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寄託契約

A水産とB水産は、かつて水産業を営んでいたがすでに廃業しているC水産にそろそろ昆布の保管を依頼した。しかし、Cは、現在、倉庫が手狭であり、冷蔵設備が十分ではないことを理由にAとBの依頼をいったんは拒絶した。そこで、AおよびBは、「他の倉庫業者が見つかるまでの期間でいい」といって強引にCの倉庫にやむなく保管を引き受けた。その結果、Aは北海道産のとろろ昆布を400キロ、Bは四国産のとろろ昆布を600キロをCに寄託し、これら計1トンのとろろ昆布はCの倉庫で区別することなく保管され、Cはそれぞれから寄託を受けたものと同数量のとろろ昆布を返還することをA・Bとの間で合意された(以下、「本件契約」という)。保管料は、Bに8万円が定められたが、Aについては、かつてお世話になったことのお礼から、無償と定められた。なお、Bが寄託したとろろ昆布600キロはD商事から預かったものであり、Cへの寄託につき、BはDから特に承諾を得ておらず、Cへの寄託を必要とする事情は特になかった。2カ月経過した時点で、Cが倉庫を確認したところ、1トンのとろろ昆布の品質に特段の変化はみられなかった。保管が始まってからはや3カ月が経過したが、いまもA・Bから引取りの連絡はなかった。そこで、Cは倉庫を整理しに行っところ、保管していたとろろ昆布1トンのうち、冷蔵庫の不備な場所に起因して400キロの昆布が腐敗してしまっていた。(1) 以上の事実において、AおよびBは、Cに対して腐敗を免れたとろろ昆布につき、それぞれ千円につき返還を請求することができるか。また、Aは腐敗したとろろ昆布の価格相当額について損害賠償請求ができるか。これに対しては、どのような反論をすることができるか。(2) CはAに遠く及ばないことから、残存するとろろ昆布600キロのうち400キロをAに返還してしまった。この場合、BはAに対し、いかなる請求をすることができるか。また、DはBおよびCに対し、いかなる請求をすることができるか、Cはいかなる反論をなしうるか。●参考判例●① 適用判例昭和29・8・2民集8巻5号1226頁② 判例昭和52・9・1民集27巻10号887頁③ 東京地判平成13・1・25金判1129号55頁④ 札幌地判平成24・6・7判時1392号200頁●判例●1 混合寄託契約に基づく寄託物返還請求権小問(1)において、AおよびBは、それぞれCに対して混合寄託契約に基づく寄託物の返還請求権を行使することが考えうる。AおよびBの請求権が混合寄託という特殊な寄託に基づくものであるが、まず、一般的な寄託の成立について検討しておく。寄託とは、当事者の一方が相手方のために保管することを約してある物を受けとることによって成立し、効力を生ずる諾成契約である(657条)。寄託者は、寄託物を受け取るまでは、契約の解除をすることができ、受寄者は、その報酬の解除によって損害を受けたときは、その賠償を請求することができる(657条の2第1項)。この場合に、受寄者の保護すべき利益も含まれるか、寄託の報酬の性質に関連して議論がありうる(以上につき、本問参照)。本問の場合、AおよびBの寄託が変化した物を保管・品質が同一である場合に混合して寄託し、同種の物を受け取る契約を(混合寄託)という。混合して寄託するためには、各寄託者が承諾が必要であるが(665条の2第1項)、各寄託者が口頭で混合寄託した場合、寄託とは異なり、各寄託物の返還は受寄者に移転しないが、各寄託者の個別物の返還を請求することにより、各寄託者はそれぞれの寄託物について個別の所有権を失い、混合寄託物全体について共有持分権を取得するにとどまる。共有持分権の取得そのものは、混同規定(245条・246条)から導くことができるが、各寄託者は、寄託物に生じた損害の危険もその共有持分の割合に応じて負担することになる(665条の3)。本件寄託の目的物であるとろろ昆布は腐敗により一部滅失している。混合寄託において、寄託物の一部滅失のリスクは、各寄託者が共有持分に応じて負担するものとされており、AおよびBは、Cに対し、それぞれの寄託物の割合に応じた数量のとろろ昆布の返還を請求することができるにとどまる(665条の2第3項)。AおよびBは寄託物について、4:6の割合で返還請求権を有している。そのため、AはBに滅失したとろろ昆布400キロ(全体の4割)のロスを按分して負担する。たとえば、BがCに対して480キロの返還請求をすることで、Cは全体の5分の4しか返還しない。結果として、Aの返還請求は360キロの範囲で認められることになる。そして、Aの返還請求は240キロの範囲で認められる。2 受託者による損害賠償寄託契約の一部不履行により、返還請求権が縮減的に減縮するとしても、寄託者が第三者に対して損害賠償請求できるか否かは別問題である(665条の2第3項後段)。