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独立当事者参加

XはYからある書画を買ったとして、Yに対し所有権移転登記手続を請求する訴えを提起した。しかしZも、同一家屋をYから買ったというとき(二重譲渡)、ZはX・Y間の訴訟に参加できるか。Zが、Yに対して上記請求を立てただけの参加と、これに加えてXに対しても家屋所有権確認請求を立てている場合とで参加が認められるかどうかには違いはあるか。参考判例最判平6・9・27判時1513号111頁解説1 独立当事者参加の意義補助参加(42条)[→問題67]とは違い、他人間に係属中の訴訟に、自らの請求を掲げて参加する場合を独立当事者参加という(47条)。1つの訴訟に多数の者が関与する訴訟でも、通常は原告被告の二手に分かれる二面訴訟の集合体として把握できるのに対し、参加人が既存当事者らのどちらかに与するのでなく、独立の立場で請求を立てとして、原告の被告に対する本訴請求と併せて矛盾のない統一的審判を求める多面的訴訟が、この形態である。例えばある建物に原告被告がともに自分が所有者であると主張して所有権確認訴訟を係属させているとき、自分こそが所有者だとする第三者にとって、原告勝訴判決の判決効が法的に及ぶわけではない(これとは別に第三者自身の所有権確認訴訟を提起することが可能)。しかしこの場合も前記判決は裁判外、裁判上で不利益に作用すると考えられるので、この第三者は既存当事者から独立した対等の当事者として主張・立証し、原告勝訴判決を阻止することができる。なお参加人が原告と被告の双方に請求を掲げる両面参加だけでなく、片方だけに請求を並立する片面的参加も、現行法により認められるようになった。前記所有権確認の例で、被告が「自分は所有者である原告から借りている」として、参加人と被告の間に争いがないのであれば、参加人は被告だけに所有権確認請求を掲げて独立当事者参加ができる。2 独立当事者参加の参加類型この参加類型は参加の根拠によって、「訴訟の結果によって権利が害されることを主張する場合」(47条1項後段)を詐害防止参加といい、「訴訟の目的の全部若しくは一部が自己の権利であると主張する場合」(同項前段)を権利主張参加という。これらいずれかの要件を満たす場合には、別訴により自らの権利実現を図るという方法のほかに、他人間の訴訟に設立の当事者として参加できることになる。詐害防止参加は、馴れ合いにより事実上不利益が生ずる場合にできるとするのが今日の多数説であるが、見解の一致をみない。実際例も後者より少ない。権利主張参加は前述の所有権確認の例を典型例とする。本問もこれに含まれるかどうかかが問題となる。権利主張参加は、一般に、訴訟の目的である権利関係が自己に帰属し、またはその上に自己が権利(物権)を有することを主張しての参加である。それは、参加人の請求(およびそれを基礎付ける権利主張)が本訴の原告の請求(およびそれを基礎付ける権利主張)と論理的に両立し得ない関係にあることを意味するとされる。したがって、前述の原告被告の土地所有権確認請求訴訟に、第三者が所有権確認を求め参加する例も、第一審→第二審により本訴原告の所有権主張と第三者のそれが論理的に両立しない関係にある。けれどもここに第三者が地上権確認を求めて参加することはできない。該当しないとされている。3 権利主張参加――請求が論理的に両立しない場合本問に示した不動産二重譲渡の場合については議論がある。実体法上は買主X・Zとも登記完了まで所有権移転請求権への効力を求めることができるので、X・Y請求とZ・Y請求は両立でき、論理的には独立当事者参加は許されないとの考え方もある。しかし多数説と従来の裁判例はこのような場合に独立当事者参加を認めてきた。これは次のように説明されてきた。論理的に両立しないということは、参加人の請求の趣旨レベルで判断し、そのレベルで両立しないということで足り、本来審理の結果、判決において両立することになってもよい。本問でXによるYに対する所有権移転登記手続請求訴訟に、ZがYに所有権移転登記請求を立てて参加することは、権利主張参加として適法である。結果、材料による客体上の権利帰属の相対性から、XのYに対する移転登記請求もZのYに対する移転登記請求もともに認容され、表面上は権利が両立する関係になっても差し支えない。同一不動産の登記はYからZのどちらかにいくのであるから、X・Y請求とZ・Y請求は請求の趣旨レベルでは論理的に両立しない、と(重点講義民訴505頁)。