東京都、神奈川県、埼玉県、大阪府、滋賀県で離婚・男女問題にお悩みなら
受付/月〜土10:00〜19:00 定休日/日曜・祝日
お問い合わせ
ラインお問い合わせ

代理

A社は時計や装飾品を輸入・販売している。Aの商品の内、Aの子会社Bの倉庫で保管・管理され、注文が入ると、Aからの委託に基づいて、Bから顧客に発送されることになっている。その際、Bは長年にわたり、運送会社Cによる運送を利用している。Cは通常の運送サービスのほかに、比較的高価な物品を対象とした宅配サービスも行っている。この宅配便を利用する場合、運送料は通常の運送料よりも割高だが、運送中に運送品が紛失・破損したときには、30万円を上限とした補償がなされない。Bの倉庫事業部長は商品の価格に応じてこれらのサービスを使い分けていたが、コスト削減のために、30万円以上の商品を発送する際にも宅配便を利用することが何回もあった。また、こうしたやり方を、Aの経営者も黙認していた。Aは顧客Dからの注文を受け、スイス製腕時計1個(時価100万円相当)の発送をBに指示した。このとき、BはCの宅配便を利用して商品を発送したが、その運送の途中、商品が紛失した(詐欺等)。その後、商品はあらためてDに送り届けられた。この場合に、紛失した商品の価額に関するAからの損害賠償請求に対して、Cはどのような反論をすることができるか。[参考判例]① 最判平成10・4・30判時1645号162頁② 最判平成5・10・19民集47巻8号5061頁[解説]1 法律行為から生じる法律効果の帰属主体法律行為がなされた場合、原則として、法律行為を行った者、すなわち当該法律行為を構成する意思表示を行った者が、法律行為から生じる法律効果の帰属主体となる。したがって、契約当事者の契約の効力を主張できるのは、法律行為における相手方に対する関係においてのみである。また、こうした法律効果には、権利取得や義務負担だけでなく、責任制限や短期消滅時効にかかる契約条項の効力も含まれる。その契約当事者間で、債務不履行による契約責任とともに不法行為責任も制限することが合意されていたとしても、当事者は、当事者以外の者からの不法行為等に基づく損害賠償請求に対して、この契約上の責任制限を主張することができない。2 代理とその要件一方で、自己との権利関係にかかわる法律行為をすべて自身の意思表示を通じて行うことは、事実上・法律上の制約により、実際に不可能なことも多い。そのため、こうした制約を取り除き、私的自治による円滑な社会活動を促進するために、他人がした自己の法律行為のための手段として、代理制度が置かれている。代理では、本人に代わって代理人が意思表示のやりとりをし、相手方との間で法律行為を行うが、その法律効果は本人と相手方の間にのみ生じる。このように、代理による法律行為には、意思表示の主体と法律効果の帰属主体が異なるので、通常の法律行為と違いがある。こうした代理行為の例外的な効果を本人に帰属させるためには、法律行為の要件(とりわけ、代理行為の効果が本人に帰属させる旨の代理人の意思)に加えて、代理制度に固有の要件を(99条)、まず、代理人が代理行為を行えるなど、他人の法律行為を容易に侵害できることになる。そのため、代理行為を行える者は、本人の間において適法な代理権を有している者に限定される。こうした代理権には、法律の規定に従って生じる場合(法定代理)と、本人と代理人との法律行為による代理権授与に基づいて発生する場合(任意代理)がある。また、代理権を有する相手方が、相手方は代理人自身を法律行為の当事者とその代理権を相手方に表示し、代理人から代理行為である旨の主張が許されれば、相手方が契約当事者となり、特に債務者が誰であるかについて判断を有利にする相手方に、不利益は大きい。そこで、有効な代理行為のためには、相手方に対して代理意思の表示(顕名)が必要とされている。この顕名がない場合、代理人による意思表示の効果帰属はできず、代理人は帰属無効を主張することはできず、代理行為の効果は代理人に帰属することとされている(100条本文)。ただし、顕名に際しては、一定の場合に例外的な取扱いがなされる(同条ただし書、50条)。3 間接代理(取次ぎ)における委託者の地位以上のような代理行為の要件の充足がないと、委託者の地位が主張・立証しなければならない。この立証がなされれば、ある者が委託者の一定の法律行為を行うことを受託し、委託者の経済的利益の帰属を保全するために、さらに当事者との間で自己の名で当該法律行為(間接代理・取次ぎ)を行う。そして、その法律効果は、委託者の相手方の間にのみ生じ、委託者の法律地位に影響を与えない。したがって、運送品所有者である委託者が運送契約の当事者を訴え、受託者が運送委託の際に受託者に対して支払った賠償を請求したとき、この受託者に受託者が委託のために自己の名において運送人と運送契約を締結したとき、委託者は運送人の責任制限を主張することができる。4 運送取引の特質ところで、通常の物品運送取引では、運送人の責任限度に応じて、運送保険と連動させた運送料が設定されるのが通常であり、かつ、その内容を定める運送約款の適正性は、所轄官庁の認可や事業者間の協定などにより担保されている。