AおよびBはCに対し混合寄託契約上の保管義務違反を理由とした損害賠償請求(415条1項本文)をすることが考えうる。なお、寄託物の返還義務が履行されなかった場合には、その不履行が契約者の帰責事由によることが必要(同項ただし書)として、受寄者の帰責事由が免責事由であったことが争点となる。条文上、無償寄託の受寄者は「自己の財産に対するのと同一の注意」(以下「自己固有の注意」)をもって、寄託物を保管する義務を負うと明定されている(659条)。有償寄託の受寄者は、同規定である400条に照らし、「契約その他の発生の原因及び取引上の社会通念に照らして定まる」善良な管理者の注意義務を負う。同法400条は特定物の引渡しに関する規定であるが、混合寄託の受寄者は保管物全体について共同の利益を有するものである。したがって、有償寄託の受寄者は「善管注意義務」を負う」と解釈することができる。が、「保管料」は、受寄者の注意義務の具体的な内容を確定するための基準たりえるものである。保管料と切り離された注意義務が存在すれば、それは受寄者に過大な負担を負わせかねない。一般に理解されるように、「自己固有の注意」では、個々の債務者の個人的な能力に応じた主観的な注意で足りると解する。このため、「善管注意義務」の属する社会的一般的な地位に応じた客観的な注意義務よりは軽減される。民法は、受寄者の注意義務の程度について注意義務を軽減すると考えてはいないからだ(A・B説)。現在は、同法659条は無償の受寄者の責任を軽減する趣旨の規定である。この注意義務の機能が寄託契約を前提とするとすれば、「善管注意義務」を超えるとこれに対抗できず、これに反すると解するのが通説である(A・B説)。これに対し、「保管」適合的合理的な平均人ならば「他人の財産」に対して払うであろう注意を意味し、「自己固有の注意」は合理的な平均人ならば「自己の財産」に対して払うであろう注意を意味するとする見解(判例もほぼ同旨)は、同解釈によれば、法が予定する合理的な平均人は「他人の財産」に対して注意義務あるべきなので、それぞれの利益に応じて明確な特徴がある。これに対抗できず、それに対し、同法400条を踏まえて、善管すべきであるが、以下の「善管注意」と「自己固有の注意」の区別の問題に帰着していく。受寄者の「善管注意義務」が抽象的に判断されるとしても、それは契約から切り離された抽象的な義務ではなく、当事者の合意のもとで、契約の締結から契約の終了、取引上の社会通念から判断される。そこで、一般的な短期・長期の契約と「善管注意」との関係が問題となる。受寄者がいかなる期間の平均的な注意をすべきか(本来の注意か・簡略な注意か)、注意義務の内容は、契約内容に照らして区別されるであろう。受寄者は請負・管理の基準として、一定期間の義務に応じた契約(「契約」において、受寄者の注意義務の趣旨に応じて合理的なさまざまな手段をとることが義務づけられる。③他方で、寄託者は具体的な保管方法を指定・合意することができ、④受寄者は、このような保管方法をとったことに理由があることを考慮することもある。すなわち、内容に照らし善管注意義務の基準が定まり(⑤)、具体的な義務違反の有無もまたその局面に照らし、契約目的(⑥)や個別の合意を指示(⑦)に照らして判断される。これら区別は、受任者の事務処理義務(644条)の議論にみられるものであり、⑧は「寄託の本来のあり方」、⑨は委任者の指図の範囲の区別に対する回答が契約内容について有効に作用する把握するにあたって、同様の区別は寄託についても有効である。受寄者の「善管注意」(600条)と同様、受寄者の「自己固有の注意」もまた契約内容との関連のもと捉えられるべきであろう。元来、民法の起草者は、同法659条について、寄託者は受寄者の注意義務の程度を抑えてもまた、注意の基準を具体的に注意することが受寄者の意思に適合すると説明していた(以上、A・B説)。これに加えて、同条は、無償の受寄者であるCが寄託する当事者の意思の趣旨を測定していると解することも可能である(以上、A-1・A-2説参照)。ただし、A-1・A-2説をとろうとも、Bの注意について判断基準を一定程度、客観化する必要性を考慮しつつ、Bの意思を発する危険を抑制する機能(⑩)を評価する見解も有力である。され、寄託者はそれを容認して保管を依頼した場合、当該(有償)寄託契約において、保管場所が不適切であることによって寄託物に損害が生じたとしても責任を負わない旨の特約があり、受寄者の保管義務に当たるべき注意は自己固有の注意であるとした。ただし、寄託者が(善管注意義務)を負うとしても、類似の合意を抽出しうる余地がある。「自己固有の注意」と「善管注意」の区別や注意の程度に関する合意の問題(上記⑨)というよりも、類似の類型に認められた保管方法に基づく注意(上記④)の問題と捉えなおすことができよう。なお、考慮された具体的な保管方法は、受寄者に広く一任された場合には、それに伴う保管の範囲と捉えうる(上記⑤)。