一部代位と担保保存義務
2024年11月13日、建築家Aは、オフィスの新築のための融資を得るべくB金融機関に赴き、A・B間で、Aを借主、Bを貸主、貸付額4000万円、返済期間5年、年利2パーセントとする旨の金銭消費貸借契約(以下、「本件金銭消費貸借契約」という)が締結された。本件金銭消費貸借契約については、翌5月以降の約定弁済、毎月返済、元利均等返済、繰上返済可能とされているほか、各支払期日について一度でも不履行が生じれば、残額全額につき期限の利益を失う旨の約定がある。また、本件金銭消費貸借契約から生じるAの債務(以下、「本件債務」という)につき、A所有の甲土地(甲乙ともに評価額2500万円)にBのために第1順位の抵当権が設定され、同日付でその旨の登記がなされた。併せて、同日、Aから依頼を受けた友人Cが、本件債務につきBとの間で連帯保証契約を締結した(Cも、この連帯保証契約については、民法465条2項、465条の10第1項の要件を充足しているとする)。Aは本件債務の弁済を、2025年5月5日に、その残額が2000万円となった。そこで、Aは、乙土地の活用のためBに対して抵当権の放棄(ここは「絶対的放棄」を指す。以下、特に断りがない限り同じ)を依頼したところBはこれに応じ、同日付で乙土地に係る抵当権設定登記が抹消された。しかし、その後、誰もが予期し得ない経済不況の影響を受けてAの業績は悪化し、本件債務のうち同年6月分の弁済に不履行が生じた(なお、当該不履行につき、民法458条の3第1項所定の通知はBからCに対してなされたものとする)。(1) 2025年7月2日、BはCに対して本件債務の残額2000万円につき連帯保証債務の履行請求を行った。この際、甲土地の評価額が経済不況の影響で1000万円にまで急落していたとすれば、Bの履行請求に対して、Cはいかなる反論をすることができるか。(2) 上記(1)において、CがBの履行請求の一部に応じAに500万円を弁済した場合、Cは、本件債務を担保するべくAがいかなる権利を行使しうるかをどのように行うべきであろうか。仮に、Cによる上記一部弁済の後に、BがAの求めに応じて甲土地について抵当権を放棄し、その抹消登記手続もなされてしまった場合はどうか。●参考判例●① 最判平成3・9・3民集45巻7号1127頁② 最判平成7・6・23民集49巻6号1737頁③ 最判平成17・1・27民集59巻1号200頁●判例●1 担保保存義務の意義と機能民法504条1項によると、「担保保存義務」とはむしろ「求償をするについて正当な利益を有する者」(以下、「代位権者」という)がいる場合において、債権者が故意または過失によってその担保を喪失させ減少させた場合、当該代位権者は、この喪失や減少によって償還を受けることができなくなった限度において、責任を免れることを規定する。この規定によって反射的に債権者が負うことになる「担保保存義務」と呼ぶ。具体例を挙げれば、AのBに対する3000万円の貸付金債権について、AがB所有の土地(評価額3000万円)に抵当権を設定し、これに加えて、CがDとの間で連帯保証をした場合、AがCの抵当権を放棄した場合、Cは代位できなくなった限度すなわち一部の金額(償還を受けることができなくなった2000万円について保証債務の弁済を免れることができることになる)。代位権者が代位に当たって担保を失ったことは過失(一部)弁済により全体として償還できる担保が失われたこと自体を、免責の要件とする。のである。債務者等から実際に全額の償還を受けることができるか否かを問うものではない。そのため、残担保価値が代位権者の求償権(求償額)をなおも保障しうる場合でも免責とならない。担保保存義務の法的性質については諸説あるところ、代位権者の代位への期待を保護するために、債権者の故意または過失による担保喪失によって生じた不利益を、代位権者の求償を通じて債権者に負担させるという点では、民法504条1項は不法行為に近づく。伝統的な理解といえる。つまり、サンクション課されるにすぎず、担保を保持する一般的な「義務」を課すものではない。それでは、ゆえ、債務者の担保保存義務違反は代位権者を実証法とは別に免責させる効果をもつ(参考判例①参照)。としても、代位権者は、その求償違反を根拠として、債務不履行または不法行為に基づく損害賠償を債権者に対して求めることはできない。実際の一部実務では、代位権者は、債権者の担保に対する全面的な一部免責を抗弁として、同時履行の抗弁を主張するというのが一般的であり、その意味では、担保保存義務違反は受動的な機能にとどまる。もっとも、「安定法上当然に免責」の効果が生じる以上、代位権者は、債権者の担保保存義務違反に基づく自らの債務の全部または一部の免責を訴訟上請求することもできる。代位権者が自らの判断で担保保存義務に違反している第三者の物上保証人の登記抹消手続請求をすることもできる(なお、同旨参照)。2 民法504条1項による担保の喪失または減少の評価民法504条1項の担保という文言の射程はどこまで及ぶか。