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口頭弁論終結後の承継人

本件土地はAの所有名義に登記されていたが、これはXが本来所有する不動産でありAとの間で登記原因証明書によってなされた登記であった。Xは本件土地が自らの所有に属すると主張して、Aを相手どって異なる登記原因のために本件土地の所有権移転登記手続請求訴訟を提起し、この訴訟はX勝訴の判決が言い渡され確定した(前訴)。その後、Yは、前訴の事実審の口頭弁論終結後に、Aから本件不動産の贈与を譲り受け、Y名義の所有権移転登記を了した。X・A間での登記原因証明書の存在については後訴で争った。Yに対し、Xは、Yに対して所有権に基づく本件土地の所有権移転登記請求手続請求訴訟(後訴)を提起したところ、Yは、自らは民法94条2項の第三者に該当するので請求の無効は対抗されないと主張した。前訴確定判決の既判力は、後訴においてどのように作用することになるであろうか。●参考判例●最判昭和48・6・21民集27巻6号712頁最判昭和41・6・21判時464号25頁●解説●1 既判力の主観的範囲・原則と例外既判力の主観的範囲については、原則としてその訴訟に関与した者にのみその効力が及ぶとされている(既判力の相対性の原則、115条1項1号)。これは、民事訴訟が権利または法律関係につき当事者の私的な権限に属する手続である以上、既判力が主たる当事者間の私的な権限に属する手続である以上、既判力が主たる当事者間の私的な関係に関してのみ関与して十分であることに加え、処分権主義・弁論主義の下で自らが訴訟を追行した当事者がその判決に服すべきよう求め、訴訟に関与する機会の与えられなかった第三者に判決の効力を及ぼすことは第三者の利益を不当に害することになるからである。もっとも、この原則に対しては例外もあり、訴訟担当の場合の本人(同項2号)、口頭弁論終結後の承継人(同項3号)、請求の目的物の所持者(同項4号)に対しては既判力が及ぶとされており、主観的範囲の拡張が法定されている。2 口頭弁論終結後の承継人民事訴訟法115条1項3号にいう「口頭弁論終結後の承継人」とは、前訴における当事者の事実審の最終口頭弁論期日以後(すなわち基準時以後)における、当事者(および訴訟担当の場合の権利帰属主体)からの承継人を指す。この拡張が認められるのは、判決の紛争解決の実効性の維持のため(権利関係の安定のため)とされる。すなわち、仮に承継人に既判力が及ばないとすると、例えば、前訴原告から目的物を譲り受けた者が被告との間で再訴訟をしなければならないことにもなりかねないが、それでは勝訴原告から目的物を譲り受ける者はまずいなくなるであろうし、逆に、敗訴した被告は係争権利関係自体を第三者に処分したり係争物に関する占有を第三者に移転することによって、既判力の拘束を回避でき、前訴確定判決を無に帰せしめることになるといった弊害が生じること、これを防ぐために承継人への既判力の拡張を認めたものである。とはいえ、一般に既判力の正当化根拠は手続保障に求められるところ、既判力の拡張をうける承継人(とくに前訴が訴訟係属していたことについて、判決による権利関係については必ずしも十分ではない(判決による権利関係については必ずしも十分ではない。このような趣旨からすると、承継人とは、まず訴訟物たる権利・法律関係を承継した者を意味することは争いはない。問題なのは、訴訟物たる権利・法律関係そのものではないが、確定判決の紛争解決の実効性の観点から承継人と認めるべき場合があるか、そのような場合にについて承継の対象をどのように理論的に位置付けるかについては考え方が分かれる。承継につき訴訟法上に新たな地位に着目する考え方としては、当事者の適格承継と捉える見解(適格承継説)もかつては有力であったが、前訴と後訴とで訴訟物が異なる場合の説明に窮することもあり、近時では前訴で解決された紛争およびそれから派生した紛争の主体たる地位を承継の対象と捉える見解(新堂705頁、重点講義690頁など)が有力である。この立場によると、既判力の拡張を受ける承継人は、勝訴当事者の手続保障によってすでに押されているとする。他方、訴訟法上の地位ではなくむしろその基礎にある実体法上の権利関係を承継の対象として把握する立場(係争物説。上掲675頁、伊藤581頁など)も存在し、この立場からは承継人の実体法上の地位が訴訟当事者(被承継人)と依存する関係にあることをもって既判力の拡張の正当化根-拠と求める。3 承継人の固有的地位の主張確定判決の紛争解決の実効性の要請から承継人の基準時後の承継人に既判力を拡張する要請があるとしても、本問のようにその承継人が民法94条2項の適用を主張として善意無過失によるものである(本問では、民法94条2項にいう「善意の第三者」)にも、一律に既判力の拡張を認めてよいものであろうか。