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債権者代位権

Aは歩行中にBの運転する自転車にぶつかられて転倒し、A所有の衣服が汚損する事故が起こった。A・B間で治療費や慰謝料、示談金としてAに対してBが800万円の賠償を支払うことで、和解が成立した。他方、個人事業主として工務店の営業をしているBは、常連の小売業者であるCに対し1000万円の売買代金債権を有していた。ところが、Bの製品について、世間に広く信頼を裏切るような事態が発覚して信用が地に落ちたため、CもBとの取引を打ち切った。このため、Bの経営は悪化して、CもBからの取立てを断念して債権は事実上焦げ付いた。その後、上記のようなBの窮状に関するニュースをインターネット等で知ったAは、BがCに対して有する売買代金債権について、AがBに対して上記和解金の支払を求めるため、Bは、「手元不如意な場合はCから回収してもらえれば自分の債権の全額を支払うので、そこから自由に取立ててもらってかまわない」と述べた。(1) AはCから取り立てるため、どのような手段をとることができ、AはBに代わって、どのような事実を主張する必要があるか。(2) (1)の手段に際して、Aの事実を証明する必要がある。(3) AがCに対する訴訟を提起した後、Bは確実な債権取立てをしてもらうべく、Cに発注元が同じであるDから仕事を紹介してもらい、DはCに発注元が同じであるために、CがDに発注した建設において代物弁済による納品では満足できないので、それはAに支払うようにと主張した。しかし、Aはこれによっても不足が生じると、Aは、Bに破産手続開始決定があり、Bの破産管財人Eが、Aの請求を否認した。Aが支払を拒むのに、どのような主張が可能か。[参考判例](1) 最判昭和40・10・12民集19巻7号1777頁(2) 大判昭和10・3・12民集14巻482頁(3) 大判昭和14・5・16民集18巻5号557頁[解説]1 債権者代位権の意義債権の効力として、債権者が債務者の財産を履行しない場合に、債権者は債務に対して請求し、それを強制する効力が認められている。ただ、債務者の消極財産(債務)の行使について債権者が関与することは原則としてできないとされる(債務者の財産管理権の尊重、特定財産の給付は可能であっても、債務者の無資力等の状態にありながら、自己の債権の行使を放置し、結果として債権者の権利の保全が図られないことは相当とはいえない)。そこで、民法は、債権者代位権の制度を用意し、そのような場合に例外的に債務者の債権行使に債権者が介入し、債務者に代わって自ら債権を行使することを認めている(本来の債権者代位権)。さらに、このような金銭債権の保全をこえ、債務者が有する債権の実現を図るため、当該債権と密接な関連を有する債務者の債権を債権者に代位行使することも判例上認められてきた。たとえば、ある不動産に関する債務者の登記請求権を債権者に代位行使する場合や、ある不動産に係る債務者の債権を実現するため、当該不動産を占有する者に対する所有者の妨害排除請求権を代位行使するなどである(転用型の債権者代位権)。そして、このような利用形態は改正民法によって一部明文化され、上記の登記請求権の転用型は規定された(423条の7)。ただ、登記請求権と観念されてきた転用型の一般原則の射程の問題を検討する。以下では、本問に即して、本来の債権者代位権、転用型の債権者代位権のいくつかの法律問題を検討する。2 債権者代位権制度の機能・保全執行制度との関係本来の債権者代位権の行使の場合において、債権者は債務者が第三債務者(第三債務者)に対して債権を有しているときに、債務者の金銭債権についてはどのような方法があるかを検討する必要がある。これについては、大きく2つの方法が考えられる。1つは、民事保全法に基づき、債務者に対して債務者の財産についての仮差押えの申立てをし、第三債務者に対しては当該債権執行を禁止する旨の仮差押命令がある。そして、そのうえで、債務者に対して給付訴訟を提起して債務名義を取得した後、民事執行法に基づき、その確定判決に基づき債務者の第三債務者に対する債権を差し押さえる方法である(その債権、当該債務あるいは転付命令〔一種の代物弁済〕によって自己の債権を終局的に実現することになる)。このような債務者の財産プロセスの予見の確実性を担保する方法も考えられる。Aは、BのCに対する売買代金債権を仮差押えしておけば、Bに対する800万円の判決を前提として転付命令の申立てあれば債権者Bは直接債務者に簡単な請求で第三債務者の資産を差し押さえ、その債権の取立てが代えって第三債務者に直接行使することが考えられる。もう1つの方法が債権者代位権を活用するものである。すなわち、債権者は、判例(後掲参考判例)に基づき、債務者の第三債務者に対する債権(被代位権利)を行使して、第三債務者に直接取立てることが認められ(4参照)、参考判例②のように債務者に代わって金銭債権を実現するため、あえて第三債務者に対し訴訟を提起して債務名義を取得し、その債権について取立て訴訟を提起したうえで強制執行をしても、その方法として債務者の債権(被代位債権)を債権者に代位して行使し、債権者(A)が自ら給付を受けることは何ら妨げるところではないと解されている。