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解除と原状回復・損害賠償

Aは、建設用機械の賃貸業を営み、そのための建設用機械を数か所所有している。Aは、2021年4月2日に、そのうちのフォークリフト1台(以下、「甲」という)の保管を、月額保管料5万円でBに依頼し、甲を引き渡した。その後、AとBは、甲をCに、月額保管料5万円で保管している間はいつでも賃貸すことは考えていないけれども、手軽に貸せるようなことがあれば、いつでもCに甲を賃貸することを準備していた。甲の保管委託は、書面が作成されていない。2021年8月15日に、Bは、甲を自己の所有物であるとして、建設用地全体を代金1000万円で売却し、同日、甲をCに引き渡した。それ以降、Cは、建設機械で甲を使用した。Cは、Aが甲の所有者であることを知らなかった。2022年9月上旬、AがBに対して甲の保管委託の事実が判明したこと、甲の引渡しを求めたところ、B・C間での甲の売買の事実が判明した。Aからの問合せを受けたCは、この事実を認めて、同年9月15日に、Bに対し、甲の売買契約を解除するとの意思を表示した。そして、Cは、同日、甲をAに引き渡した。同日、2022年9月30日である。甲には、Cが、過失なく、運転中に取り付けたドライブレコーダー(以下、「乙」という)を付けていて、乙は、現在も甲に付けられたままである。乙の現在価格は20万円である(購入価格も同額であった)。また、甲には、2021年4月2日に存在していなかった傷がついていた。この傷は、少なくとも40万円を要することが、建設業者からの見積もりにより示されている。Aが、同日甲と同種のフォークリフトを調達するには、最低575万円かかる。AがBに対して甲の保管委託契約に基づいて、月額50万円の損害賠償を請求している。これは、近時の同種業者が甲と同型のフォークリフトを調達するときの平均的な調達額である25万円よりは高額である。以上の事実を前提として、以下の各設問の当否を検討しなさい。なお、過失相殺は考慮外とする。Aは、2021年8月15日から2022年9月15日までの間の甲の賃料相当額である450万円を失ったようなものである。(2) Cは、Bに対して、売買代金1000万円から乙の価額と甲の損傷の3パーセントに上る自動車の損害賠償額を控除して、Bに支払う。(3) 2021年8月15日から2022年9月15日までの間の甲の賃料相当額である375万円の支払をCに対して請求できると主張して、代金返還請求をこの請求債権と相殺して処理し、残額を返還するとの意思表示をしている。(4) Aは、BおよびCに対して、甲の修理費用40万円の支払を求めている。● 参考判例 ●① 大判昭和11・5・11民集15巻830号1頁② 最判昭和51・2・13民集30巻1号1頁● 解説 ●1 本問全体の構造本問では、A・B間で返還時期の定めのない保管契約(寄託契約)が締結され、A・B間で目的物の引渡しがされた後に、B・C間では特定物(甲)の売買契約が締結され(555条)、それがその当事者に基づいて目的物の引渡しがされている。寄託は、いつでも寄託物の返還を寄託者に対してすることができるところ(662条1項)、本問では、AはBに対して甲の返還請求をしている。また、B・C間の売買契約は、他人物売買(他人の権利を売買の目的とした場合は、この売買契約を解除している。これは、売買の目的物である甲の所有者であるAから甲の所有権に基づく返還請求(民法上の返還請求は伝統的に「物権」といわれる)を受けたBが、Cに対して債務不履行(542条1項1号)を理由に契約の解除を求めている。2 寄託者からの賃料・使用利益相当額の支払請求小問(1)では、AがBに対して、Cが甲を使用していた期間中の甲の賃料相当額の支払を求めている。これは、他人の所有物を権限なく使用されたことを理由とする不当利得(不法行為)の返還請求をしたものと考えられる。もっとも、Cは、Bが甲に対して占有権原を理由とする支払請求をすることができるのであり、BがAに代わって甲の客観的利益を領収した、すなわち、利益相当額である。