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抵当権に基づく明渡請求

A銀行はB会社に対して1億円融資をし、2020年3月1日、B所有の甲建物に抵当権の設定を受け、設定登記を了した。Bが債務不履行に陥ったので、2023年6月1日、Aは甲建物につき抵当権の実行を申し立て、競売手続が開始された。ところが、甲建物を占有する者がいたため、売却手続における買受人が現れず、売却基準価額の見直しがされたが、その後も買受人が見込みが立っていなかった。Aは、BおよびCに対して、いかなる請求をなしうるか、以下の(1)、(2)の場合を分けて考察しなさい。(1) Bが、甲建物を不法占有している場合(2) Bが、2022年5月1日、甲建物をCに、期間5年、賃料月額50万円(不動産の適正賃料は月額300万円であった)、敷金1億円、譲渡・転貸自由の約定で賃貸し、Cが引渡しを受け、現在、甲建物に居住している場合●解説●1. 占有権原としての抵当権伝統的な考え方によれば、非占有担保である抵当権は、目的物の利用価値を設定者に留保して、目的物の交換価値(担保価値)のみを把握する「価値権」であるゆえに、財産処分の効力を引き出すことができる反面、「価値権」から使用・収益はなしえないとされる。ところが、特に昭和50年代以降、執行妨害が横行するようになり、抵当権者は、執行妨害を実力で排除する(自力救済)ほか有効な対抗手段がなかった。多くの下級審裁判例が、執行妨害の実態を踏まえてこれを是正したほか、最高裁は、原則論(建前論)に固執した。最高裁は、占有者の占有権原の有無について、所有者の明渡し請求権を代位行使した所有者によって、所有者の明渡し請求権が認められると解した(民法423条の債権者代位権の規定を参照)。2. 不法占有者の排除参考判例①は、占有者が、権原を有しない占有者(不法占有者)の排除を認めた。その骨子は以下のとおりである。まず、抵当権者は、原則として、抵当不動産の所有者が行うべき不法占有の排除について、代位行使が認められる(民法423条の債権者代位権の規定を参照)。その上で、抵当権者は、抵当不動産の所有者による不法占有の排除が円滑に行われないために、抵当権侵害が継続するような困難な状況があるときは、これを抵当権に対する妨害と評価することができる。その上で、抵当権者は、抵当不動産の所有者による不法占有の排除が円滑に行われないために、抵当権侵害が継続するような困難な状況があるときは、これを抵当権に対する妨害と評価することができる。3. 占有権原の排除小問(2)では、小問(1)のような原状(短期賃借権)に、占有権限を排除することは可能か。参考判例②は、一定の要件のもと、占有権限を認める判決を下した。最高裁は、参考判例②を引用し、抵当権者に対する妨害排除の作用が、抵当権設定登記後の所有者から占有権限の設定を受けて占有する者について、抵当権の実行としての競売手続を妨害するような占有権限を主張することが予定されており、抵当権の実行としての競売手続を妨害するような占有権限の主張を認める判示をしている。4. 抵当権者の占有権原の取得と利用権の調整判例法理を整理しておこう。最高裁は、抵当権者が占有権原を支配する基礎となる交換価値の実現が困難となることを、第三者の交換価値(物権)に対する妨害状態(物権)であるとみている。●関連問題●本問において、Bが2019年2月25日、甲建物をCに、期間5年、賃料月額50万円、敷金1億円、譲渡・転貸自由の約定で賃貸し、Cが引渡しを受け、現在、甲建物に居住している場合、Aは、BまたはCにどのような請求をなしうるか。●参考文献●松岡久和・百選Ⅰ(第5版)(2001)178頁田高寛・百選Ⅰ 180頁