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社外起因のトラブルの再発防止

(1) 対策の意味は「加害者対策」「社外起因のトラブル」というのは社外の人物が加害者となったトラブルのことである。 典型的には誹謗中傷や、デマの流布などである。 最近は、企業が著作権を有するコンテンツをP2Pやウェブサイト、SNSで無断配布するなどケースも増えている。加害者対策の基本は、社内の従業員の非違行為などの再発防止と同様である。 社内において非違行為を放置しておけばそれが繰り返され、あるいは拡大してしまう。 同様に、会社が外部の加害者の加害行為の被害に遭う場合、適切に対処しないと、あるいは放置をしてしまうと、好きなだけ攻撃してもよい対象、つまりサンドバッグのように思われてしまうことすらある。ネットトラブル、誹謗中傷やデマの流布はもちろん著作権侵害であっても、加害者の大部分は、大胆不敵に、明らかに根拠が怪しいデマをおもしろがって、あるいは、多数のアクセスひいては広告収入を目的に行う。 著作権侵害でも、たくさんの人にコンテンツを配布して喜んでもらおうなど、被害者からすればとんでもない理由であったりする。このように加害者のする酷い行為には、たいした問題ではない、大事にはならない、責任追及をされることはまずない、あるいは、そもそも責任追及をされるとは思ってもいない、ひどいものになると、違法であるということすら知らなかった、などというケースが非常に多い。 筆者は、ネットトラブルについて、被害者側の相談を非常に多数扱っている。 先方との交渉や裁判の過程などを踏まえ、投稿(行動)の動機を尋ねることになるが、被害者が(企業)ほとんど「何となく」であり、「おもしろかった」程度である。 また、被害者が企業で泣き寝入りをしていたため、ノーリスクで加害行為を継続して、それが当然であると思っている傾向もある。 このような認識を持たれてしまうことを防ぐには、こちらは、泣き寝入りしていない、適切に調査をする、責任追及をする、そして、それを実施することも大事であるが、行っていることを見せびらかし、誰でも加害者は責任を追及される可能性があること、ネット上のサンドバッグではない、ということを周知することにある。具体的な責任追及の手段や方法、流れについては、前著においても解説したが、発信者情報開示請求をして加害者を特定した上で、責任追及をすることになる。 このについては、「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(プロバイダ責任制限法)」が大幅に改正され、令和4年10月1日から施行されて手続が簡易化された。 また、海外法人については、これまで、外国に裁判文書を送達して証拠などを、かなり費用や時間がかかったが、国内で登記を行うように法務省が指導したこともあり、相当数の海外法人が国内で登記をして備えた。 これにより、米沢や海外への郵送などの必要がなくなり、さらに責任者の特定が容易になった。一方で、見通しが立たなかったり、見通しが外れて失敗した場合は、加害者にその事実、つまりは会社が過ちであると主張した投稿について、裁判所がそうではないと判断したということが知られて、さらなる加害行為を招く可能性があるなどのリスクがある。 これは前著でも解説したとおりであるが、見通しについては、加害者を許せないという気持ちに配慮して、感情的にならないで、じっくりと弁護士と相談することが重要である。加害者への責任追及及び被害の回復が困難である以上は、再発防止、他の加害者への警告(いわば一罰百戒)の意味を期待して責任追及をすることが、これが加害者対策の要点である。(2) 外部への説明、そして「提案」の必要性とコツ情報漏えいなどにおいて社外に説明する内容は基本的に決まっており、再発防止策の報告である。 そこでは、被害者(潜在的なものや、現在と将来の取引先を含む)宛のものであり、陳謝して納得してもらうことが重要になる。 これについては、前著で説明をしたとおりである。本項では、会社側が被害者になったケースについて、より掘り下げて外部への説明の必要性について解説する。まず、獲得目標として、他の加害者が発生することによる再発を防止する、そして関係者への納得感を得る、ということにある。 後者のイメージがつきやすいが、要するに、自社に対して誹謗中傷やデマの流布などを行えば法的な責任追及をするということを予告して知らしめるというものである。