小問(1)は、近隣の同種業者が甲と同型のフォークリフトを賃貸するときの平均的な賃料を基準に算定された375万円の請求を前提とするならばCは、甲の不法な占有によってAに損害を与えたとはいえない。また、本問では、Aは任意に顧客と契約を結んで甲を貸し出す機会が失われたわけではないから、Aは、任意にCに支払をうけであろう賃料相当額450万円をCに返還請求することはできない。しかし、本問では、Aの客観的利益侵害額であり、平均的賃料相当額である375万円とする。Aは、Cに対して乙の支払を請求することができるか。できない。Cは、契約締結後も、Aから所有権に基づく甲の返還請求をうけるまでの間、甲がAの所有であることを知らず、甲がBの所有であると信じて甲の引渡しを受けた。したがって、いわゆる、Cは善意の占有者であるところ、善意の占有者は、その物の使用利益を自ら消費することができる(民法189条の善意占有と190条1項4号1項)。AがCに、Aからの不当利得返還請求に対して、Cが使用したことによる損害を主張・立証することで、その返還を拒否することができる。3 他人物売買のゆるやかな使用利益相当額の支払請求小問(2)では、買主Cが、売主Bの債務不履行を理由として売買契約を解除した後の原状回復の関係が問題となっている。買主Cに対して支払った代金の返還を求めるものである。民法545条本文に基づいて原状回復が原則として要請されるものであって、CはBに対して乙を引渡す義務の不履行であるとしてこれを返還請求権。B・C間の売買契約に基づいて甲の引渡しをうけて以後、Cが甲を使用したことによる利益相当額の支払をBがしたものであること、B・C間の契約が有効に存続していた期間の使用料相当額の利益である。すなわち、契約の解除が有効になされたか否かにかかわらず契約の有効性を前提と考える。いわゆる解除の双務契約的な関係に立つ。解除権の行使の有無にかかわらず、両当事者の債務は消滅する。他人物売買の利益相当額について、学説には見解がみられる。民法は、契約の目的を達成するために必要な行為をすることが定められており、このような規定を設けることで、この結果を導くことができる(この通説がとった立場を前提として、契約の解除の場面は民法545条3項との関係で利益の返還は189条・190条の適用または類推適用によって処理すべきものであって、契約関係の精算は著しく複雑化するものの、今回の信頼関係の清算としてみるのが相当との見解もある)。しかし、問題は、他人物売買の処理の仕方に、売買契約が解除されたときに、この考え方を採り入れることにより、売主が買主に対して使用利益相当額の支払を求めることができるか否かという点にある。というのも、売主による目的物の引渡しから解除までの間であっても、目的物の使用利益は、所有権限のない売主に帰属するものではなく、その物の所有者に帰属するものであるから、売主は、この使用利益相当額を真実の権利者に対して返還請求することができないのではないかとも考えられるからである。使用利益相当額は目的物の使用価値の償還をその所有者に伝えることにより調整されるべきであると考える。このように考えれば、所有権者が問題として処理する費用がCに生じるのである。A・B間での使用利益相当額返還義務は引渡しの時点に遡って消滅したと解すべきである。AとCの間で、しかも、民法190条の善意占有により償還されるべき費用であるとしても、そして、その対価関係に立つものが、償還されない物権ではない。他人物売買主は、目的物の使用利益を享受し、その対価関係として、対価を支払うことで生じた売買代金1000万円をBに返還しなければならないということになる。さらに、民法545条により、代金1000万円を返還しなければならない。の契約は、当事者間でも契約の精算の枠組みの中で、すなわち、契約に基づいて行われた給付・反対給付の精算の中で処理することができると考えることもできる。他人物売買の使用利益の返還義務を契約の解除の際、すなわち、他人物売買の精算として捉えることで、他人の物の売買であっても、目的物の給付を契約当事者として、相手方に対して返還請求することができると考える見方もある(なお、売主に対して返還された目的物所有権が所有者に引き渡されることで精算が完了するとみるか否かは、この問題に関係する)。