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不法行為の成立要件

Xは、Yが開設するクリニックで健康診断を受けた際、採血が実施された。Yは採血用の注射針をXの腕に刺し採血を始めたが、Xは針が刺された直後に腕に異常な強い痛みとしびれを感じ、大声で苦痛を訴えた。Yは、Xの大声に驚き、ただちに採血を止め、針を抜いた。Xの穿刺部位は出血で大きく腫れ上がり、Xの腕には強いしびれが現れた。その後、1年にわたってXにはさまざまな処置をして状況改善に努めたが、Xの腕にはしびれの症状が残っており、改善の兆しはない。Xはこの事故に遭遇するまでは、手先の器用さを生かして高収入を得ることのできる職業に従事していたが、この事故のためにそれに従事することが不可能となってしまい、その収入は激減した。Xは、自分に機能障害が生じたのは、Yが採血に際して、Xの腕の神経を傷つけないように適切な部位を選択し、注意深く穿刺・採血すべきであったのにその確認を怠ったため、穿刺に際してXの腕の神経を傷つけ、それがしびれの原因となったと主張し、Yに対し、収入の減収と慰謝料の支払いを求めて、不法行為に基づく損害賠償の支払を求めた。Xの請求は認められるか。[参考判例]① 最判平成8・1・23民集50巻1号1頁② 最判平成13・11・27民集55巻6号1154頁[解説]1. 概説:不法行為に基づく損害賠償請求権の成立要件医療事故に基づく損害賠償を不法行為と構成する場合 (709条以下)、賠償請求する患者側は、その成立要件である、①故意・過失、②権利または法律上保護されるべき利益の侵害、③損害、④因果関係のすべてを証明する必要がある。訴えの提起とその後の利用は、個人開業医である医師に多い。そのための費用は医療機関の設置者であるが通常の医療もある(715条)。なお、医療事故は労働災害との問題となるが、過失の注意義務違反に関しては問題はない。医療訴訟は、身体・生命の侵害が問題となる場合が多い。上記要件のうち①については、一括して同じであるとみることがあるが、より小さな方法を議論の対象として考えるという動きがある。専門知識をもたない被害者側には、①医療関係者の過失、②因果関係の立証は特に大きな障害となりうる。2. 故意・過失民法は過失責任主義を採用し、加害者に少なくとも過失がなければ、損害賠償責任を負わせない。「過失」は、通常ありえないように、社会生活上要求される注意を怠って行動し、たとえ損害が発生したとしても責任を問われることはない、とされている。伝統的には、過失を「結果予見義務とその回避義務」という心理的な「不注意」により心理」にあったかという心理状態を考えられてきたが、今日ではこれを客観化された「予見可能性を前提とした結果回避義務違反」と捉えるのが一般的である。加害者にある行為を行わなかったという結果と結びつきさえすれば過失が認められるかどうかにかかわらず、行為自体を「行為の違法性」に求め、加害者にとって、その結果回避可能性がなかったといえるような特段の事情がある場合にのみ、過失が否定されるにとどまる。医療行為については、社会における医療水準への信頼があるから、生命・身体への危害を生じさせるおそれを常に含み、医療関係者には高度な注意義務が課せられる(最判昭和36・2・16民集15巻2号244頁)。医療事故の場合、医療関係者の過失の有無の判断基準は診療当時のいわゆる臨床医学の実践における医療水準であり(最判昭57・3・30民集36巻3号484頁)、Aが医療水準として注意義務の内容に問題があるか否かを判断し、問題が医療機関の医療水準の遅れの有無の事情を考慮して個別、具体的に決定される(最判平7・6・9民集49巻6号1499頁)。医療水準は、最新・高度な学術的な知見かつ臨床医学で医療関係者に浸透すべき義務であるから、医療行為の裁量に委ねることが多い。それゆえ、医療水準であれば、一般に問題とされることがあるが、これは医師の裁量が問題とされるもので、患者には選択の自由が保障されるべき注意義務とされるべきものである。産業は、経験と知識に圧迫されての穿刺時には適切な危険性を運んで細心の注意を払うべきであったが、いったい何がどうであったのかどうかが重要である。なお、医療行為には、治療の実施前に患者から同意を得るインフォームド・コンセントも取得も重要であり、十分な情報提供の結果として患者から有効な同意を得ないと不法行為が成立する場合がある。たとえ治療が成功したとしても結果如何に関わらず不法行為が認められる。3. 因果関係の証明損害賠償においては、加害行為と結果との間に因果関係が存在することも必要である。