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将来給付の増額請求(確定判決の変更の訴え)

Xが取得した本件土地の一部として、以前よりYの所有する本件建物(マンション)がその敷地の一部として存在していた。そこで、XはYに対し、建物収去および土地明渡しをした。2019年1月1日から本件土地の明渡しに至るまでの賃料相当損害金(月額20万円)の請求訴訟を提起した(前訴)。この前訴はXの全面勝訴に終結し、判決は確定した(参考・受領の日弁連・2020年4月2日、判決確定日)。Yは本件土地の明渡しに応じなかったことから、Xとしては最新の確定判決を債務名義として建物収去および土地明渡しの強制執行を求めようと考えたが、本件建物の入居者の退去がなかなか進まずに手ができない状態にあった。Yもその後本件土地の不法占拠を続けていたが、前訴の口頭弁論終結以後、本件土地の近隣に鉄道の駅ができたことから、本件土地の2022年4月1日における相当賃料額は月額50万円に達した。そこで、XはYに対し、前訴確定判決後に生じた経済事情の変更によりその認容額が著しく不相当となり、当事者間の衡平をはなはだしく害するような事情があることを理由として、2021年2月1日から明渡しに至るまでの間、相当賃料額と前訴認容額との差額の追加請求を求める訴えを提起した(後訴)。この後訴は、前訴判決の既判力との関係で許されるであろうか。●参考判例●最判昭和61・7・17民集40巻5号941頁●解説●1 将来の給付と増額請求本問における事実審の口頭弁論終結日から本件土地の明渡しに至るまでの間の賃料相当損害金の給付を求める訴えは、将来給付の訴え(135条)であり、「非行給付の訴えの評価については→問題18)。将来の給付の訴えが提起された場合、請求は、現在給付の訴えと異なり、将来の損害の発生の予測の基礎となった価格価価価物価価価物価変動など口頭弁論終結時には予測しえなかった事情の変更により、損害の増減をきたすことがある。この点、確定判決の既判力にかかわらず、口頭弁論終結後の事情の変更を理由に増額の請求をすることができるであろうか。本問のような将来給付の訴えは、将来の履行の可能性について前訴の口頭弁論終結時において主張・立証が可能であるため、口頭弁論終結後の価額を基礎にせざるを得ないところ、被告が不法占拠を継続しているにもかかわらず、実際には支払うことなく、実体法上も地代支払請求権(借地借家11条)が許されていることも鑑みて将来給付の訴えは、一般に認められるといえる。同様に、これについては見解が分かれる。2 一部請求的な訴訟物理論伝統的な「訴訟物=既判力」という図式を維持し、同一の不法行為に基づく損害賠償請求権は1個である(最判昭和48・4・5民集27巻3号419頁参照→問題50)。ことを前提とするならば、本問における後訴請求は前訴判決の既判力の範囲において許容されないこととなる。この点、参考判例①は、前訴の基準時後の物価価価価や土地価格の高騰といった通常事情により、前訴における認容額が適正賃料額に比較して不相当なものとなった場合に生じる差額相当損害金については、前訴の段階において主張、立証することが不可能であり、これを請求から除外する趣旨のものであることが明らかであるとみるべきであり、これに対する判決もまたそのような趣旨のもとに右請求について判断したものというべきであって、その後の訴訟で請求できるものと解するのが相当であるとして、前訴判決の既判力には抵触しないと判示して、前訴の請求は将来の損害額について明示的に一部請求と捉えることができるものとした。これより、「訴訟物=既判力」という図式は維持しつつも、前訴が一部請求であったと判断されるところにおいては、後訴における差額請求は認容されることとなることから(最判昭和37・8・18民集16巻8号1720頁参照→問題50)、増額請求を求める後訴は前訴の既判力には触れず適法な訴えとして認められることとなる。判例理論の採用する明示的一部請求肯定説は、一部請求が後訴請求を認めるという点に正当性を見出すことができるとするところ、本問も訴え提起がなされた時点での経済事情の変化によって高騰した部分を一部請求として主張する。その後の経済事情の悪化によって減額した部分については、後訴提起を予見すべきというもとになろう、というわけでは、後訴は全く同一の判決の許容性について問題視しており(例えば、最判昭和48・7・16民集21巻6号1559頁など)、(→問題50)、本問のような訴訟を用いることは一連の判例理論と整合性を欠くと評価しえ、反面、将来給付の減額といった事態に対しては、一部請求論を用いた対応は不可能であり、かかる事態への対応については本問の議論があるといわざるを得ない。3 その他の一理由構成判例が採用する一部請求論による理論構成としては、前訴が一部請求であった旨の何らかの窺えるような事情があることを前提とせざるを得ない。一部請求論は請求の趣旨の拡張の申出を本来のすべてのすべての額であり、また訴え提起がなされている。学説においては、これが、本来の給付の訴え、つまり、債権の全部額について判決を求める訴訟では、前訴の基準時までに保障されていた経済事情に基づくものと、強行法規の違反による無効であり、前訴において有効・無効を争うことができない場合にも既判力は及ばない、との見解が有力である。また、端的に、将来を予測してなされる将来給付の損害賠償額における認容額の既判力は柔軟性をもって、既判力の積極面から、将来の給付請求訴訟における認容額の既判力は柔軟性をもって、既判力の積極面と正面から認められる見解も有力である(道1860頁注18など)。さらに、口頭弁論終結前に生じた損害につき、定額金による賠償を命じた判決が確定した後に、損害額の算定の基礎となった事情に著しい変更が生じた場合には、その判決の変更を求める訴えを提起することができる旨を定める民事訴訟法117条の類推適用を説く見解も存在する(伊藤眞544頁、松本=上野699-700頁など)、元来同条は、①家庭裁判所の判決によると、②口頭弁論終結前に生じた損害についての定期金判決による賠償に限る)変更の訴えを許すことを想定しており、将来継続的に発生する損害賠償を命じた判決について、同条の適用対象とされているが(法務省民事局参事官編「一問一答新民事訴訟法」〔商事法務研究会・1996〕132頁参照)、この立場は、本問のような場合であっても、前訴の基準時後の事情の変更によって金額が不相当になるという点では、同条の想定する現在の給付の訴えとしての定期金賠償請求の場合と共通性が認められ、同条の類推適用の余地がある。