dはどのような対応をとるべきか。参考文献道見健介/山本和彦「債権者代位権」NBL1047号(2015)42頁 (山本和彦)