(1)で触れたように、加害者の大部分は、自分が責任追及をされるとは思っていないし、そう思っていないからこそ、ネット上で加害行為を行う。 自分が責任追及される可能性を意識してもらえれば、途端に加害行為を行わなくなるものである。 そして、会社側が加害者に対し責任追及をすると決めるかどうかという観点でいえば、勝利は基本的に会社側にある。 違法行為をした以上は、それを証明できれば、賠償責任が肯定されることが通常であるからである。もっとも、このように局所的には(個別のケースでは)「勝つ」といっても、全体として勝つこととは不可能である。 誹謗中傷の被害者というのは、そのような被害に遭うことについて責任はないとしても、原因があることが通常である。 誤解される報いがあったというのはもちろんのこと、単に、事務所の当事者と名前(名称)が似ていたなど、そのようなケースでも原因になる。そうすると、「じつは心許ない」と思い込んだり、勘違いをしたりする人は1人ではない。 誹謗中傷の加害者が1人であるということは非常に稀である。 つまり、複数の加害者を相手にすることになるが、投稿者を調査することも、個別に賠償責任を追及することも、そう簡単にできることではない。 また、個別の賠償金の金額が少ない、実際に加害者が支払可能か、という問題もある。 そうすると、被害を受けた会社側としては、個別に責任追及を徹底的にするとなると、加害者とは「いたちごっこ」になってしまう。 加害者はボタン一発で加害行為ができるが、こちらはそうではない。以上述べたように一個別の加害者との裁判での勝利はできても、全員に対して責任追及をする、被害回復をすることは現実的ではない。 この「いたちごっこ」では、被害者には勝ち目はない。そこで、法的措置をとったことについて、現在、そして将来の被害者候補に効果的に警告することが重要になる。 具体的には、前著でも触れたが、特に、外部からの加害行為への対応に絞ってこれを要約すると次のようするべきである。① 流された誹謗中傷、デマについて徹底的に否定する。② ①について法的な措置をとったことを述べるが、具体的な手続を記載しない。③ 弁護士に依頼している場合は、その連絡先を記載する。④ への情報提供や、謝罪の申し入れを受け付ける。まず、①についてであるが、なるべく概括的に記載することが何よりも大事である。 なぜなら、誹謗中傷の加害者というのは、被害者のことが非常に気になるからである。 目の前の人物に暴力を振るった場合は、その人間が怪我をする、憐れむなど、加害の結果をすぐに視認することができる。 しかしながら、誹謗中傷においては、そうではない。 また、被害者(個人、事業者、法人を問わず)は、被害の実態をあまり明らかにしないので、ますます、加害の結果がわかりにくい。加害者としては、被害者に被害を受けてほしいし、かつ、それを知りたがるものである。 そうである。 すると、①について、加害行為の具体的な内容を特定してしまうと、加害者が「やった! 自分の加害行為が功を奏している」と思ってしまうという問題がある。そこで、できる限り、抽象的に記載するべきである。 たとえば、「ネットにおける弊社の従業員が取引先で脅迫を行ったとの投稿について」という程度にするべきである。 具体的に当事者名、被害品、投稿内容の引用は避けるべきである。また、概括的に記載することで、対象を狭く誤解されてしまうことを防ぐことができる。 加害者に「これだと自分は関係ない」と思われてしまうと、効果がなくなってしまうので、概括的に記載して自分も関係があると思ってもらうことが大事である。次に、②についてであるが、これも①と同様の理由である。 また、あまり法的手段を特定すると、手の内を見せてしまうことになる。 そして、一度具体的な措置を記載すると、その後に同じく具体的に報告する必要が生じてしまい、予断や憶測を招いてしまうこともある。 たとえば、訴えを提起したと公表しておいて結果を公表しないとでると、敗訴したのではないかなどと誤解されてしまうことになる。 できれば「告訴した」と報告したいというものである、和解で合理的な解決を図るなどの手段が制約されてしまうリスクもある。次に、①と③は、これは依頼した弁護士の理解と承諾がもちろん必須であるが、非常に有効な手法である。前著でも本書でも繰り返し指摘しているが、ネットトラブル、特に誹謗中傷やデマの流布の被害回復は極めて困難である。 