物理的には、債権者が存在する担保(物)を指し、また、物的担保とは、人的担保と並び代位権の行使により債権の回収を確保する(保証人であれば保証契約の締結時)、までに取られる必要もない(大判昭和8・9・29民集12巻2658頁)。その他、一般債権者にとっての対抗要件ではない(「一般売買担保」)。ここでは、担保保存義務を構成する財産権を特定し、これを解除しても、ここでいう「担保」の喪失には物理的な滅失または価値減少にとどまらず、法的な価値の範囲を決定する担保価値の評価基準は、「喪失」の場合は喪失時(大判昭和3・3・15民集10巻107頁)、「減少」の場合は担保価値の減少が判明した時点の時価(大判昭和8・3・1民集12巻370頁)と解されている(消極Ⅱ184頁)。金融取引においては、故意または過失によってなされたことは、一般的にはこれにより、担保による事業の継続や金融(信用)による事業の継続がなされ、これには経済合理性がなければならず、経済的利益と社会通念に照らして判断する必要がある。これに反するような行為は、民法504条1項にいう故意または過失による担保の喪失または減少に該当する。たとえば、複数の担保を有する債権者が債務者からの一部弁済を受け、担保価値の減少がなかったとしても、担保の解除に応じることは、担保権の価値が減少した場合と同様に評価される。3 民法504条2項と連帯保証人と物上保証人との関係民法504条2項は担保の喪失または減少が債権者の過失によるものであったとしても、担保保存義務の全部または一部を免れるものではない。しかし、この規定は、債権者の過失による担保の喪失または減少を理由とする求償権の行使を制限するものではない。このため、債務者の担保保存義務違反を理由とする求償権の行使を制限するものではない。これに対し、担保保存義務の全部または一部を免れるものではない。まり、この要件が充足されないのであれば、信頼関係が毀損したことを理由とする任意解除という形での効力は一切否定されない。2017年の民法改正(いわゆる「債権法改正」)以降、民法504条1項に「取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない」との文言の規定は採用しない。代位権の行使を免れるに足る程度の担保の放棄または減少に限定される。3 共同保証人と物上保証人との関係民法504条2項は代位権の行使を免れるに足る程度の担保の放棄または減少に限定される。た場合に、物上保証人(代位権者)から物上保証人以外の者が弁済をした場合、その免責の効果を主張できるか否かという問題がある(債権者間の参照)。民法504条1項は債権者の過失による担保の喪失または減少について、その免責の効果を主張できるか否かという問題がある(債権者間の参照)。4 担保保存義務の放棄と債権法改正一部弁済をした保証人は、一部代位(民法502条1項)に基づき、一部代位者としてその弁済をした価額に応じて、債権者とともに行使する。その弁済をした価額に応じて、債権者とともに行使する。行使する」としていたところ、判例は、一部代位者の求償権の行使を認める(大判昭和6・7民集10巻535頁)。一部代位者の求償権の行使を認める。6 一部代位と担保保存義務の関係代位権(代位権者)はその代位に係わる担保(物権)をめぐって求償権(特約)を確保するためである。債権を担保する。たとえば、AのBに対する3000万円の貸付金債務を担保するため、Cの土地(評価額2000万円)にDが物上保証人として、Aが甲土地に抵当権を設定したとする。Aが甲土地に抵当権を設定したとする。以上の具体例においては、代位権の行使を免れるに足る程度の担保の放棄または減少に限定される。Aは、Bの承諾を得て、この担保を放棄した。これによりCの代位に係わる期待が害された程度として、この担保の価値(一部弁済:2000万円)を限度として、Cの保証債務は消滅する。なお、弁済後の担保(物)の放棄については、求償権の行使を免れるに足る程度の担保の放棄または減少に限定される。代位権の行使を免れるに足る程度の担保の放棄または減少に限定される。Aが甲土地に抵当権を設定したとする。Aが甲土地に抵当権を設定したとする。Aが甲土地に抵当権を設定したとする。Aが甲土地に抵当権を設定したとする。Aが甲土地に抵当権を設定したとする。Aが甲土地に抵当権を設定したとする。Aが甲土地に抵当権を設定したとする。Aが甲土地に抵当権を設定したとする。Aが甲土地に抵当権を設定したとする。◆関連問題◆(1) 本問において、B・C間で連帯保証契約につき、BがAの都合により担保の放棄等をした場合であっても、Cは自らの保証債務について免責を主張することはできないのではないか。(2) AのBに対する3000万円の金銭債務を担保するために、F(物上保証人)およびF(物上保証人)所有の乙土地(評価額3000万円)のそれぞれにつき、抵当権が設定され、その後、Eから3000万円の弁済を受けたため、乙土地の抵当権が消滅して初めから十二分であると評価するに至ったのは、Cの依頼により甲土地が追加担保(後順位抵当権が設定された)を、Eから債権の弁済がないために、Dが土地所有権を失うとした場合、これらをどのように考えることができるか。