Aは自ら訴訟を提起して、債務者の800万円(423条の2参照)の代金債権の取立てを試み、その判決に基づいて直接800万円の弁済を受領し、Bに対する800万円の和解金債権と相殺することによって、債権回収を図ることができる。この2つの方法はいっかつの差があり、債権者代位権に利益が認められる部分がある。第1に、債権者代位権による債務名義が不要である。第2に、債務者代位権によって優先弁済が優先可能となる。第3に、債務者による取立て、債務者による処分、その他債権者による被代位権利の取扱いを制限するような手続規定という手続が不要となる。第4に、債権者代位権は費用も少なく、債権者にとっては、より少額の訴訟費用の負担ですむ(裁判外・裁判上、いずれも)。実際に実務で機能を果たしてきたことは大きな利点である。債権者代位権によって優先弁済が優先可能となる。債権者による取立て、債務者による処分が可能であり、その他債権者による被代位権利の取扱いを制限するような手続規定を前提に、債務者による取立て、債務者による処分も可能である。その結果、仮に他の債権者の存在に気づいたとしても、差押えと相殺による回収権限を第1順位にすれば、代位権者が優先権を得る結果となる。他方、民事執行による場合は、他の債権者が差押えに参加する配当参加(配当参加は期日指定の同時回収が原則)が可能であり、それが確定するまでには他の債権者の加入がありうる(民執159条3項)。第三債務者の無資力リスクを債権者が負担しなければならない。両者の手続は以上のような差異があり、債権者代位権に分があることは明らかである。かような背景から、ドイツ法的な保全執行制度とフランス法的な債権者代位権制度を融合させた現行法の「選択」主義であるとの説明もある(三ヶ月章「差し押えと証明」参照)。その後、今回の改正の過程では、本来の債権者代位権制度の存続をめぐって議論の対象となり、少なくとも上記の優位な点を制限する提案がされたが、結局採用されなかった。相殺による回収を制限する提案がなされたが、結局採用されなかった。債権者代位権で弁済が十分可能な場合に、他の債権者の協力を得られる機会が奪われる場合があることは問題だが、優先権がない債権者間の分配の機会をなくすこと、差押えによる参加の機会を与えるべきとの意見が多数を占めた。差押えは無意味である場合が多いことなども理由に、被代位権利の行使について債権者の処分の自由が禁止される旨の判例法理は否定されたため (4参照)。や第三債務者の債権者への弁済の可能性があるような事案では、実際上、仮差押えが不奏功に終わり、履行確保が困難となることがある。以上から、判例は間接強制をルートと履行確保を図るルートの選択に悩み、具体的事情いかんによってはどちらのルートをとるかを判断する必要がある。具体的には、本問においては、Aの被保全債権が優先回収されるとは限らず、債権者Bへの債権の回収不能のリスクが大いに伴うと判断される場合、優先回収をあきらめ、債権者Dの協力を得てBに請求することで強制執行を考えるべきである(参考判例②)。他方、小問⑵では、Aは複数のBに対し、債務名義をえてCから800万円の支払を受けることは可能だが、Bの資産状況が非常に悪化しているため、AがCから825万円の支払を受けるのは事実上困難である。他方で、Bに対するAの債権の回収は直接の債務の履行の確保に有効に寄与しうる(ただし、債権者による相殺権の行使(71条参照)が別途あることには注意を要する)。3 債権者代位権の要件債権者代位権の行使要件について、「自己の債権を保全するため必要があるとき」にその行使が可能とされる(423条1項本文)。単に主観的な保全目的だけでは不十分で、客観的な必要性があることが要求される。債権者無資力の要件が明記されたが、これは責任財産の保全の観点から当然の要件とされてきた(参考判例①)。「債務者がその資力で十分でない場合」に代位権が使えることを2017年改正民法は423条の2として明らかにした。判例もこれを肯定しており、無資力性の要件の要否をめぐる議論の蓄積があったが、債権者無資力の必要性について、責任財産の保全という要件として、明文の規定を設けることになった。この要件が充足されるとなると、無資力状態にあることを債権者が立証する必要があることになるところ、無資力(支払不能)一般の解釈に服せしめるのは妥当ではない。ただ、訴訟手続の通常事実では改正後も維持されると解されよう。事実上、被代位権利(債務者保護の対象となる「債務者に属する権利」423条1項本文)の価値では、一身専属権のほか「差押えを禁じられた権利」(代位行使が許されない(同項ただし書))、たとえば、年金受給権(同条4項など)等は債務者の責任財産を構成しないので、代位権行使の対象外となる。債権者代位権を行使した結果、本来差押えによる回収ができないような財産について、代位・相殺によって債権の回収を図ることは不当な抜け穴であるからである。他方、被保全債権関係(債権者代位権の根拠となる権利)の要件として、第1に、原則弁済期の到来(423条2項本文)について、裁判上の代位の制度(非訟旧85条以下)を廃止し、保存行為の場合だけに行使を限定している(423条2項ただし書)。