加害者を特定するのが困難であり、特定しても被害の立証が困難なので賠償金の相場は低額であり、判決を得ても回収ができなければ絵に描いた餅になってしまう。 被害者にとっては三重苦という状況である。それから、被害者がこのように不利であるとすると、加害者側が圧倒的に有利か、全然安泰安心な立場かというと、必ずしもそうではない。筆者は、加害者(請求を受けた時点では、絶対に違法行為をした加害者というわけではない)の弁護も行ってっているが、そのほとんどが個人であり、法律トラブルとは無縁だった人々である。 それだけに、ネット上の投稿を原因として法的措置の対象となり、あるいは、その可能性(認識)を被害者がSNSなどで法的措置を予告することは、最近非常に増えている)しただけでも、非常に不安に陥る。 もちろん、法律トラブルに巻き込まれた市民は、多かれ少なかれ不安な気持ちを抱えているものである。 しかし、自分が加害者として責任を追及されていると、そもそも弁護士に相談すればすむにもかかわらずそれもできず、かといって普段から悩み、迷っていることが多い。 刑事事件の弁護活動が弁護士の仕事であることは理解されているが、賠償請求という民事事件で責任を追及されている人も弁護士の仕事であるということは、それほどは認知されていないようである。徹底的に争えば、ネット上の投稿に対する賠償額は、相当低額に抑えることも可能であるケースが多い。 場合によっては、数十万円から10万円程度にまでなることも珍しくない。 しかし、だからといって民事訴訟の「被告」の立場に立たされることは非常なプレッシャーである。 加えて、「争う」ためには弁護士費用の他に自分の労力など様々なコストを費やすことになる。 被害者からすれば観賞を回復できない非常に厄介な問題ではあるが、加害者からしても、大変な問題であることには変わりはないのである。筆者の経験上、法的措置を受けた場合もちろんのこと、その可能性があると認識したとき、典型的には被害者がSNSなどで法的措置を予告した段階で、加害者が非常な不安を抱えて相談に来ることがしばしばある。 不安で半ば冷静な判断力を失っているケースもあり、まずは落ち着いてもらうことに苦労することも珍しくない。被害者からすれば、これまで好き放題に投稿をしていた、それどころかこちらから攻撃を繰り返しておいて、いざ自分がその攻撃を受けそうになると、急に不安になるというのは、どうにも虫のいい話のように思えるだろう。 ただ、これは被害者からすれば有利に利用できる点である。 非常に不安になっている以上は、話し合いに応じるし、こちらの要求を聞き入れる余地が十分にあるということだからである。加害者の不安の原因は、訴えられてどうなるかわからない、紛争そのものを抱えているということと、もう1つは、賠償金と弁護士費用を合わせて、その合計の金銭的な負担がどれくらいになるか、という点である。 したがって、これら同時に解消するような提案をすれば、被害者の要求に応じてくることが見込まれる。具体的には、③④で記載したように、弁護士への連絡先を記載して、弁護士宛に和解(示談)の申し入れをするように、公に発表して促すというものである。 すなわち、次の内容で合意をすることを提案する。Ⅰ 自分の身元と、自分が行った投稿を明らかにして、投稿の事実を認める。Ⅱ 投稿をした理由について説明する。Ⅲ 投稿について、二度とやらないことを誓約する。Ⅳ 投稿について、謝罪をする。Ⅴ 以上すべてを遵守することを条件として、その他の民事・刑事の責任を当方は一切追及しない。Ⅰについては、誰が何をしたのか、それを把握する必要がある。 今後の対策の参考にするためである。 また、誰であるかわからない、身元を明らかにしないということは、真剣味がないのであるから、遵守が期待できない。 したがって、身元を明らかにすることは、当然に要求するべきである。Ⅱについて、投稿をした理由について、同じ理由から、説明をしてもらうべきである。 もっとも、たいていのケースでは、加害者は被害者、つまり自社との関係にないことが多い。 単に、ネット上で目についたから、何となく、たまたま、ということが多い。 むしゃくしゃしてやった、ストレスがどうなど、そのような理由ですらないことが多い。 みんなで特定の人、会社を非難して(叩いて)、それで一体感や達成感を味わいたいというくらいの動機であることが大部分だからである。 