これに対し、参考判例①はYからX・Zへの不動産二重譲渡で、Zの仮登記に先になされたにも当たらないとしてX・Y訴訟にかかわらずYに対して本登記請求、Xに対してもその承認を求めて参加(なお48条)につき、論理的に両立し得る場合として独立当事者参加を許さなかった(訴え却下でなく、別訴の提起も扱われる)。これを契機に、本問の不動産二重譲渡につき独立当事者参加を認めない説も有力になっている。二重譲渡を受けた買主はいずれも登記請求権を有しており、両者の請求が両立することは請求の趣旨と原因において自明である。買主間では所有権の優劣はいずれかの本登記がなされるまではじめて決まる。本登記がなされるまでの所有権が互いに優劣を拝しないことは、やはり請求の趣旨と原因において自明である。したがって請求の趣旨レベルで両立しないことで足りるとする上記多数説の説明は成り立っていない、と(三木浩一「独立当事者参加における統一審判と合一確定」青山善充ほか編『新堂幸司先生古稀祝賀・民事訴訟法理論の新たな構築』(有斐閣・2001)831頁[同『民事訴訟における手続運営の理論』(有斐閣・2013)所収])。4 独立当事者参加の許否の判断視点――本問の考え方論理的に両立しないかどうかについては肯定説がわかりやすいが、多数説のように一方の執行がなされれば他方の執行は不可能になるという意味で両立しないと考えることもでき、この要件では決しない。参考判例によると、ここでもZからXに所有権確認請求が立てられていれば、両請求は両立しないことになるので参加要件をクリアできることになりそうである。けれども所有権確認請求が立てられているかどうかだけで独立当事者参加の許否がされたり許されなかったりするというのなら、紛争の実態は変わらないのにあまりにも請求という形式だけにこだわっているのではないか。そこで独立当事者参加を許すかどうかの視点は、X・Y訴訟の原因はZは介入する必要があるか、ということに求められよう。否定説は、実体法上登記の先後で買主間の優劣が決まり、買主は登記を早く(提起し判決を確定させるべく、各自が(別に)訴え(別訴)にすべきであり、Xが(先に)提起した訴訟にZが関与してその成行きを左右しようとするのは公正ではないとみる。これに対して多数説は、実質として1つの紛争であるから、1つの訴訟の中で両者を調整することに意味があるとする。5 二重参加訴訟への還元参加後、多面的な訴訟関係がなくなり、二者訴訟になることもある。原告の訴え取下げと参加申出があった場合と、在来の当事者が訴訟から脱退する場合である。参加後も、被告は訴えを取り下げることができ、取下げには原告の同意のみならず、参加人の同意も必要とされている。取下げ後は参加人の原告一方に対する共同訴訟となる。参加人は、訴えの取下げに準じて、参加申出の取下げができる。取下げにより原告の当初の訴えが残る。また、在来の原告または被告は訴訟から脱退できる。(48条)。第三者の参加により、従来の原告または被告はもはや当事者として訴訟にとどまる必要を感じなくなる場合、すなわち係争物の譲渡人が参加してきた場合の原告(譲渡人)や、本問ではXとZのどちらが権利者と判断されようがかまわないのでX・Yで争ってくれという場合である。脱退の性質や判決の効力の内容については議論がある。有力説は、脱退は自己の立場を参加人に託すと相手方との間に自己の請求を勝ち負けとして審判を求めることをやめ、この結果について基本的に予見的に、これまたは認識した結果を性質上使える。本問の前訴のようにYが脱退すれば、XはZどちらかが勝訴したように判決の認証をあらかじめしたもので、認証に基づき勝訴者からYへの執行力を生じる。しかし、脱退の性質を条件付きの放棄・認諾と捉えることで判決の(民事訴訟法48条の文言も脱退者に判決の効力が及ぶとされている)や、この説では何ら効力が及ばない空白部分が生じる可能性(本問でZの請求・Z・X所有権確認請求を認容する場合、Z・Y間は請求認諾とみなして認容判決と同じ効果が生じても、X・Y請求棄却の効果は生じない)など、疑問も提示されている。このほか、独立当事者参加についてはその審理のあり方についても複雑な議論がある。ここでは被告と参加人の請求につき必要的共同訴訟に関する民事訴訟法40条が準用されるが(47条4項)、共同訴訟人の足並みを揃える本来の場合と三者相互に対立する独立当事者参加の場合は違うので、その根拠や範囲をどのように考えたらよいか、敗訴した二者のうち一者のみが上訴した場合、自ら上訴を提起しない他方の敗訴者の地位はどう考えたらよいかという問題である[→問題72]。参考文献井上治典『民事手続の実践と理論』(信山社・2003)234頁/三木浩一=争点66頁/山本克己=百選208頁(安西明子)