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団体の法律関係

甲団地管理組合(以下、「甲」という)は、都市郊外部に所在する10棟の区分所有建物(各棟の住戸数は100戸)の区分所有者全員によって構成される団体であり、その敷地をその区分所有者全員で共有している。その敷地内には、甲の区分所有者から構成され、甲の共有所有者の有志5人(いずれもテニスのコーチを有する)は、テニスを通じて入会者相互の親睦を深める目的で「テニスクラブ乙」(以下、「乙」という)を設立した。その規約には、次のような各条項がある。「乙は、Aら5名を会員(定員5名)とし、その他の入会者(2万円の入会金を支払って得ることができるが、A、入会者は年会費1万円を支払う)を準会員とする。準会員は、定期的に会員よりテニスの指導を受けることができる」「会員は、10万円を1口として2口以上の出資を支払わなければならない」「会員は、出資金は、退会の際求められたときには、出資金の額に応じて返還する」「会員は、死亡のほかは、会員(当該会員を除く)で構成される役員会で除名されたときにその地位を退会する場合でなければ退会できない」「準会員はいつでも退会できるが、入会金および年会費は返還されない」Aは、各自、10口ずつ出資した(その後の出資金の追加はない)。乙は、会員の中に有名な元プロテニスプレイヤーがいることもあり、現在、準会員は100名を超えて、その純財産額は300万円にもなっている。他方、甲には、区分所有者全員と区分所有者からの推薦人が構成員となり、甲における「丙町内会自治会」(以下、「丙」という)が設立され、丙は、周辺の町内会と連携して防犯・防災活動等を行い、また、夏祭りを開催している。(1) Aは、乙に対して、退会する意思を表示し、出資金の額に応じた返還を求めることができるか。分に応じた乙の純財産額300万円のうち60万円の返還を請求した。乙は、Aの退会の意思表示および返還請求を拒絶した。Aの同意意思表示および同請求は認められるか。(2) 甲および丙の構成員であるBは、甲および丙に対し、退会を請求することができるか。(3) 丙の構成員であるCは、丙の会長Dが丙の財産を横領したとして、Dに対し、損害賠償として横領額100万円を丙に支払うよう請求した。Cの請求は認められるか。[参考判例]① 最判平11・2・23民集53巻2号193頁② 最判平22・4・8民集64巻3号609頁③ 最判平17・4・26時1897号10頁④ 東京地判平24・6・8判時2163号58頁[解説]1 団体の諸形態(1) 法人・権利能力なき社団・組合本問で述べたように、人の集団である団体には大別して法人(社団法人)と組合があるが、実際上はどちらに属するかが明確でないものもあり、また、どちらにも属しないと思われるものもある。本問の甲のような管理組合は、後述のように、建物の区分所有等に関する法律(以下、「区分所有法」という)によって認められる団体(区分所有法3条・65条)であり、権利能力なき社団とされるが、場合によっては民法上の組合と解されることもあり、また、同法47条に定める手続を経ると法人(管理組合法人)となる。本問のテニスクラブであるが、Xら5名が出資をして共同の事業を営むことを目的とすることによって設立されているので、この5名からなる民法上の組合(667条)と解することができるが、準会員を含む組織全体については、場合によっては権利能力なき社団と解されることもあろう。また、仮にXら5名の出資を伴わず、また、入会についても明確な手続がないような単なるテニス同好者の集まりである場合には、団体とはいえないであろう。本問の丙のような自治会は、その出資の有無や規模(構成員数)等により民法上の組合と解されたり、権利能力なき社団と解されたりする(法人となる場合もある)。本問の丙は、後述のように後者の権利能力なき社団と解される。参考判例③の事案も、本問の丙のような自治会である。(2) 管理組合(区分所有者の団体)と自治会本問で注意を要するのは、本問の甲のような区分所有者の団体と丙のような構成員が重なる団体である。甲については、区分所有者の団体であるので、その構成員と甲との間の構成員となる(区分所有法3条・65条)が、丙については、構成員の資格に関しては規約等で決定され、また、入会や退会は基本的に任意である。参考判例③は、権利能力なき社団としての町内会費の性質について、それは強制加入団体ではなく、会員はいつでも一方的な意思表示によって退会することができ、退会後は自治会費の支払義務は負わないとした。