そのため、あまりこだわるところではないが、一応の内容であっても、投稿した理由の説明を求めるべきだろう。また、Ⅲについては、繰り返し述べいていることがあるが、投稿する側とされる側で競争をしても、被害者側に絶対勝ち目はない。 そこで、二度とやらないという誓約をしてもらうことも大事である。 なお、筆者の経験者の弁護の経験上、一度でも責任追及をされ、あるいは、そういった予告をされた場合は、「こんなに怖い、不安な思いをするなら、二度と書き込まない」と思う者が大半である。 ほとんどのケースでは、あえて誓約をさせなくても、それこそ「それといわれても、もうやりません」ということが通常である。Ⅳは、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲの約束を補強するものである。 また、対外的に何らかの発表をするときに、「加害者からは、その責任を認めた上での謝罪を受けた」と主張することができるようになる。 これはVと関わってくるが、金銭的な賠償を求めないことの一番のリスクは、「あれは結局済済の話」(安易に投稿しても)大丈夫だと誤解されてしまうことである。 もちろん、責任追及の可能性もあるというだけで、一般人には非常な負担なので、そこまで安直に考える者はいないだろう。 だが、ひょっとしたらそう思うかもしれないという可能性は、企業としては、なるべく減らしたい。 そのため、このような主張をして加害者が責任を認めたということは、何かの金銭的負担を求められたのでは、と想像してもらう余地を設けておくことも大事である。その上で、Vにおいて、いわば「呼び水」を記載する。 要するに「素直に名乗り出てちゃんと謝るなら許してあげますよ」ということである。 これで名乗り出る人がどれだけ出てくるかであるが、筆者の経験からいえば、少なくないという印象である。 なぜなら、加害者は加害の時点は何も考えていないか、それだからこそ、実際に責任追及をされる可能性が生じた場合は、非常な不安を覚えるからである。現に、筆者の元には、実際に責任追及を受ける前から、被害者が法的措置の予告をした、あるいは、そのような予告すらない場合でも、「ひょっとしたら今後、責任追及をされるかもしれない」といった趣旨の相談が相当数来ている。 そのため、このような正直な申告と引き換えに責任免除を提案するのは、加害者からすれば、責任追及をされることへの根拠のない不安を同時に解消することから、極めて魅力的に映るのである。なお、Vにおいて、請求をしないと対外的に述べてしまうと、結局同じリスクについては、事実に応じての表現を調整することで対応するべきである。 悪質性が高く、とにかく抑止を強くしたい、特に悪質な者については賠償請求も考えているというのであれば、Vにおいて、事案によるが、責任追及しないか、軽減するか、あるいは少なくとも刑事責任は追及しない(民事責任つまり賠償請求する可能性はある)と発表する方法もある。さて、深刻な被害が生じることもあるのに、Vのような「提案」をするのは、あまりに「甘い」のではないか、納得できない、という意見もあるかもしれない。 たしかに、そればそのとおりである。 ただ、これまで説明で思い出したしていただきたいのだが、どのみち、金銭的な被害回復は困難であり、回収可能性も乏しいことが多いという現実がある。 徹底的に責任追及をする、1つの手段ではある。 しかし、相当なコストを費やしても(あるいは、コストを費やせば費やすほど)被害回復は困難になる。 また、本当に故意犯的に、明らかに自社に対して強固な加害意思をもって投稿を繰り返している人物の場合、海外の回線を利用するなど、そもそも特定が極めて困難なケースも多い。 自社が労力や金銭を費やすと、むしろ加害者の思うつぼであるということになってしまいかねない。したがって、説明や誓約など、相手の同意が得られれば実現できることを条件にしてしまうことが合理的である。 遵守を期待する、というのは、裁判所の判決では基本的に得ることのできない内容であり、このように話し合い、合意でこそ実現できる解決である。多くの加害者がこのような広報をすることで申し出、あるいは少なくとも加害行為を止めれば、仮に加害行為を続ける者が残ったとしても、その数はわずかになる。 そうすれば、悪影響はほとんどなくなるし、周りの反応が得られないのにたった1人で誹謗中傷を繰り返すことに飽きてしまうことが多い(違反が得られなくなって、やめてしまうことが多い)。