この点につき、後訴においてYの善意が認定される場合には、民事訴訟法115条1項3号にもかかわらずYを勝訴とすべきではないかという問題は、その理論構成をめぐってであり、口頭弁論終結後の承継人の場合には一律に既判力の拡張を認め、それによって固有の法的な地位の主張が遮断されるわけではないとする形式説(新堂708頁、重点講義180頁など)と、既判力の拡張が認められるような場合には当事者にすぎず、既判力の拡張は受けないとする実質説(道1860頁、三木浩一ほか編「条解民事訴訟法〔増補版〕」〔講談社・1965〕345頁、上田510頁など)とが対立している。学説では形式説が多数説といえるが、判例は参考判例のいずれについても実質説によるものであると評価されている。これに対し、判例がどの場合にどのような判断をするのかは明らかではないとする立場(中野1・219頁など)もある。もっとも、実質説、形式説のいずれの立場に拠ろうとも、結論自体には大差はないとされ、ただ、口頭弁論終結後の承継人に対する既判力の作用の仕方を、既判力理論との関係で整合的に説明できるという点においては、形式説のほうに利がある。められるとしても、前訴判決で確定された権利関係自体を争う(本問において、X・A間の売買契約は有効とする)ことで、X・A間の所有権移転登記請求をすることはできないといったように、もはや前訴の判決により許されない(既判力の積極作用)が、固有の法的な地位を主張することは、基準時後の新事実として遮断されない(既判力の消極作用)。第2に、実質説では、後訴当事者の主張が基準時後の固有の法的な地位が認められるかどうかによって、既判力が拡張されるかどうか(民事訴訟法115条1項3号の「承継人」に当たるか否か)が決することになるが、これは既判力の趣旨を没却することになるかねない。第3に、実質説によっても、前訴当事者(本問におけるA)が敗訴した場合にAからの承継人であるYへの既判力の拡張を認めることになるが、形成による、前訴当事者間(本問におけるA)の勝訴・敗訴にかかわらず一律に既判力の拡張を認めることを一貫して説くことが難しい。4 執行力の拡張と承継人の固有的地位口頭弁論終結後の承継人に対する既判力の作用という問題は、実際には、前訴の訴訟物を判断すると後訴とで訴訟物が問題となるのであり、これも同一の行為である。これに対し、本問とは異なりXが、前訴確定判決を債務名義としてYに対し強制執行に及んだ(具体的には、承継執行文の付与の申立て〔民執27条2項〕)に、固有的地位を有する人に対する執行力の拡張という問題が生じる。かつては、既判力と執行力の主観的範囲は一致するとの前提の下、執行力が及ぶ承継人は、既判力が及ぶ承継人と同一とするのが一般的な理解であった。しかしながら、既判力の拡張をうける承継人が、既判力を覆すに足る積極の事由の不存在を後訴で争えないのにすぎないのに対し、執行力の拡張を受ける承継人は自己の財産に対して執行がなされるのか否かの利益状況は著しく異なることを理由に、既判力と執行力の主観的範囲を必ずしも一致しないとする今日では有力である(上述の形式説は、既判力の及ぶ承継人であっても執行力が及ばない承継人の不存在を正面から認める)。そこで、執行力の拡張の局面において、承継人が固有の法的な地位を有する場合には、誰のイニシアティブでどのような手続段階で審査すべきかという問題が生じるが、この点については、権利確認説と訴訟責任転換説という考え方が分かれる。前者の見解は、第三者に固有の法的な地位が成立し第三者に対する請求権が存在しない場合には、この者に対する執行力の拡張は及ばないし、第三者に請求する請求権の存在が少なくとも義務的に確認できる場合にのみこの者を承継人として執行文を付与することができるとする立場にある。この立場によると、執行債権者は、承継の事実と第三者に固有の法的な地位が成立しないことを当然的に書面で証明する証拠を提出した場合を除いて、承継執行文の付与(民執27条2項)を受けることができ、これができないときは執行文の付与を訴え(民法33条)を提起しなければならないことになる。この判断に対しては、固有の法的地位の存否という実体権に関わる判断を、裁判官ではなく承継執行文付与機関(裁判所書記官)に委ねるのは妥当でない、という批判がある。これに対し、後者の見解は、債権者の承継執行文の付与を円滑にするとともに債務者の反対を平等に保護するという趣旨である(もっとも、反対債務者の見解は、債権者に固有の法的な地位がないにもかかわらず執行文が付与された場合でも、訴訟を提起できるのであって、その意味では、執行債権者は、承継の事実を証明することによって執行文の付与を受けることができ、承継人の固有の法的な地位の主張は、承継人からの請求異議の訴え(民執35条)によらなければならない。