また、運送契約の引受けは一般に船荷証券などにより担保されている。そうした中で、本問のような運送取引にある責任制限を越えて請求されると、Cは無断で運送契約の約款どおりに責任制限を失う。これでは、Cが引き受けた以上の責任を負わされる結果、運送取引システムのそのものが根底から覆されかねない。さらに、物品運送は荷送人以外の者のために行われることが多い。このとき、運送人の責任を際限なく享受することができ、運送事故の場合に運送契約上の責任制限を回避できることになれば、判例は、裁判例では、運送事故のリスクの分散を困難にすることになる。裁判所の裁判例では、こうした事情を踏まえて、運送事故を容認していた者が、責任限度額を越えて運送人に損害賠償を請求する義則により否定したものがある(参考判例①)。5 責任制限の対抗と第三者の保護に関する規定の根拠問題は、こうした結論を導くための理論構成である。1つには、契約外の損害賠償請求権者による当該運送の否認や同意、このへの責任制限の効力の拡張を求めることを正当化するに足らず、単なる否認や同意は、責任制限の対抗を求めることを正当化するに足らず、このような否認や同意の中に、他人の契約に限る意思を汲みとることも困難である。また、仮にそうした意思が確認されても、その法的位置づけについて不明確さが残る。契約外の第三者が運送実施を事実上享受している点も重視する見解もある。具体的には、自己の運送目的を達成するために、責任制限を伴う運送を承認して運送実施の利益を享受した者が、運送事故の際に契約当事者ではないことを理由に自身の責任制限の回避を図るなどしながらも、そうした他人が全てを責任制限の回避を図りながら自己の目的を達成しようとする態度、信義誠実の原則に照らして許されないとの主張である。こうした見解に対しては、これが運送取引の領域に限定されるものか、間接代理による取引一般にも及ぶものかのほか、契約外の第三者の要件や根拠を含めて、慎重な検討が求められる。さらに、運送取引に用いられる約款の特殊性に着目する立場も示されている。これによれば、運送取引約款のように、内容が合理的で、広く一般に普及している約款には、ある程度の拘束力が付与されるべきであるとされる。こうした見解では、そうした効力を認めるための約款の「合理性」や「普及性」につき、具体的基準が明確にされる必要がある。また、この考え方については、運送にまったく関与していない運送品所有者にも運送契約上の責任制限の効力が及ぶことにつながる点が承認されるとすれば、私人の設定した規範に法律と同等の一般的効力を承認することの可否や、その理論的根拠の所在など、より大きな問題もはらむ。いずれの法理によるにせよ、当該取引領域に固有の事情とともに、私的自治の原則・相対的契約の原則と代理制度との整合性をにらんだ解決が求められる。加えて、直接的な契約関係にない者の間の利害を調整する際には、利害の正当性に関する規範的評価への目配りも必要である三者間の不当利得に関する議論が参考になる(→本書89参照)。特に、契約中の特約が単なる形式的な合意にすぎないのか、実質的に機能しているのかも、契約の対外的効力を判断する重要な考慮要素となりうる。関連問題建築業者AはB建設会社から、C所有の宅地上での建物建設工事を請け負った。B・C間の下請負契約(代金4000万円)には、注文者は工事中断契約を解除することができ、その場合の工事の出来形部分は注文者の所有とする旨の特約が付されていた。A・B間の下請負契約(金員3000万円)では、そのような約定はなされなかった。また、CはAによる一括下請負の事実を知らなかった。AはBとの契約に基づき、自ら材料を提供して本件工事を行ったが、工事全体の25パーセント程度を終えた頃にBが事実上倒産してしまったため、工事を中止した。この時点で、AはBから下請負代金の支払をまったく受けていなかった。その後、CはBとの請負契約を解除し、Dとの間で、Aにより建設された出来形部分を基礎にした建物建設請負契約をあらためて締結した。Dによる工事完成後、Cは代金全額を支払い、建物の引渡しを受け、この建物について所有権保存登記を経た。上記の事実関係において、以下の場合につき、AはCに対してどのような請求をすることができるか。これに対してCはどのような反論がどの程度認められるか。(1) AはBとの契約の間、B・C間の契約に出来形部分の所有権帰属に関する特約が含まれていることにつき、説明を受けていた。また、CはAの工事中止の時点で、Bに請負代金の一部として2000万円を支払っていた。(2) AはBとの契約の間、B・C間の契約に出来形部分の所有権帰属に関する特約が含まれていることを知らなかった。また、CはAの工事中止の時点で、Bに請負代金の一部として400万円を支払っていた。[参考文献]奥田昌道・判時評1661号(1999)31頁 / 武川幸嗣=吉川愼一民事法II 164頁 / 大村敦志「もうひとつの基本民法Ⅱ」(有斐閣・2007)113頁 / 落合誠一 = 商法百選 200頁(岡本裕樹)