この場合は、小問(2)は、小問(1)の契約解除によって、つまり、CがBに対して引き渡した甲について、使用利益相当額の返還を請求することができることになる(CがBに対して代金1000万円を返還した後の請求をすることができるか)。甲の所有者についてのCの占有に関係なく、BとCに対して、使用利益相当額の返還を請求することができることになる。使用利益相当額は善意占有を認めているが、この結論を正当化するためには、上記の使用利益返還請求権を対象とする目的物の引渡の対価である契約の対価関係が問題となる(なお、学説の中には、目的物の使用利益の引渡請求は、真実の所有者が善意の占有者による使用利益の回復の余地がない場合に限って認められるべきだと説き、本問のように返還請求の場面に限って、対価関係が問題になるといった説もある)。4 契約目的物に実施した損害(特約)の賠償請求小問(3)では、売買契約の目的物であり、かつ、Aの所有物である甲に対して加えられた損害の回復を目的とする損害(原状回復)が問題になっている。甲の所有者であるAは、損傷を加えたCを被告として、不法行為(709条)に基づく損害賠償を請求することができる。B・Aのいずれが損害を被ったのか不明との間、B・Cのほかに加害者はいないことを前提のうえで、BとCに対して、同様の地位(加害者が不明の場合)に帰属して、連帯して賠償責任を追及することができる。このとき、自己の行為と損害との間に因果関係が存しないことは、B・Cが抗弁・立証責任を負う。AがCを相手方にして、所有権侵害の不法行為を理由に、外観に基づき信頼保護を選択することができることになることは、いうまでもない。他方、Aは、Bに対して、寄託契約に基づき、受寄者であるBの保護義務違反、すなわち、寄託者である甲の所有権を侵害しないように注意して保管すべき義務の違反を理由に、損害賠償を請求することができる。ただし、このように変動に至る前に具体的な保管の状態を、甲の所有権を侵害しないようにどのように注意を尽くして保管が契約上で義務づけられていたのかということを、Aが主張・立証しなければならない。Bが故意に信じて甲を売却したとの主張・立証をしなければならない。Aは、その主張の当否を判断して、Aの主張・立証をしなければならない。甲の保管は、目的物を自己の財産におけるのと同一の注意をもって保管すべきである(659条)、Bは保管契約の目的物の滅失・毀損の危険を負担すべき場合であり、かつ、Bの所有の自転車への損害にもとづき返還すべきものであるとみるべきである。B・C間の売買は、保護義務を理由として、保管契約を締結して、Aに対して保護義務を負う。B・C間の売買は、保護義務を理由として、Aに対して保護義務を負う。B・C間の売買は、保管契約を締結して、Aに対して、保護義務を負う。A・B間の契約で定められたとおりに、Aは、Aに対して保管義務を負う。A・B間の契約で定められたとおりに、Aは、Bに対して保管義務を負う。A・B間の契約で定められたとおりに、Aは、Bに対して保管義務を負う。A・B間の契約で定められたとおりに、Aは、Bに対して保管義務を負う。A・B間の契約で定められたとおりに、Aは、Bに対して保管義務を負う。設問解説(1) 本問において、Cが売買契約を解除したものの、甲をいまだ返還せず、その使用を続けていたとしたら、Aは、Cに対していかなる請求をすることができるか。また、Bは、Cに対していかなる請求をすることができるか。いずれについても、想定されるCからの反論を踏まえて、その当否を検討しなさい。(2) 本問において、Cが乙の使用利益相当額として375万円をBに支払った場合、この375万円をめぐるA・B間の法律関係はどのようになるか。(3) 本問において、Cが乙の使用利益相当額として375万円をAに支払った場合、Bは、その後に、Cに対して使用利益相当額として375万円を請求することができるか。● 参考文書 ●渡邊裕『新契約法Ⅰ』(信山社、2021) 109頁/澤井裕『契約法』227頁