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参加的効力

あるビルの1室につき、X・Y間に賃貸借契約が成立した。借主Yは、本件建物は貸主Xが所有するものと信じ、Xから本件貸室を賃借していたところ、A社がYを被告として、本件建物の所有権はA社に属すると主張して、本件貸室の明渡しと賃料相当損害金の支払を求めて訴えを提起してきた。Yは、本件建物についてのA所有権を否認し、本件建物はXが所有するものであり、YはXから本件貸室部分を賃借している旨答弁した。Yからこの訴訟について連絡を受けたXは、第2回期日に補助参加の申出をし、以後、本件建物はXの所有であることを主張してYの勝訴のために訴訟行為をした。しかし結果は、本件建物は賃貸当時からAの所有に属するとの判断がなされ、Y側の全面敗訴に終わった。控訴、上告がなされたが、Y側の主張は認められずY側が敗訴し、判決が確定した。にもかかわらず、その後Xは、あらためてAとの間で賃貸借契約を結んだYを被告として、ビルの所有権は終始Xにあることを主張して、X・Y賃貸借契約に基づく賃料と賃料相当損害金の支払を求める訴えを提起した。YはY・A判決の効力によりXの請求は認められないと主張できるか。参考判例最判昭45・10・22民集24巻11号1583頁解説1 補助参加人に対する判決の効力補助参加がなされた訴訟で下された判決は、その訴訟の当事者に効力が及ぶのはもちろん(既判力につき115条1項1号)、一定の要件の下で、補助参加人にも効力が及ぶ(46条)。これは、補助参加として十分に主張・立証を尽くした、あるいは尽くすことが期待できた事項については、補助参加人は自己を当事者とする第2の訴訟で補助参加訴訟で下された判断内容ををもはや争うことができないという趣旨である。そこで本問でも、Yに補助参加したXは、Y側が敗訴した責任をYとともに負い、補助参加した訴訟での判断に拘束されることになる。この判決の効力の性質については諸説がある。かつては判例・学説ともにこれを既判力ととらえる時期があったが、後述のとおり、既判力とは異質の補助参加訴訟に特殊な効力とするのが今日の通説であり、参考判例①もそうした。この効力、すなわち「参加的効力」は、参加人が参加しておきながら訴訟を追行した以上、敗訴の責任を公平に分担すべきであるという禁反言の原則により根拠付けられる。2 補助参加人の地位とその訴訟行為の制限補助参加の効力が生じるには、その前提として十分に訴訟において主張・立証の機会が保障されていなければならない。そこで補助参加人が十分に訴訟行為をすることができなかった場合、補助参加訴訟で敗訴はすでに悪かったり、被参加人の訴訟行為と抵触するなどしたときには参加的効力は生じない(46条)。ここで、補助参加人の地位について確認しておこう。補助参加人は、被参加人を勝訴させることにより自身の利益を守るため、補助参加人の代理人でも補佐人でもなく独自の補助者でもなく、独自に権能をもって訴訟に関与できる。従たる当事者といわれるように当事者に近い側面をもち、攻撃防御方法の提出、異議の申立て、上訴の提起、その他被参加人を勝訴させるに必要な一切の訴訟行為ができる(45条1項)。期日の呼出や訴訟書類の送達も当事者とは別にされなければならない。一方、補助参加人は他人間に係属している訴訟を前提とし、これに付着して訴訟を追行する者であり、自身の請求を持ち込むのではないから、本来の当事者に対して従属的な側面をもつ。まず、参加時までの訴訟状態に従って、被参加人がすでになし得なくなった行為はできない(45条1項ただし書)。例えば、時機に後れた攻撃防御方法の提出、自白の撤回、期権を放棄喪失した行為に対する異議などは、他人間の訴訟を前提に、これに事後的に介入を許すものとして許されない。次に、参加人の訴訟行為と被参加人の訴訟行為とが矛盾抵触するときは、参加人の訴訟行為はその限りで効力を生じない(45条2項)。したがって被参加人が自白していることを補助参加人が争っても否認の効果を生じない。さらに、補助参加人は他人間訴訟を前提として、それに付着して訴訟行為を行う存在であるから、訴訟そのものを発生させたり、変更消滅させる行為はできない。訴えの取下げや請求の変更、反訴の提起、訴訟上の和解、上訴権の放棄などがこれに当たる。もっとも、以上のような補助参加人の独立性と従属性との限界、境界線については、補助参加の機能の捉え方とも関連して、議論が分かれる。