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将来給付の訴え

Y病院は、Xの自宅の隣地で開業した2年前からX宅との境界にエアコンの室外機10台を設置し、年がら年中稼働させてきた。Xは、本件室外機の稼働により精神的・身体的苦痛を受けていると主張して、Yに対し、①室外機の撤去、②室外機の稼働時間から口頭弁論終結時までの慰謝料、③身体的苦痛を理由とする損害の賠償として、口頭弁論終結時から室外機が撤去されるまでに生ずる精神的・身体的苦痛を理由とする損害賠償の支払を求めて提訴した。Yは、騒音防止規則より規制より下回る基準を越えることはなく、Xの対応に問題があるとして、室外機を一部撤去するも代替措置を講ずるには莫大な費用がかかること、室外機の設置から防音対策を行っており、室外機を稼働しなければ病院の機能が果たせないことを主張し、X主張の不法行為の差止め請求を棄却するよう求め、慰謝料についても争うと主張している。Xは、①請求につき、口頭弁論終結時に、室外機をさらに2台撤去したこと、②請求につき、室外機をさらに2台撤去したこと、③請求については、室外機を稼働する日額は一定額を超えているとして、①②請求については、一部認容一部棄却をすることとした。③請求について、裁判所はどのような判決を出すべきか。仮に③請求を認容する判決が確定した場合、Xはどのような方法で判決の実現を図ることになるか。その場合、Yはどのような不利益を受けるか。●参考判例●① 最判昭和56・12・16民集35巻10号1369頁② 最判平成19・5・29判時1976号7頁③ 最判平成24・12・21判時2175号20頁●解説●1 将来給付の訴えの利益将来給付訴訟は、口頭弁論終結時に給付請求権が現在、将来の訴えを提起する場合、口頭弁論終結時になおも給付請求権が存在しない請求権の存否を判断して、その後の事情の変動によって裁判所の判断が不当に判断する可能性がある。その後の事情の変動によって裁判所の判断が不当に判断する可能性がある、紛争解決の基準としてその後もなお有効性が失われ、債務者が履行が遅滞のためその判決(請求異議訴訟、35条)を必要とする負担を生ぜしめるからである。しかし、当該請求権がすでに発生する蓋然性が高い場合にも債務者にはなおすべきことがないことになり、当事者間の公平の観点からは適当でない。そこで、訴えの利益の要件を緩和して、あらかじめその請求をする必要がある場合(135条)、すなわち将来給付の訴えの利益が認められる場合に限り、このような訴えを適法としている。一般的には、将来履行期が到来しても債務者の任意の履行を期待できない場合(例えば、現在すでに債務者が債務の存在を争っている場合)、および、給付内容の性質上、履行期が到来すれば、同時に履行しなければ、債務の本旨に反する場合(例えば、将来の旅行のように、特定日時の履行を内容とする債務)、または、債務者に著しい不利益を与える場合(例えば、扶養料の支払を内容とする債務)には、将来給行の訴えの利益が認められる。本問の①②請求も将来給付である。①請求は口頭弁論終結後に発生するであろう騒音を理由とする損害賠償請求であり、将来給付である。しかも、Yの現在の不法行為が将来も継続すると予測を前提とする必要がある。このような将来の不法行為に基づく損害賠償請求における将来給付の訴えの要件につき、参考判例①(大阪国際空港事件)は、①将来の請求権の基礎となるべき事実関係・法律関係がすでに存在し、その継続が予測されること、②請求権の成否や内容に関し、債務者に有利な影響を与える事情の変動があらかじめ明確に予測し得る場合に限ること、③このような変動を請求異議訴訟において証明し、かつ債務者に証明の負担を課しても格別不当とはいえないこと、を挙げて、制限的な解釈を示した。これらの場合に…将来請求権の債権に基づき訴えの利益を立証することを要しない。いわゆる期限付請求権や条件付請求権も同様である。もっとも、将来給付の請求が認められるという整理である。もっとも、この判示に対しては、①厳格にいう厳格性に過ぎて慰撫的判断に有効な判例を得ており、より厳格にいう厳格性を基礎づけるべきである(具体的には、②の要件が手掛かりとなろう)とする批判も有力に主張されている。②の要件は、この要件の適用範囲について検討しよう。2 継続的不法行為に基づく将来の損害賠償請求(1) 土地の不法占有に基づく将来の損害賠償請求Xの所有する土地をYが権原なく占有している場合に、Yが所有権に基づく土地明渡請求、不法占有開始時から口頭弁論終結時までの賃料相当損害金の支払請求、および、口頭弁論終結後以降、明渡しまでの賃料相当損害金の支払請求を併合して提訴することが、実務上よく見られる。ここで最後の請求が将来給付の請求であり、これについては、継続的不法行為の典型として、参考判例①の示す3要件をあてはめると、①②は、一般的に、違法性が認められる。