以上から、小問2については、区分所有者である限り甲を退会することはできないが、丙に対しては任意に退会を請求することができる。2 区分所有者の団体(1) 管理組合の法的性格本問の甲のような管理組合は、区分所有法により当然に認められる団体である(区分所有法3条・65条)。なお、マンションの管理の円滑化を推進する法律では、区分所有法3条でいう団体を、一般の呼称に従って「管理組合」という(マンション管理適正化法2条3号)。本問でもこの団体を「管理組合」という。管理組合は、その実態により、前述のように一般的には権利能力なき社団と解されているが、場合によっては民法上の組合と解されることもあり、区分所有者数が少なく、建物等の管理について、集会の決議によることなく、また、規約が存在しないような場合にはこのようにも解される(区分所有法3条は、集会の開催、規約の設定または管理者の選任を義務付けているわけではない)。管理組合においては、管理者(区分所有法25条1項)が、その職務に関し、区分所有者を代理する(同法26条2項)。ところで、管理組合法人となった場合には、理事が置かれ、理事が管理組合法人を代表する(同法49条1項・2項)が、他の法人の理事とは異なり、管理組合法人は、その事務に関し、管理者(同法47条6項)、そして、管理組合における所有者(一般的に当該管理者の定める理事長を管理者としている)がその職務の範囲において管理者の定めた規定に基づいて区分所有者がその責めに任ずる(同法29条)。この間、管理組合法人は、管理組合法人の財産をもってその債務を完済することができないときは、区分所有者がその債務の弁済の責めに任ずる(同法32条1項)。(2) 団地管理組合団地規模の区分所有者は、各区分所有建物の管理のための団体(「個別管理組合」)を当然に構成するが(区分所有法3条)、敷地やその附属施設を全員の共有であるときには、敷地の管理のための団体(「団地管理組合」)を当然に構成する(同法65条)。甲は、このような団体に当たる。そして、その共有(団地共有)の特に定めることによって、敷地だけでなく各棟の区分所有建物も団地全体で管理することができる(同法68条2項)。たとえば定期的な大規模修繕工事を行う場合に、このようにしておけば、団地全体で計画的にその実施が可能となる。3 団体の財産関係と財産の清算1(2)で述べたように丙のような自治会(権利能力なき社団)においては、入会と退会は基本的に任意である。社団法人(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律。以下、「一般法人法」という)は、その趣旨の規定を置いている(一般法人法28条)。そして、社団法人およびその会員の合意(権利能力なき社団である場合)、ならびに甲のような管理組合(権利能力なき社団である場合)においては、その構成員が当該団体に対して活動のために支払った金銭は、当該団体に帰属し構成員の共有にはならない。したがって、契約に別段の定めがない限り、構成員が脱退時に返還を求めることはできない(関連問題1参照)。それでは、小問1で問うているように乙の場合には、組合に関しては、脱退は自由か。脱退時に金銭の返還は認められるのか。(1) 組合からの脱退「テニスクラブ乙」は、前掲の規約から組合と解することができる(667条1項)。これは、会員5名から独立した別個の団体ではない。乙については、組合員には任意に脱退の自由があるか。乙については、規約において組合の存続期間を定めていないとみられるので、組合員は、原則としていつでも脱退することができる(678条1項)。ただし、契約に別段の定めがある場合や、無断に脱退を認めると組合に不利な時期に脱退することになるとの問題がある。無制限に脱退を認めると、出資金の払戻による組合の財産の減少やコーチの不足を招くことによって、乙組合の存続を危うくするという懸念もあると思われる。参考判例①は、民法678条にいう「やむを得ない事由」がある場合に組合からの脱退ができる旨を規定しており、この点、組合員の自由の尊重や公平の観点から慎重に法解釈を行うべきである。この場合すると、Aは、やむを得ない事由がある場合にはただちに脱退するのではなく、組合に不利な時期でなければ、除斥の相手方である乙に一方的な意思表示で退会することができると解することができる。(2) 持分の払戻し組合については、各組合員に対する損益分配が予定されており(674条)、また、各組合員の持分は、組合の存続中でも組合員にとって重要な「合有的に」存在として存在する。