3 参加的効力の範囲参加的効力は既判力と異なる補助参加に特殊な効力と捉えられているが、その具体的差異は、①民事訴訟法46条所定の除外例が認められているように具体的事情によっては効力が左右されること、②判決効の存在は職権調査事項でなく当事者の援用を待つことが原則、③判決主文の判断のみならず理由中の判断にも及ぶこと、④被参加人敗訴の場合にのみ問題となり、被参加人・参加人間にしか及ばないことが挙げられている。まず客観的範囲(③)として、既判力とは異なり、判決理由中の事実認定や先決的法律関係についての判断にも効力が及ぶ。本問でいうと、訴訟物たるAのYに対する本件貸室の明渡請求権と賃料相当損害金支払請求権が既判力の及ぶ部分であるが、これの存否につき拘束力を認めたものでも、Xには届くも及ばない。本件建物がAの所有であるという理由中の判断にこそ拘束力を認める意味があるのであり、参考判例①も、X・Y間では本件建物の所有権が上記賃貸借当時にXに属していなかったとの判断に及ぶべきとしている。したがって、YはY・A判決の効力によりXの請求は認められないと主張できることになる。ただし、当事者でさえ効力を受けないとされる理由中の判断に補助参加人を拘束する根拠として、自己に属する請求が当面は審判対象とされていない補助参加人としての立場も当事者と区別すべき事項で、かつ参加訴訟で主張上の一切の制約がなく、将来に向けても効力を認めることで公平な場合等々である必要がある。これを本問でみると、本件建物所有権は、勝敗を決する重要争点であるとともにXにとり重大な利害関与を有する事項で、参加の利益の段階から十分に主張・立証の機会が付与されているところ、参考判例①でも実際、XはYの訴追行為を妨げた事実がみられた。これらところに拘束力を及ぼしてもよいとしている。次に主観的範囲の問題(④)として、通常にいわれる補助参加訴訟、被参加人及び参加人・相手方間では及ばない。したがって例えば、債務者と保証人間の保証債務請求訴訟で主債務者が被告保証人に参加し主債務の不存在を主張したが敗訴した場合、主債務者は、後日保証人から求償請求を受けたときにはもはや主債務の存在を争うことができないのに対し、債権者から主債務請求の訴えを提起されたときは、主債務者は補助参加訴訟の判決は不当として主債務の存在を争えることになる。A間では差し当たりX・Yの敗訴訴訟で補助参加の拘束力が前記のとおり生じれば足りるが、もし後日XがAに対して本件建物の所有権確認訴訟を提起してきたときに、問題が生じる。そこで同時、補助参加訴訟の判決の基準はA・X・Yの三者により固定され、XとA、YとAとの間で主張・立証を尽くす機会が十分保障されたことを根拠として、A・X間でも一定の場合に拘束力を及ぼす場合性も必要性があるとの考え方が示されている(新堂・前掲227頁、重点講義民訴463頁など)。4 参加的効力の判断力以上のとおり、通説・参考判例①は、補助参加訴訟の既判力の拡張力説と異質の差異を強調しているものの、この参加的効力のいう既判力との異質性が果たしてどこまで妥当するのかには疑問が向けられている(井上・後掲381頁)。まず参加的効力の性質につき、既判力は公権的な紛争解決として紛争の蒸し返しを許さない法的安定の思想に由来するのに対し、参加人と被参加人の訴訟追行上の責任分担という公平の見地に由来するといわれる。しかし蒸し返しの禁止という効力の現れ方は既判力と同じであり、主観的範囲についても前述のとおり相手方に対する効力が論じられるようになっている(前述3④)。さらに拘束力の除外例を認める点(3①)も、既判力にも具体的事情を一切考慮せずに画一的に及ぼされるべきでないことが明らかにされているようになっている。当事者の手続保障を前提に論じられることは両者共通と認識されている。また既判力をめぐる議論では、先決的法律関係や請求権の法的性質決定などの理由中の判断についての拘束力も議論されている(→問題9)。この傾向は、既判力そのものを当事者間の実質的公平に支えられた効力、当事者の手続保障を前提にした効力とみて、むしろ参加的効力として説かれている性格および内容のものが、判決効一般に通じる普遍性をもち、既判力の原型であると解しているのである。参考文献井上治典『多数当事者訴訟の法理』(弘文堂・1981)376頁/新堂幸司『訴訟物と争点効』(有斐閣・1988)227頁/伊藤眞=百選204頁(安西明子)