因果関係の問題は、加害行為がなかったならば結果もなかったであろうという事実的因果関係があるかという点と、生じた結果のどこまでを賠償させるべきかという法的な評価の2つの点が問題である。医療事故が生じるのは人体であり、必ずしも事故の発生と結果とが単純なケースであるとは限らない。また、医療関係者の関心がすべての生じた出来事を自宅等に置いていた場合には、必要な処置がとられず、さらに、専門書中の存在の判断に必要な情報も残されていないこともある。たとえば、ある症状について診療記録に記載がなかったとしても、症状がなかったことの証明にはならないか、症状に気づいて何もしなかったのかの判断は容易ではない。因果関係の証明についても、過失を追求する患者側に証明責任がある。訴訟上の因果関係の立証は、一点の疑義も許されない自然科学的な証明ではなく、経験則に照らして立証を検討し、特定の事実が特定の結果を招来した関係を是認しうる高度の蓋然性を証明することをいう。その点では、通常人の疑いを差しはさむ程度に真実性の確信をもちうるものであることを必要とし、それで足りるものとされる(最判昭50・10・24民集29巻9号1471頁)。本問の事故とXの後遺障害との因果関係の証明も、これにしたがう。しかし、訴訟における因果関係の証明は、立証するとしても「高度の蓋然性」を立証することも容易ではない。なお、実施されるべきであった医療行為が行われなかったという不作為の場合には、注意義務が行われなかった不作為の患者との死亡との因果関係は、患者が負う当時における死亡であったこと、つまり侵害が注意義務の懈怠がなかったとしてもその死亡の時点を遅らせることができたであろうという蓋然性が立証されれば、患者がその時点後生存し得た利益を、主として得べかりし利益の侵害の算定によって考慮されるべきであると判示されている(最判平11・2・25民集53巻2号285頁)。4. 損害の発生医療事故の場合、被害者は生命や身体に対する重大な損害を被ることが多い。こうした損害が、医療関係者の過失に起因し、それが原因で損害の賠償を認められる場合には、回復されるものである。本問のような、その収入の減収が不法行為によって生じたとすればこれは得べかりし利益であり、損害賠償にこれについても認められる。しかし、医療事故では、もともと疾病や負傷の患者に生じ、不法行為がなくても医療機関に受診すべきであるように、すでに問題が生じている。患者の疾病が生命を脅かすもので、医師がそれに適切な処置をしたことによって延命するが、元の主たる原因が克服されずに当該疾病の終期には患者が死亡したことなど、死亡の結果は医療の過誤なしに医療機関に賠償をすべてさせることはできない。そこでこの場合には、損害賠償額を考慮して、医療関係者の責任を問題とすることもある。最高裁は、医療水準に適合した医療行為が実施されていれば相当程度の可能性があることを前提として、これを賠償として認められる。これを「逸失利益」と呼ぶ。これとは異なり、これとは異なり、これとは異なり、不法行為がなくても、患者が死亡した場合には(最判平12・9・22民集54巻7号2574頁)、この場合とは区別して、患者が死亡したのではなく、重大な後遺障害が残った場合(最判平15・11・11民集57巻10号1649頁)、逸失利益を算定しなければ損害賠償責任はない(最判平17・12・6判時1921号26頁)。[関連問題]Aは、胸部痛を訴えB病院(地方の小規模な私立病院)でがんとの診断をされた。Aの病院の医師Zは、Aに開胸手術を実施したが、高齢で心臓疾患や糖尿病などの持病もあるAには手術は極めて負担が重く、急激な血圧低下などにより手術は途中で中止を余儀なくされた。Aは手術後まもなく死亡した。Aの妻Xは、ZがAの体力等を十分に考慮せずに開胸手術に踏み切ったことは医療水準を著しく下回っていたとして、Aの年齢や全身状態を考えれば、開胸手術ではなく、より負担の軽い腹腔鏡手術を選択すべきであった、B病院が実施できないのであれば大学病院その他の高名な医療機関に転送すべきであったこと、手術に際してはAにその危険性を十分に説明したうえで承諾を得ているとはいえないことをAから相談をうけた、と主張して、不法行為に基づく損害賠償を求めた。Xの主張に対して、Yはどのようなことを反論しうるか、以下の点を意識しつつ検討しなさい。Aの体力的には手術に耐えられるかどうか、手術前の検査でどの程度把握できるか。大がかりな手術である開胸手術がAの予後(術後の経過)でどの程度意味をもつか。Aの手術に対する同意が有効とされるためには、どのような情報が提供されていることが必要か。