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不動産譲渡担保②

甲市において建設製造業を営むAは、2022年6月1日、老朽化した製造機械の更新のために、貸金業者Bから金7500万円を借り受け、Bとの間で毎月1日払い、最終弁済期2027年6月1日、利息年2.5パーセント、遅延損害金年4.5パーセントという内容の金銭消費貸借契約を締結した。また、同日、Aは、Bから貸付けを受けた金銭債務の担保のために、A所有の工場建屋およびその敷地(以下、「本件土地建物」という)の所有権をBに移転し、同年6月2日に所有権移転登記を経由した。その後、3年の間は、順調に被担保債権の弁済がされていたが、2026年10月頃より弁済が滞り、元本については、最終弁済期到来の時点でもなお2900万円余の未払金があった。そこで、Bは、2028年6月1日、本件土地建物の所有権をCに譲渡し、同月5日に所有権移転登記を経由した。他方、Aは、2029年6月1日、Bに対して残債務ならびに同日までの利息および遅延損害金(以下、「本件残債務等」という)を提供したが、Bが受領を拒んだため、同年6月5日、本件残債務等を供託した。(1) 以上のような状況において、Cは、本件土地建物をBから取得したことを理由として、Aに対して本件土地建物の明渡しを請求することができるか。**(2) 上記と異なり、Bの一般債権者DがBに対して有する債権の実行として、2028年6月1日に、本件土地建物につき競売を申し立て、差押登記を同年6月5日に了した。他方で、Aが、上記と異なり、同年6月9日にBに本件残債務を弁済したとする。この場合において、AはDの不動産差押えに対して、受戻権の行使を理由として、第三者異議の訴えを提起することはできるか。●解説●1. 譲渡担保の実行債権者は、被担保債権の弁済期を経過すれば、「譲渡担保の目的の範囲内で移動を受けた担保目的物の所有権を移転する」ことを図ることができる。もちろん、譲渡担保目的物の所有権の帰属を図ることができる。判例法理においては、2つの類型がある。一つが帰属清算方式であり、他方が処分清算方式である。2. 受戻権処分清算方式の場合にあっては、第三者への処分によって完全な所有権の移転が生じることになる。このため、これらの時点以降は、もはや債務者(設定者)は所有権の回復を求めることができなくなる。受戻権は、被担保債権等弁済しないと消滅することができず、譲渡担保を、目的物の換価によって、債権者が優先的に弁済を受ける(戻し)この受戻しは、所有権的構成によれば、債権者が有する目的不動産の上の担保権(利益)を消滅させることを意味する。3. 受戻権と譲渡担保権設定後の第三者との関係被担保債権の弁済期経過後、債務者が第三者に処分された場合の法律関係はどのようだろうか。一方において、譲渡担保権者は、譲渡担保の実行の範囲で目的不動産に関する処分権能を有し、これに基づいて、帰属清算あるいは処分清算による清算のいずれかの方法によって目的不動産を確定的に取得することができる。このとき、譲渡担保権設定者はもはや目的不動産の所有権を回復し得なくなる。他方、設定者は、目的不動産の所有者であって、自己の所有に基づいて第三者異議を主張しうる。4. 譲渡担保権者の清算義務と譲渡担保権設定者との関係設定者は受戻権の行使により目的物(利益)を対抗することができる。判例も同様に、弁済期の経過によって譲渡担保権者が目的物を取得するという立場に立つものの、背信的悪意者を評価するさまざまな問題意識がみられる。さらに、判例が帰属清算型の譲渡担保を念頭に置いたうえで、清算金の支払と目的物の明渡請求権の行使が同時履行にあるという立場に立つ。したがって、本問の事実関係においては、債権者が弁済期の経過後に目的不動産を第三者に処分した場合であっても、受戻権の行使により目的物を第三者から取り戻すことができる。●関連問題●本問の事実関係において、Aによる非弁活動が2028年5月15日に行われたが、Bは受領を拒絶し、Aは残債務等を同年5月31日に供託したとする。他方で、Bは、同年5月5日にCに対して本件不動産を処分し、所有権移転登記を同年6月5日に了したとする。この場合において、CからAに対してなされた不動産の明渡請求に対して、Aはどのような反論が可能か。●参考文献●水上敏=「譲渡担保(2)物権」(有斐閣・1995)144頁鹿毛・最判解平成6年度208頁増森・最判解平成21年度(下)1096頁生熊長幸・民商法雑誌135巻2号(2007)101頁道垣内弘人=「譲渡担保(2)物権」(有斐閣・2015)241頁小林明=「譲渡担保」有斐閣(2015)109頁小林明=「譲渡担保」法セミ(有斐閣・2015)128頁林明=「譲渡担保」(有斐閣・2015)198頁