したがって、組合員の持分は、その組合員の死亡時に相続の対象とはならず、当該組合員の持分の払戻しがなされる(681条)。その払戻しの態様は、本問にあっては、各自の出資額(20万円の5倍)に応じて、民法上の規定(同条1項)から、本件規約の文言どおり当然に当然の定めによって、Aの主観のように、出資額の総額(5名の出資総額の5分の1)に応じて払戻し(60万円)である。参考判例④は、平成18年の改正前の医療法人は、社員の持分を認めることはできるが社員の脱退後の社員の出資持分が否定されたが、改正後はこれを認めていない。①どのくらい組合員の団体において、社員の持分を認めることはできるのか。②どのくらいその出資額に応じて返還を請求できることと定められている事業(出資社員)は、退社時に、同時に出資持分を払い戻した上でA(当該医療法人)の財産の清算に協力する(同法による)。額が占める割合を乗じて算定される額の返還を請求することができる」と判示した。4 役員の不正行為(1) 団体における代表訴訟一般社団法人においては、社員は、一般社団法人に対し、理事等の責任を追及する訴えの提起を請求することができる。一般社団法人がその請求の日から60日以内に責任追及の訴えを提起しないときは、当該社員は、一般社団法人のために、理事等の責任追及の訴え(代表訴訟)を提起することができる(一般法人法278条1項・2項、会社法847条参照)。一般法人法人が参加し、それで丙の構成員であるCは、自治会長Dが丙の財産を横領したとして、Dに対し、一般法人法278条の規定を類推して、損害賠償として横領額100万円を丙に支払うよう請求することができるか(小問3)。参考判例④は、団体においては、多数決の原理等に従い団体としての意思決定をするのが原則であり、例外的に、法が特に代表訴訟を認めた場合に限ってのみこれが許されるとしている。一般法人法278条の規定の類推を否定した。代表訴訟は、濫用されることもあることから「Dが丙の財産を横領した」とのCの主張は必ずしも事実とは限らない。なお、一般法人法278条1項ただし書および項参照)。一人の法人が、一般法人法278条の規定の類推については、基本的には許されないと解すべきである。(2) 役員の不正行為に対する法的措置役員の不正な行為があった場合に、社団法人(権利能力なき社団も含む)や管理組合の構成員は、当該役員に対し、どのような方法で責任を追及することができるか(関連問題1参照)。1つは、当該役員を辞めさせないし総会の決議において解任することができる(一般法人法70条(権利能力なき社団については同規定の類推)。以下同。区分所有法25条1項。なお、解任請求については同条2項)。なお、理事は、総会と集会において選任・解任される(一般法人法63条・79条1項、区分所有法69条1項)、代表理事(理事長)は理事会で選定・解職(解任)されることから(一般法人法90条2項・3項、区分所有法49条3項)、代表理事(理事長)を解任するためには、基本的には、集会の決議において「理事」を解任する必要がある(理事会では、「理事長」の解職のみが可能であり、「理事」の解任まではできないと解される)。もう1つは、総会ないし集会において、当該役員に対し当該団体に損害賠償を支払うべきことを提起する旨の決議をすることができる(一般法人法35条1項)。なお、同法111条1項参照。区分所有法39条1項)。これらの場合においては、一定の割合以上の構成員によって、総会ないし集会の招集者に対し、その招集を請求することができる(一般法人法37条参照。区分所有法34条3項~5項)。以上に対し、組合における業務執行組合員の解任や組合員の除名については、正当な事由がある場合に限り、他の組合員の一致によってのみすることができる(672条2項・680条)。関連問題(1) 甲および丙の構成員であるEが、甲団地内の自己の所有する住戸を売却した場合に、甲および丙に対して、すでに支払った修繕積立金(修繕はいまだ実施されていない)および自治会費(当該年度の夏祭りはまだ実施されていない)の返還を受けることができるか。(2) 甲の区分所有者Fは、不正行為を理由に理事Gを解任したいと思っている。そのために、どのような方法があるか。(3) 丙の区分所有者Fは、不正行為を理由に理事Gを解任したいと思っている。そのために、どのような方法があるか。参考文献木村真志・百選Ⅰ 36頁 / 山野目章夫・平成22年度重判88頁 / 鎌野邦樹・判例時報565号(判例時報1915号)(2006)11頁 / 丸山一・NBL995号(2013)101頁(鎌野邦樹)