参考判例①の示す3要件をあてはめると、③現在は不法占有が認められ、債務者が訴訟で争っていることから不法占有の継続が予測される、④変動事由である将来の賃料相当額も予測可能である(例えば、賃貸借による占有の終了、新たな占有権原の取得など)、⑤債務者に訴訟の提起の負担を課しても格別不当でないと解されるからである。なお、②の要件は別に訴訟で説明しておく。将来の請求権における賃料相当損害金の支払を認めるべきであるが、Yが不法占有を続けている場合には、Xはこの確定判決に基づいて損害が確定したので、不法占有を続けている場合には、この確定判決で債務名義が確定したので、申立てをすることができる(民執22条1号)。なお、将来の請求権が不確実である(大阪国際空港事件)。仮にYが口頭弁論終結後に占有を止めたにもかかわらず請求の立て方がなされた場合には、Yは請求異議の訴え(同法35条)により、将来給付の請求権が消滅した、請求権が発生していないとして、強制執行を排除することができ、その請求権については、Xの「あらかじめ債権名義を得ていつでも強制執行できるようにする」という利益が保護される一方で、不当(不当に執行)執行がなされるおそれが…その時期のためにはYが経済負担を負うことになる。そのため、上記の場合において、原告の負担の軽減が要求されるのである。もっともその執行(6条)を申し立てることができると解する。例えば、Yは、申立期間を過ぎて確定判決を取得し、将来給付請求権の全部または一部の消滅を申し立てることになり、その後の任意の時期に消滅の請求がなされた場合に、その時点で消滅の請求を認めることができる。(2) 受働など継続的不法行為に基づく将来給付請求将来給付の請求権は継続的不法行為の一種であるが、判例は、請求権の公害など訴訟では、その具体的な判断でこれまでの請求権を認めることを示した。データ・アクセスは、将来の請求の発生する蓋然性が高く、また、請求権の成否や内容に影響を与える事情の変動をあらかじめ明確に予測することが困難な場合がある。具体的には、航空機の騒音の程度、飛行回数、時間帯、航空機の種類、航行方法などが変動する可能性がある。このような事情から、将来給付の請求を認めることは、債務者に過大な負担を課すことになる。したがって、将来給付の請求を認めるためには、これらの変動要因を考慮して、請求権の成否や内容を具体的に特定する必要がある。その方法としては、以下の3つが考えられる。① 請求権の発生要件を具体的に特定する方法例えば、「1日当たりの航空機の飛行回数が〇回を超え、かつ、騒音レベルが〇デシベルを超える場合に、1日当たり〇円の損害賠償を命じる」というように、請求権の発生要件を具体的に特定する方法である。② 損害賠償額の算定方法を具体的に特定する方法例えば、「1日当たりの航空機の飛行回数に〇円を乗じ、かつ、騒音レベルに〇円を乗じた額を、1日当たりの損害賠償額とする」というように、損害賠償額の算定方法を具体的に特定する方法である。③ 損害賠償額の上限を定める方法例えば、「1日当たりの損害賠償額は、〇円を上限とする」というように、損害賠償額の上限を定める方法である。以上の3つの方法を組み合わせることも考えられる。いずれの方法をとるにしても、請求権の成否や内容を具体的に特定することで、債務者の予測可能性を確保し、紛争の蒸し返しを防ぐことが重要である。本問においても、Yの室外機の稼働状況、騒音レベル、Xの被害の程度などを具体的に特定して、請求権の成否や内容を判断する必要がある。(3) 本問について本問では、③請求の将来給付訴訟が認められるか。これについては、本問も継続的不法行為であるが、規制値を下回るとしても、Xにこれを受忍させることはできない。したがって、Yに有利となる事情を考慮して、将来の請求権を認めることになる。さらに、判例も同様の事案で認めており、これを参考にすべきである。しかし、将来給付の請求をすべきでないという、口頭弁論終結後の少なくとも数か月は請求権を認めておらず、Yにとって不当な執行を認める蓋然性が高く、Xの室外機撤去の請求(本問の①請求)や参考判例①における飛行差止請求などの将来の請求権を発生するおそれの請求が認められないことも多いから、公平の観点から、将来給付請求の訴えの利益を認める余地もあろう(①で述べた差止請求と将来給付の選択における公平性の考慮も考えうるところ)。なお、判例は、上述のとおり、土地の不法占有の事案では将来給付請求権の成否や内容の変動の可能性の高さを指摘して将来給付の訴えを認めているが、騒音には主観的評価が問題となる上級審・下級審での判断もあっており、最高裁判例は、この類型での将来給付請求については限定的に認めるべきとの判断を示している(最判昭61・1・17民集40巻6号981頁)。したがって、Yの請求権の変動の可能性はなお慎重な判断を要すると考えられる。このような考え方に基づき、Yの請求権の訴えの利益をより総合的に評価し、将来給付の請求の訴えの利益を認めるべきと考えられる。●参考文献●安西明子・法制判例マークス37号(2008)112頁/秋山幹男・争点108頁/山田文・百選44頁(山田文)