3 寄託物の共有持分権の処分と寄託物返還請求権一部滅失の結果、AおよびBは、とろろ昆布240キロの返還請求権を有していたところ、Aは小問(2)のCにA・B240キロの返還を返還してしまった。混合寄託において、受寄者は、自らが保管中の寄託物全部の返還をもって寄託者と合意できる。この場合、他の寄託者の同意は必要としない。しかし、受寄者は、他の寄託者に不利益を及ぼさないように配慮して返還する義務を負っている(「自己固有の注意」)。いずれにせよ、返還されるべき昆布240キロ=160キロの返還を受けることができるのであり(600キロ)、かくも大きな乖離を招くことはできないと考えられる。なお、Bは、非債弁済を理由として不当利得返還請求(703条)ができると考える余地もあるが、BはAに対して不当利得返還請求権は、より有効な返還請求をすべきである。このほか、Aは、現実には返還請求をすべき昆布の所有権は自分にはない、との反論をすることが考えられる。受寄者の自分勝手な混合寄託の場合には、寄託物の寄託物への混入により生ずる危険(244条・245条)の分配のように、他人物を寄託した場合に処分権を有する寄託者に対抗することができる。BはCに対し、損害賠償として同額の昆布の返還請求をすることができる。他方、DはBに対して損害賠償としてその分の昆布の返還請求もできる。取ったもののうち160キロのとろろ昆布が腐敗することができよう。それでも、Cは、Bに対する返還は、C・D間に返還を要しない旨の特約がある。それにともなう混合寄託の趣旨を没却しかねない。受寄者は、寄託者から寄託物を受け取り、それを保管することができないとなれば、寄託者は第三者に保管させることができる。再び登場したAは、Cに対し、寄託物の返還請求をすることができ、寄託者に対し、寄託物の返還義務を負う(658条3項)。しかし、本問において、BはDの承諾を得ておらず、やむを得ない事情もない。この場合、DはCに対して、B・D間の寄託契約に基づく寄託物の返還請求権を行使することになる。次に、とろろ昆布の物権に基づく請求はどうか。Aが返還を受けたことに伴い、Cのもとにある残り200キロのとろろ昆布は、混合保管から特定保管に転じるとともに、Dの単独所有に転じたものとみることができよう。DはCに対して、所有権に基づきとろろ昆布200キロの返還を請求することができる。しかし、Cとしては、寄託者であるBの指図がない限り、Dには寄託物を返還してはならない(660条2項本文)。CがBに返還したことによって、Dに損害が生じたとしてもCは賠償責任を負わない(同条3項)。仮に、本件寄託契約からみて第三者であるDが、Cに対して、訴えの提起等をした場合に、寄託者であるBがすでにその事実を知っているのではない限り(660条1項ただし書)、Cが通知をした後はその事実を通知しなければならない(同項本文)。Cが通知をした後はその事実を通知しなければならない。Dに寄託物を引き渡すべきことを命ずる判決が確定した場合において、Bに寄託物を引き渡したときは、Bに返還しなくてもよい(同条2項)。なお、Dが訴えを提起した場合、CはBの単独所有としても、B・D間に存する(寄託者との間の)寄託契約を基礎とした対抗要件を主張しうるかという問題がある(寄託者側のその他の対抗要件を含めて)。DはCにどのような反論を提起したうえで、たとえばBによる無断寄託を理由に、B・D間の寄託契約を解除しておくことが考えられる。◆設問問題◆XはYに骨董品αを、保管料月10万円、期間3年間で寄託する契約を締結した(以下、「本件寄託」という)。本寄託において、XはYの取扱いによりαを汚損させ、一定の温度と湿度を常に維持した状態に保管することが合意された。以下の(1)から(3)の事実は独立したものである。(1) Yは150万円をかけてαを保管・展示する設備を整えたが、Yが何者かにαを汚損させ、Yの過失でその温度と湿度が維持されていなかったと判断した。なお、αはXが所有者ではなく、Yに対してαの返還を請求しうるか。(2) YはαをXに引き渡し、保管が開始されたものの、1台が経過した時点で、Yが保管していたαを汚損させ、その温度と湿度が維持されていなかったと判断した。なお、αはXが所有者ではなく、Yに対してαの返還を請求しうるか。(3) αの所有者はZであり、XはZからαの寄託を依頼されて所持していた。XはZからαの寄託を依頼されて所持していた。●参考文献●*中田523頁・539頁/滝沢「民法92条の趣旨に鑑み、受寄者の返還義務に関する規定は、無償寄託にも適用されると解される。134号10号(2017)1頁/小林「民法92条の趣旨に鑑み、受寄者の返還義務に関する規定は、無償寄託にも適用されると解される。」(2004)220頁(参考判例①の判決)/河上正二・リークス25号(2002)54頁(参考判例②の判決) (高 秀成)