これは、裁判上の代位は利用率が著しく低く、保存行為の場合、期限未到来の被保全債権も一般的に対象となる民事保全制度(民保20条2項参照)による保全が可能であることによる。ただし、転用型では裁判上の代位の利用があったようであり、期限未到来の場合の権利の行使については引き続き解釈に委ねられ、この要件は転用型には及ばないとの解釈の余地もあるであろう。第2に、強制執行により実現できない債権に基づく代位は許されない(423条3項)。この制度が債権の円滑な回収のための制度であることに鑑み、執行力・強制力のない債権(不執行の合意がある債権やいわゆる自然債務)にまで被保全債権としてその効力を及ぼすとの見解を明確化したものである。以上から、小問⑴後段では、以上のような要件を主張する必要があることになるが、本問では特にBの無資力の立証が問題となると考えられる。Aとしては、Bの財産状態が悪化して債務の履行が困難になっている状況についてたとえば、Bが手元に現金がない状況を自認しているのであれば、その陳述等を証拠として、立証していくことになろう。4 債権者代位権の行使代位権行使の方法について、被代位権が金銭の支払または動産の引渡しである場合には、自己に対する支払・引渡しを求めることができる(423条の3前段)。また、そのような支払・引渡しによって被代位権利が消滅する(同旨後段)。前段の趣旨は判例(参考判例①)の明文化であり、そのような直接給付が認められないと、債務者が給付を受領しないときには債権保全が全うできないことになり、債権者代位権の制度を没却することを根拠とする。立案段階では、債務者に対する給付のみを容認し、債務者による直接の給付請求を認めない旨の原案も検討された。これは債権回収機能を否定する最もドラスティックな提案であったが、代位権行使の結果の帰属と同様、債権者が受領した場合にも債務者の責任財産に帰属し、相当ではないとされた。後段では、以上のような直接の支払または引渡請求権の行使を受けて、その支払等による被代位権利に係る債務の消滅を対抗しうる。そして、訴えにより債権者代位権を行使する場合、代位権者は債権者代位訴訟の提起を遅滞なく通知をしなければならない(423条の6)。債務者が訴訟告知という民事訴訟法上の規定を介して債務者に対して判決効が及ぶと解されている(民訴115条1項2号)。しかし、債務者に対して訴訟係属が知らされないにもかかわらず、代位権者敗訴の既判力が及ぶことに対しては従来から民事訴訟法理論において根強く批判も、債権者代位訴訟の提起を被告に通知せず、代位権者(被告)の訴訟追行を放置すると(民事訴訟)など多くの議論を呼んできた(議論の錯綜により、旧民法時代の「主観的訴訟担当」 伊藤眞=山本和彦『民事訴訟法の争点』(有斐閣、2009)324頁以下など参照)。本改正は民事訴訟法における様々な提案を立法により解決するものではなく、あくまでも民事訴訟の特殊性ゆえに債権者代位権におけるもののみを解決するものである。また、債権者代位権の行使があったのち、債務者自らが第三者に対して取立てその他処分をすることは妨げられない(423条の5前段)。すなわち、代位権が行使されたとき、債務者が通知を受けたあと「不当な処分」行為等が禁止される(参考判例③)、債務者から第三者に対して訴訟を提起することは認められる。もちろん、債務者が代位権の行使に悪意ではないかぎりその効力を否定できないのであり、債務者の処分権を奪うことによってその地位を不当に害することになるからである。その結果、債権者代位権行使と債務者による直接処分が衝突する場合もある。その場合には、債権者代位権を行使する債権者はその被代位権利を仮に差し押さえることもできるし、譲渡や免除等の処分も自由に行える。そのため債権者が債務者の財産を管理することは許されず、別途、所定の要件の下に詐害行為取消権を行使することになる。て、第三債務者も被代位権利につき債務者に対して履行することを妨げられない(同旨後段)。第三債務者は有効な代位権行使かどうかを的確に判断できる保障はなく、判断を誤った場合の二重払のリスクまで債務者に負担させることは不当であり、履行禁止という効果を債務者に帰属させる等の申立てをすべきこととなる。以上から、小問⑵では、BのDに対する債権譲渡は民法の上下では有効であり、Cに対するBの責任財産ではBの責任財産ではなくなるので、Cの抗弁は正当なものとされ、Aの請求は棄却されることとなる。[発問](1) AはBに対して1000万円の売掛金債権を有していたが、Aは当該債権の取立てを怠っており、このままではX年X月X日に消滅時効期間が経過してしまう。この場合、Aに代位するBは、Cに対してX年X月X日を履行期とする1000万円の損害賠償債権を有するほか、債権者代位権を行使して、上記売掛金債権を取り立てることはできるか。(2) AはBに対して1000万円の売掛金債権を有していたところ、Cに対する1000万円の売掛金債権を有すると主張するBが債権者代位権を行使して、上記売掛金債権の支払請求訴訟を提起した。Cは、BのAに対する債権はすでに弁済済みであると主張している。上記訴訟は自己の債権の回収に充てたいと考えている。この場合、Dはどのような対応をとるべきか。[参考文献]潮見佳男/山本和彦「債権者代位権」NBL1047号(2015) 42頁(山本和彦)